クルマはゴルフギアである

ワーゲンバスがEVで復活 VW「ID.Buzz」でゴルフの一日がワクワクする/クルマはゴルフギアである #9

2026/03/11 07:00
ID.Buzz

所有して3年。最近、あらためて電気自動車の魅力を実感しているというクルマ好きの安東弘樹氏に、大人ゴルファーの“持ち物”としてのクルマ選びを提案いただく本連載。車体価格や維持費だけでなく、所有し使うことでオーナーが豊かになれるクルマが選出条件だ。今回は、フォルクスワーゲンの「ID.Buzz」に熱視線を注ぐ。(構成/編集部・中島俊介)

ゴルフ場のエントランスでも独特の雰囲気を放つ

ワーゲンバスのデザインが“電気”で復活

この愛らしいデザイン、どこかで見たことがあると思った方も多いのではないでしょうか。ルーツは1950年に誕生した「Volkswagen Type2」、いわゆる“ワーゲンバス”として愛されたクルマにあります。ワーゲンバスのヘリテージを最新のEV専用プラットフォームで現代によみがえらせたのがこのID.Buzzなのです。「2025-2026インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」ならびに「2025-2026デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。これを嫌う人はいないのではないかと思うくらい、個性的でかわいらしいデザインだと感じていますがいかがでしょうか?

もともと商用車部門が作り上げてきたクルマだからこそ、スペース効率や実用性への思想が徹底されています。しかしそれを、単なる実用車で終わらせていないのがすごいところ。キャッチーなデザインに、質感や電動化という未来性を融合させ、「レジャーのための移動空間」として再定義したモデルと言っていいでしょう。大きな存在感を放ち、誰もが視線を送ってしまうようなクルマです。実際にスタッフが撮影車両を運転していると、街中で少なからぬ視線を感じたそうです。

誰かを乗せて走りたいクルマ

本モデルは2グレードで展開されており、6人乗りの「プロ」と7人乗りの「プロ ロングホイールベース」があります。後者は、全高と全幅はプロと同じですが、ホイールベースおよび全長が長く作られています。また、バッテリーの電圧や電力量がわずかに大きいです。

このクルマの最大の魅力は、「誰かを乗せて走りたい、遠くに行きたい」と思わせてくれるところだと思います。迎えに行ってパッセンジャーがドアを開けた瞬間、パノラマガラスルーフがもたらす明るい室内に驚かされることでしょう。乗りこんで走り出した瞬間から、車内の全員がこれから始まるゴルフの一日にワクワクするのではないでしょうか。光がしっかり届く後席は大人がしっかり座れ、圧迫感がありません。地味ながら注目すべきは後席のテーブルです。これが実にドイツ的で、剛性感があって実用本位。開閉の動きも節度があって、グラつきません。一見するとただの車内テーブルですが、ドイツ人が本気で作るとこうなるのかと私は唸らされました。ロードノイズも抑え込まれているため、会話が非常にしやすいのも特筆すべきポイントです。

運転しても楽しいミニバン

このID.Buzz、リヤモーター・後輪駆動方式を採用しており、運転しても実に楽しいです。このようなワンボックスカーは非常に希少で、それだけでも手にする価値があると思います。後輪にトラクション(駆動力)がしっかりかかる、リヤエンジン・リヤドライブの代名詞ポルシェ「911」シリーズに近いドライビングプレジャーを感じました。

ミズスマシのように機敏なハンドリングに加え、高速域からの加速シーンなどでは、多くのミニバンに採用されている前輪駆動方式と比べて加速の伸びがとても良いのです。560Nmという、従来のミニバンではありえない高トルクを発生するので、このボディに似合わぬ加速性能を体感できます。ミニバンにお乗りで、エンジン出力や加速性能に不満を抱いている方が試乗すると、ちょっと“危険”かもしれませんよ(笑)

有り余るトルクで、ゴルフ場に向かう上り坂もラクラク

以上のように美点の多いクルマですが、日本で使うに際して少し注意が必要な部分もあるのは事実です。まず航続距離。絶対的に安心できるレンジは300kmくらいなので、遠出の際は充電スポットを調べておくと快適に移動できます。次にボディサイズ。1900mmを超える全幅は、都心部で生活していると気をつかうケースが少なくないかもしれません。最後は価格です。このデザインと使い勝手、最新のEVプラットフォームがもたらす走行性能は唯一無二のものとはいえ、900万に届こうかというプライスタグが付いています(ロングホイールベースモデルはほぼ1000万円に達する)。補助金が出るとはいえ、購入できる人がやや限られているのは事実です。

舵を切る前輪が駆動しないのでステアリングを切る際のフィーリングが秀逸

物価上昇の折、およそ1000万のミニバンを購入しよう、という方がどれくらいいるのかわかりませんが、ID.Buzzがとにもかくにもすばらしい体験や時間を提供してくれるクルマであることに疑いようはありません。“刺さる人には深く刺さる”のがこのID.Buzzだと強く思っています。

<SPECIFICATION 括弧内は「プロ」>
ID.Buzz プロ ロングホイールベース
●全長×全幅×全高:4,965(4,715)mm×1,985mm×1,925mm
●乗車定員:7(6)名
●車両重量:2,720(2,550)kg
●駆動方式:RWD
●航続距離:554(524)km ※WLTC
●原動機:交流同期電動機
-最高出力:286PS/3,581-6,500rpm
-最大トルク:560Nm/0-3,581rpm
●総電圧383(353)V
●総電力量:91(84)kWh
●車両本体価格:9,979,000円~(8,889,000円~)※税込

イラスト:酒井恵理
写真:尾形和美
取材協力:米原ゴルフ倶楽部

■ 安東弘樹(あんどう ひろき) プロフィール

元TBSアナウンサーにして大のクルマ好き、いや“クルマ狂”。50台ほどのクルマを乗り継ぎ、TBS勤務時代から自動車ローンが途切れたことがないという。独自の視点から切り込む自動車関連のコラムを各種媒体で連載中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員で日本自動車ジャーナリスト協会会員。