ゴルフクラブABC

今さら聞けない「距離、高さ、深度」ドライバーヘッドの重心について教えて

2023/09/13 20:00
今回はドライバーの重心のお話です

【アマチュアSさんの“今さら聞けない”】
ドライバーの重心について教えてください。「重心距離」、「重心高さ」、「重心深度」と耳にしたことがありますが、それぞれどのような項目に影響が出るのでしょうか。

重心距離

【たけちゃん'sアンサー】
「重心距離」はシャフト(の延長線上)から重心までの距離を指します。重心距離はフェースローテーション(フェースの開閉)のしやすさに影響を与えます。

ドライバーを逆さに持って、シャフトを竹トンボのように両手でクルクル回してみると分かりやすく、回りやすいのが重心距離が短いクラブで、回りにくいのが重心距離が長いクラブです。

【図解】重心距離(※重心位置はイメージであり正確ではありません)

フィギュアスケート選手がアクセル(回転)するときに、回転スピードを上げるために腕をすぼめるのと原理は一緒で、一般的に重心距離が短いクラブの方が操作性が高く、フェースターンしやすいと言われています。近年主流の大型ヘッドは、重心距離が長く、フェースターンしにくい製品が多いです。

重心距離が長いとヘッドの返りが緩やかになり、フェースの閉じるのが遅れて開いて当たりやすいです。ただし、つかまりやすさはフェースアングルなど別の部分で補えるので、近年のドライバーヘッド開発においては、3つの重心の中で一番重要度が低い項目と言えます。

重心の高さ

【図解】重心の高さ(※重心位置はイメージであり正確ではありません)

最も大切とされているのが、ソールから重心までの高さを指す「重心の高さ」でしょう。「飛びの3大要素」のうちの2つである「打ち出し角度」「スピン量」に大きな影響を与えます。ちなみに、3要素のもう一つは「初速」でフェース面が大きく影響します。

近年はリミット限界まで重心の低いドライバーの開発が進んでいます。重心が低くなることで、重心より高い位置で球を打つ可能性が高くなるので、打ち出しが高くなり、バックスピン量が軽減するというメリットがあります。

重心深度

【図解】重心深度(※重心位置はイメージであり正確ではありません)

「重心深度」の定義は2種類あり、フェースの重心点から重心までの距離、もしくはリーディングエッジから重心までの距離のことを指し、ヘッドの左右慣性モーメントに影響を与えます。簡単に言うと重心が深くなることで、芯が広くなって、寛容性が高くなります。近年は重心深度をリミット限界まで深くした製品が多くなり、とにかくミスヒットに強いドライバーが増えています。

ただ、ゴルフクラブの構造は、「芯を広くするため重心深度を深くすると重心高さが上がりスピン量が増える」というように、何かを優先させると何かを失うトレードオフの関係があります。

近年のドライバーヘッド開発は、この3つの重心のメリットを最大限に活かしつつ、デメリットを出来る限り排除することに重きを置いており、それぞれをいかにバランスよく成形するかのせめぎ合いとなっていると思います。

たけちゃんの1分動画解説

■ゴルフクラブABCとは
巷には様々なゴルフクラブがあふれ、自分にぴったりの一本を見つけるのは至難の業。そもそもクラブを選ぶにも難しい用語が多く、深く知ることを敬遠している人も多いのではないか。そこでクラブ選びに役立つ「基礎中の基礎=“ゴルフクラブのABC”」を、全国から“患者”が訪れるというすご腕クラブフィッターたけちゃんに分かりやすく教えてもらう。

■ たけちゃん プロフィール

香川県丸亀市で「ゴルフショップイシイ」を営むクラブフィッター。フィッター界の第一人者、浅谷理氏に師事し、クラブ&パターフィッター、TPIインストラクター、ゴルフラボ公認エンジニアの資格を持つ。ゴルフはHDCP「9.9」の腕前だが、自身のプレーより他人のクラブを“診る”ことに喜びを感じる。出演する「ズバババGOLF」のYouTubeでは軽快なトークで人気を集める。