チャック全開はプレー中に指摘するべきか
9月の国内男子ツアー「フジサンケイクラシック」で、岩田寛選手が試合中にチャック全開をキャディに指摘されて青ざめたという“珍事件”が、ニュースに取り上げられた。そこで考えるのは、同伴プレーヤーがチャックを開けたままにしていたとき、どのような対応を取るべきか。すぐさま指摘するか、それとも見て見ぬふりをするか――。ベストな対応について、ゴルフマナージャパン研究所代表・山本眞理子さんに聞いた。
Q:チャック全開の同伴者を見かけた場合、ベストな対応は?
1. すぐさま指摘する
2. 見て見ぬふりをする
3. 目線を(相手の股間へ)送る
4. ジェスチャーで伝える
5. そっと耳打ちする
6. メモ書きにして渡す
A:ベストな対応は…
5.そっと耳打ちをする。
気がついた時点で、できるだけ早く教えてあげることが親切です。相手の恥が広がる前に、こっそりひっそり。当事者の気持ちに配慮し、周りに気がつかれないように、気をつけた伝え方がベスト。1の『すぐさま指摘』と、2の『見て見ぬふり』はNG。3の『目線』、4の『ジェスチャー』、6の『メモ書き』は、ゴルフ以外の場では適していると思いますが、基本4人で回るパーティでは、他の同伴者にも気づかれない5の『耳打ち』が、一番スマートな対処法だと思います。
Q: 耳打ちする際のベストな台詞は?(※目上の人の場合)
1. 「言いにくいのですが、…全開です」
2. 「誰も見ていません。(チャックを締めるしぐさ付きで)今がチャンスです」
3. 「開いていますよ。いつも完璧なのに、なんかちょっとうれしいです」
4. 「下、見てください。チャックが…」
5. 「男は黙って引き上げてください」
6. 「次のホールは、チャックに注意です」
A:ベストな台詞は…
4.「下、見てください。チャックが…」
メンタルのスポーツであるゴルフの場合、恥ずかしさの精神的なダメージにより、その後のスコアが乱れるケースが多いものです。指摘する際は、1~3のような直接的な言い方はなるべく避けるべきでしょう(※状況によっては、3のようなフォローが必要な場合も)。また5~6のジョーク交じりな言い方は、同僚や仲間うちでのプレー中には適していますが、上司や先輩の場合は、4のようなあえて曖昧な言い方で、相手側に答えを導き出してもらう言い回しがベストではないでしょうか。
■非常にナーバス 緊急性と重要性の判断を
ゴルフのような紳士のスポーツでは、チャックだけでなく、服装の乱れについてどこまで指摘し、どこまでを許すべきか? 迷うことも多いと思います。
身だしなみの乱れを恥と捉える文化が根付いている日本では、服装やマナーを指摘すると、生活習慣や人格まで批判された気分になる人が多いです。指摘された側は、かなり精神的なショックを受け、指摘した側も後味が悪く、言わなければ良かったと後悔することになるため、あまりうるさく細かく指摘する必要はありません。
判断基準としては、緊急性と重要性に分かれます。緊急性は、服装の乱れにより、下着が見えている場合。重要性は、ドレスコードを外していて、ゴルフコースの品位に関わるときなどです。このふたつのケースでは、嫌われる勇気を持ち、本人に伝えることをおすすめします。
緊急性がない場合は、ハーフで休むタイミングまで待ってからでも良い場合があります。休憩から帰ったときには改善されていることがほとんど。相手に『誰も気づいてなかったよね』の希望を残してあげることもできます。または、コース内の化粧室に近づいた際に、『トイレに行ってはいかがでしょう?』と、それとなく勧めるのも良いでしょう。
■女性のファスナー全開の場合は
男性のチャックと似たケースで、女性のスカートのファスナーが全開の場合があります。
このような場合、女性の心理としては、「多くの人目にさらされる前に指摘してほしい」という気持ちが強く、男性以上に緊急性に基づく判断を要します。言い回しの気配りも重要ですが、速やかに救ってあげることが先決。直接伝えることも正しい判断ですが、同性のメンバーがいる場合は、その人に頼むように、こっそりお願いするほうがスマートな対応だと思います。
■ 山本眞理子(やまもと・まりこ) プロフィール
ゴルフマナージャパン研究所代表。慶應義塾大学文学部卒業後、航空会社(JAL)国際線客室乗務員を経て、客室訓練部(邦人・外国人客室乗務員)教官、文部科学省後援マナー・プロトコール検定の検定試験審査委員を務める。大学非常勤講師として、マナーや接遇、コミュニケーションを指南。日本ゴルフジャーナリスト協会にも所属。