ゴルフ場ができるまで(1)
タイのバンコクで、新たなゴルフ場を造るプロジェクトが進行している。小規模な改修とは異なり、1年半をかけて大規模な工事を実施する。2019年9月のソフトオープンに向け、プロジェクトの責任者が舞台裏をリポートする。
古いコースを壊す
新たなゴルフコースを造る。それにはまず、既存のコースを壊して更地にしなくてはならない。コースの一部を改修し、リニューアルオープンさせるようなケースとは規模が違う。
実際に工事に入るに当たり、コース内にある祠(ほこら)を前に関係者たちが作業の無事を祈る。仏教国タイの首都バンコクでは、ゴルフコースに限らず街のオフィスビルなどにも祠が数多くあり、人々は日常的に供え物をして祈りを捧げるのだ。
さまざまな設備が老朽化し、芝生も古くなっているため、すべての芝をいったんはがす。はがした芝は、近隣の学校への寄付を持ちかけたが、処分することになった。
コースをさら地にするため、樹木もなくす必要がある。バンコクは土壌が緩く、根が浅く広がるため、比較的容易に樹木を撤去できる。撤去したうち60本ほどの大きな木は、再度コースに植えるため、別の場所に移動させる。全てのバンカーの砂を抜く。抜いた砂は、新たなコースのフェアウェイ下の砂の層で再利用する。
地面に埋まっている老朽化した散水設備のパイプ類は、新たなものに入れ替えるために撤去する。コース内の売店などの建物の撤去は、解体業者に依頼する。ちなみに彼らは、解体したものを回収して他に売るため、撤去の費用は意外と安く上がる。
こうして18ホールの1つのゴルフコースを壊す作業に要する期間は、約1カ月だ。
バンコクのゴルフコースの現状
1980年代後半から90年代前半、バンコクにはたくさんのゴルフコースが作られた。それから30年ほどが経過し、最近ではさまざまな設備や機械が壊れて使えなくなったコースが増えてきている。ゴルフコースとして存続するためには、新たな設備投資が必要だ。しかし、どこからその資金を捻出するのか?ゲストが多く訪れるロケーションのいいコースならばまだしも、そうではないコースは頭を悩ませている。
今回、壊して更地にするこのコースも同様だ。開場から30年が経ち、散水や、その他もろもろの設備の老朽化の問題を抱えており、このままコースを継続していくのであれば、大規模な改修が必要なタイミングだった。
そこで、コースと接点があった我々が、この改修に取り組むことになった。ロケーションは悪くなく、日本人にも人気があったのだが、改修によりこれまでとは異なるグレードのコースを運営することを考えた。バンコク近辺のコースは、ほとんどがフラットでシンプルなレイアウトだ。我々は、このありがちなレイアウトを変え、個性的にして他との違いを出すということを新たなコースのメインテーマとして設定した。