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「あの頃は若かった…」三塚優子 遅延宣告で途中棄権 11年前の騒動を振り返る

2021/11/06 17:08

パワフルなドライバーショットを武器に、国内女子ツアー通算4勝を挙げた三塚優子。2007年のルーキーイヤーから3年連続で優勝を果たし、11年には国内メジャー「日本女子プロゴルフ選手権」を制した。一方で、10年「サロンパスカップ」ではスロープレーの裁定を不服とした途中棄権が大きな物議を醸す。ツアーの第一線から離れた彼女が、いまだから話せる紆余曲折の半生を振り返る。

水泳の五輪強化選手が父の勧めでクラブを握る

現在は地元茨城県のパン屋さんでアルバイト勤務という三塚

―ゴルフを始めたきっかけは?
「地元(茨城県)ゴルフ場のクラブチャンピオンにもなっていたシングルプレーヤーの父親の影響です。父がゴルフに熱を入れていたことで、趣味として母も始め、一人っ子の私も巻き込まれた感じ(笑)。3人でコースを回れたらいいねということで、中学1年生の9月に始めました」

―その前にスポーツ経験は?
「幼い頃から、ずっと水泳をしていました。泳ぐことが大好きで、練習に励んだ結果、五輪候補の強化指定選手に選ばれるまでになりました。ゴルフの道に進まなければ、水泳選手として夢を追い続けていたと思います」

―その後、父親と二人三脚でゴルフに打ち込んだ?
「はい。競技ゴルファーの父の教えで、『緊張している中でもいつも通り打つためには、練習量をこなすしかない』というものがあり、ジュニアとして試合に出る際は、プレッシャーに勝つために練習に励みました」

ルーキーイヤーからの快進撃

―レギュラーツアーは2007年から?
「はい。同期は原江里菜有村智恵佐伯三貴ら、いまでも活躍するメンバーたちでした。デビュー年の目標は、シード権の獲得と決めていたのですが、いきなり同い年の佐伯選手が『フジサンケイレディス』を制したことで、私も…という気持ちが強くなり、初優勝した『ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン』につながったと思います」

ゲームや漫画が大好きで“アキバ系プロゴルファー”を名乗っていた三塚

―初優勝した際「賞金で『こち亀※』全巻買う」と言ったのは有名ですね?
「はい、本当に全巻買いました。漫画もそうでしたが、実は母に『優勝したら大好物の宮城名菓・萩の月を好きなだけ買ってあげる』と約束されたことも、モチベーションを高める要因のひとつに。会場を出た直後、近くのスーパーに駆け寄って5~6箱を購入したことを覚えています」

―その後3年連続で優勝を飾ることに?
「自分でも驚くほどポンポンと順調にいっていました。地元では絶対に勝ちたいという思いがあり、美浦ゴルフ倶楽部で行われた『ニチレイPGMレディス』では、たくさんの応援が励みとなりました。逆に3勝目の『ダイキンオーキッドレディス』は、沖縄勢への応援がある中で、完全アウェー状態でつらかった。でも勝てたということがより自信にもなりました」

若さゆえの過ち 遅延騒動で伝えたかった主張

―10年の「サロンパスカップ」騒動は物議を醸しましたが?
「あの頃は、まだ若かったと言うしかありません(苦笑)。前々からスロープレーについては、タイムテーブル(各ホール消化時間の目安を載せた表)を用意してほしいと協会には主張していて、なぜやってくれないのか?という思いの中で、現実にペナルティを科せられて腹を立ててしまった。2罰打の処分に耐えられず、途中棄権をしたことで罰金と出場自粛という処分に発展してしまいました」

途中棄権の翌日 謝罪のため会見を開いた

―途中棄権をしてまで主張をアピールしたかった?
「遅延によって2罰打を科せられたのですが、私たちプロは1打でもスコアを減らすために、全力を尽くしています。当時その1打の重みを軽く見られているように捉えてしまったのが、私の一番の反省点。応援してくれるファンや関係者の皆さんに、不快な思いをさせてしまったことを後悔しています」

騒動後に見えてきた景色

―騒動の翌年「日本女子プロゴルフ選手権」で優勝しましたが?
「実は11年シーズンは、春先からとても不調で身体的にも気持ちもどん底に。元のプレーに戻りたいという焦りと、前年にファンを裏切ってしまった念もあり、メジャーで勝てたときは、喜びよりもほっとした気持ちになりました。緊張の糸が解けていくような、氷が溶けていく感覚でした」

―いま振り返るとあの騒動についてどう思う?
「当時は反響の大きさに戸惑いましたが、いま考えると、とても貴重な体験をしたという意味でプラスに捉えています。プロになってとんとん拍子で優勝できたことで、見えていなかったものが見えるようになった。プロになって周りの大人が気をつかってくれていたことに、気がつくようになったことが大きいです」

ツアープロは常にファンの期待に応えるべき立場にあるかもしれないが、彼らや彼女らにも主張したい意見はあるはず。『サロンパスカップ』騒動は確かに配慮に欠けたものではあったが、譲れないほどの強い思いが冷静さを失わせたのだろう。彼女の豪快で屈託のない笑顔に、実直であり少し不器用なプロの姿を感じた。(編集部・内田佳)

《後編「フツーが楽しい♪ 三塚優子が歩む第2の人生」に続く》

※『こちら葛飾区亀有公園前派出所』作:秋本治(集英社刊)

取材協力/サザンヤードカントリークラブ