おうち時間で低下する? 免疫とゴルフのはなし
おうち時間が長くなる中で、『運動不足は免疫の低下に!』という情報が気になり始めた方も少なくないと思います。免疫の上がったり下がったり…って何でしょう? 血液内科を専門とする久住英二医師にお話を聞いてみました。実は、ゴルフのプレーも“有効”な可能性があるそうです。
久住英二医師
医療法人鉄医会理事長/内科医
新潟大学医学部卒業。虎の門病院、東京大学医科学研究所を経て駅ナカで夜9時まで診療する「ナビタスクリニック」を開業。立川駅、川崎駅、新宿駅に展開し、忙しく働く世代がちゃんと医療を受けられるよう、取り組んでいる。血液内科や旅行医学を専門とし、感染症にも精通している。クリニック公式サイト
――最近、あらゆるニュースで取り上げられている「免疫」とはいったい何ですか?
免疫は、人間にとって好ましくない病原体が体に入り込み、病気を引き起こすことを防いでくれる能力です。免疫細胞がウイルスや細菌などを攻撃してくれます。
――免疫は体内のどこに存在し、どこで作られるのでしょうか?
免疫を担うのは白血球と言われる細胞です。白血球を含む血液の細胞は、すべて骨髄の中で作られます。
――免疫を担当している白血球の働きを詳しく教えてください。
白血球は、骨髄球系とリンパ球系に分けられます。またそこから細かく、骨髄球系はマクロファージや好中球といった細胞。リンパ球系は、Tリンパ球とBリンパ球とNK細胞に分けることができます。
好中球やマクロファージは体内に入った病原体を食べて殺します。そして、マクロファージは食べた病原体の一部をリンパ球に提示して、やっつける相手を指示します。ウイルス感染症の場合は、主にリンパ球系の細胞が免疫の主力を担います。
Tリンパ球はウイルスに感染した細胞を攻撃します。Bリンパ球は、ウイルスを不活性化する抗体を作り出します。
――日光浴は免疫細胞に良いと聞いたことがあります。これは本当ですか?
日光を浴びることで、紫外線により体内でビタミンDが合成されます。ビタミンDは、病原体を食べてくれるマクロファージが活動する上で必要な栄養素です。
ただ、必要以上に摂ったから、働きが強くなるということではありません。不足はダメですが、過剰に摂るメリットはありません。
――現在「おうち時間」が増えるなど、生活環境がガラリと変化した人が多くいます。身の回りの環境の変化は影響を及ぼすものでしょうか?
生活リズムが乱れると、免疫の調節がうまくいかなくなります。なので、決まった時間に起きる/寝る、食事の時間を決める、といった普段と変わらない生活を心がけるといいですね。
また、恐怖心をかき立てるようなニュースを見たり聞いたりすることで生じる精神的ストレスは免疫の働きを低下させるので、注意してください。
――免疫の“調節”について具体的に教えてください。
免疫細胞は必要のないときに機能せず、必要なときに能力を最大限に発揮する…これを調節といいます。体を守る役割を担っていますが、活動しすぎると、人を殺しかねないほど恐ろしい力を持っている細胞なのです。
たとえば、体が疲れていると、コルチゾルという副腎皮質ホルモンがたくさん分泌されます。コルチゾルはリンパ球を殺したり、白血球が感染症を引き起こしている部位に集まるのを邪魔したり、免疫の働きを抑えてしまいます。
――免疫を保つために有効なこととは何でしょうか?
免疫が適切に働く状態を保つために、有効なことはいくつかあります。規則正しい生活をする、いろんな食材をバランスよく食べる、運動をする、お酒を飲み過ぎない、ストレス(精神的・肉体的)をためない。
――では、ゴルフもそのうちの“ひとつ”に含まれますか?
はい、含まれると思います。ゴルフは心身の健康を維持する上で、有効であるという論文も出ているくらいです。ただ、ゴルフは毎日プレーできないもの。また、打ちっぱなしでは有酸素運動としての強度が低いと思います。
――自宅待機を余儀なくされているゴルファーにおススメの運動を教えてください。
自宅近くなどで、有酸素運動として軽くジョギングをすると良いでしょう。また、腕立て伏せや腹筋運動、スクワットなどで体の筋肉を鍛えることもおすすめです。