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異色バトルを制したのは!? ドラコンプロと女子プロが同じティで対決(後編)

2023/06/27 11:00

飛距離はスコアにどれほど影響するのか――。この普遍的なテーマを検証するべく、ドライバーの飛距離300yd超えのドラコンプロと、平均200ydの女子プロという異色のマッチプレー対決を実施した。「クラブ試打 三者三様」のテスターでもおなじみ、ドラコンのプロライセンスを取得しているゴルフYouTuber・万振りマンと、国内女子レジェンドツアー「JLPGAレジェンズチャンピオンシップ」で優勝を果たした西川みさとプロの顔合わせは、3ホールを終えて1UPと西川リードで、初のショートホールに突入する。

飛距離差100ydの9Hマッチプレー その結果は!?

飛距離は90~100ydもの差がある二人だが、112ydのショートホールではそれほど大きなアドバンテージにはならないことが予想される。ハンデを感じていない万振りマンとは裏腹に、西川は心の中で「飛距離のメリットが全くないわけではない」と警戒する。飛距離差が大きいほど明確に浮き彫りとなるプレーヤー心理。4ホール目以降の二人のコメントを追いながら、心理状態の移り変わりを追った。

「アース・モンダミンカップ 」開催コースということでコンパクションは高い

「ショートホールでは、特に飛距離能力は勝敗に関係ないと思われがちですが、クラブが長いロングアイアンと短いショートアイアンでは、ミート率に影響します。ティショットを短い番手で打てる点で、有利に働くあることは間違いありません。風速7mの強風とグリーンの硬さを加味して、クラブ選択と距離感の見極めが重要です」(西川)

「2ホール目で1UPを取られているので、追いかける身として思い切り攻めていくしかありません。ショートホールは、自分の飛距離能力を生かすことはできませんが、ここをパーでしのいでドローに持っていくことが重要。グリーンの硬さが読めないので、ティショットをどこに落とすかがカギになると思います」(万振り)

■4H ショートホールでの微妙な駆け引き

西川のショット後、戦略をつぶやく万振りマン

距離は112ydと短いものの、2段グリーンが特徴の落とし所が難しいロケーション。先手の西川は、8番アイアンでアゲンストの風にぶつけて上から攻める作戦で、ややイメージより押し戻されたが、ピンまで残り2mの好位置につける。一方の万振りマンは、西川の弾道を見て「かなり(風が)上げているので、135yd目安で打っていきます」とPWを選択。縦距離はそれほど誤っていなかったが、引っかけ気味となってしまい、グリーン左の上段へ。2打目は下りのパットを寄せ切れず、3パットを喫してボギー。西川はしっかりパーを奪取し、2UPと差を広げた。

「非力なプレーヤーにとって、ショートホールでもクラブ選択で不利な面は否めません。ですが、今回の状況で助かった点はオナーであったこと。ティショットの良し悪しが結果につながるショートでは、先に打つことの優位性は高いと思います」(西川)

「強風の影響からかスイングで体の軸が保てず、うまくミートすることができませんでした…。ティショット同様、パッティングでも強風に左右され、上段から思うように距離を合わせることができなかったです」(万振り)

■5H 巻き返しを図った万振りマンが自滅

2打目は林超えのショットに

5ホール目は、ティショットの落とし所とグリーン周りに大きなバンカーが位置している289ydのミドルホール。西川はここでもショットの安定感を発揮し、ティショットをフェアウェイやや左へ、そこからの2打目は狙いとは少し左に外したもののしっかりと2オン。万振りマンは、ティショットが大きくフックして左へ曲げてしまい、隣のコースまで達してしまう。林超えの2打目も高弾道で切り抜けるものの、グリーン手前のバンカーへ。バンカーショットはピンそば1.5mにつけるが、パットを外してボギー。西川は10mのロングパットを寄せ切ることはできなかったものの、残り2mのパーパットを沈め、3UPとさらに差を広げた。

「2打目のアイアンショットでは、少しボールがつかまりすぎてしまうミスもありましたが、パットでなんとか立て直すことができました。マッチプレーは相手が目の前にいるスタイルの勝負ですが、結局は自分の調子をキープすることが先決ですね」(西川)

「前のホールで2UPと差を広げられ、ここが勝負と決めて臨んだのですが、強いアゲンストの影響もあって力みが入ってしまいました。競り負けているというより、ミス連発で自滅していく形となってしまっていますね」(万振り)

