今さら聞けない「スイングの何に影響するの?」慣性モーメントについて教えて
【アマチュアSさんの“今さら聞けない”】
ドライバーのカタログを見ていると「慣性モーメント」という言葉を目にしますが、そもそも慣性モーメントとは何でしょうか?その定義や弾道の何に影響を与えるのか教えてください。
慣性モーメントとは物体の回転しにくさ
【たけちゃん'sアンサー】
「慣性モーメント」とは、そもそも物理で登場する用語で、大まかにいえば「物体の回転しにくさ(させにくさ)」を表す指標(数値)となります。MOI(moment of inertia)とも呼ばれ、単位はグラム立方センチメートルです。
なんのこっちゃという感じですが、これをゴルフに置き換えると、スイング中のクラブフェースの開閉しにくさということになります。
ただそれは、「ヘッド左右慣性モーメント(以下、左右MOI)」といわれるもので、他にも「ヘッド上下MOI」、「シャフト軸周りMOI」、さらには「クラブMOI」という指標が存在し、正直、言い出したらキリがない指標ではあります。ですから私のフィッティングでは、それほど意識しないようにしています。
左右慣性モーメントとは
一般的にゴルフ業界で多く使われている慣性モーメントとは「左右MOI」のことなので、ここでは左右MOIについて話を進めます。
左右MOIはR&Aのルールで上限が5900グラム立方センチメートルと決められていますが、そもそも慣性モーメントは外から見えるわけはなく、特殊な機械でないと測れないもの。ですから我々はメーカーが公表する数値を参考にするしかありません。
左右MOIは重心深度の話にもつながるのですが、基本的には重心が深いほど左右MOIは高くなり、重心が浅いほど左右MOIは低くなります。
ですので、左右MOIが高いクラブの方がミスヒットしても曲がりにくいという特徴があります。芯を外してもフェースの向きが変わりにくいので、結果、ブレずに飛びやすいのです。
ただし、左右MOIが高いヘッドが開閉しにくくなるので、振り遅れの原因になる可能性もあります。つまり、左右MOIが高いクラブはフェースをボールに対してある程度真っすぐぶつける事ができる人にとっては最大限の恩恵を与えてくれますが、振り遅れてフェースが戻り切らずに右プッシュのリスクもあるのです。
また、フェースが開閉しにくいということは、意図的に弾道を打ち分けたいプロや上級者にとっては操作が難しくなるということもあります。そのため、左右MOIの低いディープ形状のモデルを使用するプロや上級者は多くいます。
なんでもかんでも慣性モーメントが高いクラブを選ぶのではなく、自分のスイングを理解した上でヘッド選定をすれば、より曲がりにくいクラブに出合えることでしょう。
たけちゃんの1分動画解説
■ゴルフクラブABCとは
巷には様々なゴルフクラブがあふれ、自分にぴったりの一本を見つけるのは至難の業。そもそもクラブを選ぶにも難しい用語が多く、深く知ることを敬遠している人も多いのではないか。そこでクラブ選びに役立つ「基礎中の基礎=“ゴルフクラブのABC”」を、全国から“患者”が訪れるというすご腕クラブフィッターたけちゃんに分かりやすく教えてもらう。
■ たけちゃん プロフィール
香川県丸亀市で「ゴルフショップイシイ」を営むクラブフィッター。フィッター界の第一人者、浅谷理氏に師事し、クラブ&パターフィッター、TPIインストラクター、ゴルフラボ公認エンジニアの資格を持つ。ゴルフはHDCP「9.9」の腕前だが、自身のプレーより他人のクラブを“診る”ことに喜びを感じる。出演する「ズバババGOLF」のYouTubeでは軽快なトークで人気を集める。