ギアを愉しむ。

ストロングロフトを生かすには? 一周回って考える“イマドキ”のアイアン選び/ギアを愉しむ。

2023/12/19 11:00

30年で最大10度もストロング化したロフト角

「7」と刻まれた番手でもロフト角は各モデル様々。23年市販モデルで25~36度までの幅が

2023年、主要ブランドから発売されているアイアンの平均ロフト角は7番で30度を切ったそうだ。90年代までのノーマルアイアンが7番で35度以上だったことを考えると、平均値(マッスルバックを含む)でも“1.5番手以上”立っている計算。もちろん最新モデルの中には、7番で25度を切る超ストロングロフト設定も存在するため、直近30年間では最大で10度、番手でいえば“3番手相当”の差が開いたことになる。

ただ、その歴史は各メーカーの試行錯誤の末であり、単純にロフトだけが変化したわけではない。長さは7番のままロフト角だけ立てられた時期も、シャフトがスチールからカーボンに主流が移り、長尺化と並行して進む時期もあった。その結果、“昔の5番”並みの角度と長さの「7番アイアン」が現在流通しているわけである。

1960年代モデルのカタログでは7Iのロフト角は“39度”と記されている

それって「7」と刻まれただけの単なる「5番」では? と思う人は多いだろう。実は筆者も最近までそのように捉えていた。いや、今でもスペックで番手が決まるなら、間違いなく“昔の5番”だと思っている。

だが、一周回って考えたときに、最近では“昔の5番的な7番”もアリだなと考え始めた。きっかけは、今年発売されたタイトリスト「T200 アイアン」。それまで使用していたマッスルバックタイプより5度ストロングロフト化したモデル(7Iで30.5度)でラウンドを重ねたことで、改めて気づかされたことがあった。

数字通りの距離を打ってみる

これまで愛用していたアイアンより5度もロフト角が立っていれば、当然、飛距離が出すぎてタテの距離が合わない。使い始めた当初は、私も例に漏れず7番でも6番以上に飛ぶという違和感を抱いていた。

しかし、数ラウンドをこなして抱いた思いは、「この7番は、まさしく7番」ということ。今までより飛距離が出る「T200」の7番であっても、調整していつもの距離を打てばいいと、楽観視できるようになったのだ。実はこれまでのアイアンショットは強く振りすぎていたのではないか――。フルスイングを行い、しかもしっかり芯をとらえたときの“最大飛距離”を、理想の番手距離と勘違いしていたのではないかと思い始めた。「T200」でそれまでの番手別想定距離を出すことはとても簡単。スイングもコンパクトになり、力みが少なくなることで左右方向へのブレも極端に減った。

23年発売モデルの平均値に近いロフト設定の「T200」

これまでは、たまに当たったときの飛距離を基準にして、「これは7番じゃない、6番、いや5番」と違和感ばかりを口にしていたが、今では「これで7番の距離を打ってみよう」と考え、弾道のコントロールを楽しむようになった。そうすることでショットの精度が上がり、スコアメークも随分とラクに。もしかして、これが本来のアイアンの振り方だったの!? とさえ思えてくる。

もちろんストロングロフトが行きすぎたモデルでは、飛距離の調整も容易ではないが、“イマドキ”のアイアンに疑心暗鬼になっている方には、一度実戦で試してみていただきたい。昔の感覚や過去の情報を引き合いに出すのではなく、実際ソールに刻まれた番手通りの距離を打ってみる。160yd飛ばせる番手で150ydを狙ったときに生まれる“安定性”――それこそがストロングロフトアイアンの価値、生かし方なのかもしれない。(高梨祥明)

ストロングロフト化の流れに逆らわず あえて使い続けてみる

■ 高梨祥明(たかなし・よしあき) プロフィール

20有余年ゴルフ雑誌のギア担当として、国内外問わずギア取材を精力的に行い、2013年に独立。独自の視点で探求するギアに対する見解は、多くのゴルファーを魅了する。現在は執筆活動のほかマイブランド「CLUBER BASE(クラバーベース)」を立ち上げ、関連グッズの企画や販売も行う。