小祝さくらとグリップ問答 力感どれぐらい?「卵をつぶすくらいギュッって(笑) 」
同僚の女子プロにベストスインガーを聞くと、必ずその名前が挙がる小祝さくら。再現性の高いそのスイングとクラブを支える接点である「グリップ(握り方)」について、本人に根ほり葉ほり聞いてみた。いったい彼女はどのぐらいの力感で振っているのか?
一日限定でオーバーラッピングにしたことも
――握り方について、左右の手はそれぞれこうしている、などありますか?
「あまり何も考えてないんで、分からないんですけど…」
――…。とはいえクラブを握るときに何か意識しませんか?
「うーん、ただ握ったところでスイングするって感じです」
――インターロッキンググリップですよね?
「はい。ゴルフを始めた時からずっとこの握りです。ただ、一日だけ握り方を替えようと思ったことがあって…」
――一日だけ? それはいつのことですか?
「小6とか中1とか」
――ずいぶん昔のことですね…
「何かをきっかけにオーバーラッピンググリップを試してみたんですが、骨同士が当たって痛くなり、これは無理だなって」
――左手がロングサムですが何か意識されていますか?
「ロングサム!? なんですかそれ?そういう質問はちょっと…」
――左手の親指を伸ばすかどうかという話ですが…まあ、では次の質問。パームグリップ(手のひらで握る)かフィンガーグリップ(指で握る)はいかがでしょう?
「それもちょっと分からないですね」
――でもどこかの指を意識して握っていたりしませんか?
「ないですね。こんな感じです」*写真参照
――では力感はどうでしょう? 「卵を潰さないような力加減で握る」と教えるレッスン書もありますが
「私はけっこうギュッと握ります。卵はたぶんつぶれますね(笑)。全力で握った力を10とすると、クラブを握るときは7~8です」
――小鳥をそっと握る力感、という人もいますが?
「あ、絶対つぶしちゃう」
――そんなに強く握ると、グリップが削れて交換頻度が高くなりませんか?
「全然替えないです。年に1回とか」
――では、小祝プロはいつグリップを交換するのですか?
「メーカーさんがクラブを替えてくれるときにグリップも替わるだけです。1年使っても自分から替えたいとは思いません」
――お使いのグリップも長持ちするんですね
「そうなんです。ジュニアの頃に使っていたグリップは減りが早くて、家計に負担をかけていました。練習するほどグリップは削れるし、削れたグリップを使い続けるわけにはいかないし、困っていたんです。すると、今使っているグリップ(ゴルフプライドのMCCシリーズ)との出合いがあって、これは減らずに長く使えるぞ、と。以来ずっとこれなんです」
――なるほど。では最後、握り方を番手によって替えることはありませんか?
「うーん…あ、ウェッジは…(しばし沈黙)あー、一緒ですね! パターは『クロスハンド』ってやつです」
――そのクロスハンドってやつはいつからですか?
「2021年の全米女子オープンからです。アメリカで上手い選手がみんなクロスハンドで打っていたのを見たのと、その時パットが不調だったこともあって、真似してみようと思って採り入れました。順手だと手を使ってしまうクセがあるのですが、クロスハンドだとそれが少なく出球が安定します。そこからずっとパットが良いので、戻そうという気にはなりません」
聞けば聞くほど吸い込まれる小祝さくらワールド。それにしても、小鳥がつぶれるぐらいギュッと握っていたとは驚きだ。クラブが抜けない程度にやさしく握るのが定説と思っていたが、女子ツアーきってのスインガーが力強く握っていた事実は非常に興味深い。この冬の練習の参考にしてみては。(取材・構成/中島俊介)