■6H 起死回生! 362ydの豪快ショットで圧倒

豪快なマン振りでグリーンそばまでロングドライブ

6ホール目は、緩やかに上り傾斜となっていて、実際の距離(405yd)より長めに感じるミドルホール。ハンディキャップ1の難ホールで、パーを獲ることも困難だが、ここで万振りマンが弾丸ショットを炸裂し、もうすぐグリーンに届くかと思うほどのビッグドライブを放つ。一方の西川は、ティショットをフェアウェイに運ぶが、2打目をグリーン左奥へ外す。そこからパターで狙うものの、カップを2mオーバーし、返しのパットを外してボギー。万振りマンは、2打目のアプローチをショートさせてしまうが、2パットでしのいでパーセーブ。一矢報いて、西川2UPに戻す。

「ミドルホールでしたが、私の飛距離ではほぼロングといえる距離。相手があれだけ素晴らしいティショットを放ったので、もう完敗…といったところ。あのような豪快ショットを見ると、やはり飛ばせる人がうらやましいと思ってしまいます」(西川)

「この日の初パーを獲ることができてホッとしました。風の影響と自分のミート率の低さで、これまで常に西川さんを追いかける立場となっていたため、精神的にかなり追い込まれていました。この形を積み重ね、浮上できればと思うのですが…」(万振り)

■7H 砲台グリーンを攻略した西川の勝利

上りを考慮した距離感はバッチリ

7ホール目は、砲台グリーンの距離感が問われるミドルホール。この日初めてオナーとなった万振りマンは、ティショットを少し左に曲げるが、フェアウェイをキープ。西川も同様に、ややつかまり気味で左に行き、ラフにつかまってしまう。だが、ピンまで残り80ydからうまく距離を合わせ、ピン横1mにつける。万振りマンは、グリーンに落とすものの、グリーンの硬さによってボールが止まらず、奥のカラーにこぼれてしまう。奥からのアプローチショットは、止まらずにピンを1.5mオーバー。パットを決め切れずに、ボギー。西川は残り1mのフックラインを読み切り、バーディ締め。3UPとしてその時点で残り2ホールとなったため、勝利となった。

「ティショットが左に曲がるミスとなりましたが、2打目のラフからのショットで、バッチリ距離を合わせることができました。次のホール(8H)がロングで、このホールで決着させたいと思っていたので、良かったです」(西川)

「強風とグリーンの硬さで、距離の計算が難しかったです。しかし、西川さんの安定感には脱帽。当たり前のことですが、ショットの精度差を改めて感じました。飛距離より方向性のアドバンテージを見せつけられた印象です」(万振り)

「飛距離」だけではない ストロークの醍醐味は千差万別

残り2ホールを残し、西川3UPで決着がついた。勝因について、西川は「対戦相手の動向を頭に入れない作戦で臨んだのですが、やはり対戦中は相手のミスを待つ気持ちが勝ってしまいました(笑)。そういう心理戦もあるため、マッチプレーは打順(オナーかどうか)が大きく影響する気がします」と分析。逆に敗因について、万振りマンは「2ホール目のティショットのミスが最後まで響いた気がします。セオリーでいくなら刻むことも考えますが、1対1勝負ということで1オンを狙ったまで。勝負に行ってミスをしたので、悔いはありません」と、清々しい表情で振り返った。

プレー後のインタビューで思いを語る二人

今回の対決で気づいた点を聞くと、西川は「私が勝ったからといって、飛距離より方向性が大事というわけではなく、どちらもゴルフにとって重要な項目です。各分野の得意不得意があり、その総合的なレベルを競い合っているだけ。もちろんどちらかが欠けていいというわけではありません」と持論を展開する。

「飛ぶ人はショートホールでも短いクラブを使えることでの優位性はありますし、残り距離が短ければ短くなるほど、ショートゲームが楽になる利点は大いにあります。また遠くへ飛ばすことでの爽快感や満足感は、ストロークプレーとはまた別の楽しみ方ともいえます。私のヘッドスピードでも、まだまだ遠くへ飛ばしたい願望を持っているほどですから(笑)。ただ明確に言えることは、飛ばしが全てではなく技術の向上でいくらでもカバーできる点がゴルフの魅力。“飛ばないもの代表”として、それを証明できて良かったです」(西川)

撮影協力/カメリアヒルズカントリークラブ