こりゃオッたまげた! 飛びと打感の“両立感”たるや「P790 アイアン」(2023年)
シャープなヘッド形状と中空構造によるやさしさのギャップが魅力的な「P790 アイアン」。2017年に初代が登場し、2年に1回のモデルチェンジを経てテーラーメイドを代表するアイアンとなった。今年9月に4代目となる新作が発売されたが、前作からどのような点が進化しているのか、ギアの知識が豊富なクラフトマン・ミタさんが特徴を分析。そして、マッスルバックユーザーのヨシダくん(HS50m/s)とキャビティバックユーザーのシオさん(HS40m/s)が試打して本音で評価する。
クラブの特徴は?
【ミタさん】
今回紹介するのは、テーラーメイドの人気アイアン「P790」です。
【シオさん】
新作も売れているようで、すっかり中空アイアン市場をリードするモデルになりましたね。でも、そもそも「P」と「790」ってどういう意味でしたっけ?
【ミタさん】
モデル名に含まれる「P」は「Player’s Iron」(プレイヤーズアイアン)の頭文字で、ツアープロからアマチュアまで様々なプレイヤーにマッチするアイアンという意味です。また、三桁の数字はブレード長を表しており、「P790」はブレードの長さが79mmに設定されています。「P700 シリーズ」では、これまで「P730」「P750」「P760」「P770」など様々なレベルのゴルファーに合ったモデルが登場しました。
【ヨシダくん】
見た目の雰囲気は、前作から大きく変わったようには見えないのですが、どのような点が進化したのでしょうか?
【ミタさん】
3代目の前作と比べて、劇的な進化を遂げました。見た目はほぼ同じでも、ヘッド内部では番手毎にタングステンの重さと位置を変えています。ロングアイアン(3~5I)では約33gのウエートをヘッド下部に配置して低重心化。ミドルアイアン(6・7I)ではトウ部分に約38gの重りを設置することで高初速エリアを拡大しています。そして、ショートアイアン(8I~P)のヘッド内部にはウエートを設置せずに重心を高くすることで、スピン性能を高めているそうです。
【シオさん】
ちなみに、フェースの裏面がボコボコしているのは何か理由があるんですか?
【ミタさん】
フェース裏側の上部は、ボールのディンプルのような凹みを設けることで軽量化に成功しました。生まれた余剰重量を再配分することで、各番手で最適な重心設計を追求しています。
【ヨシダくん】
たしかにヘッドの内部構造や新しいテクノロジーはすごそうだけど、中空アイアンって打感があまり良くないイメージ…。試打して確かめてみましょう。
試打した印象は?
【シオさん】
バックフェースのデザインは精悍なアスリートモデルといった雰囲気です。でも構えてみると、やさしい顔をしています。トップラインに厚みがあるので見た目は安心感がありますね。
【ミタさん】
打った印象はどうですか?
【シオさん】
想像していたよりも、8~10ydくらい飛んでいました。でも、決してスピン量が少ないアイアンではありません。スピンがしっかり入って高弾道で飛距離も出るので、グリーンに止まる弾道です。アスリートモデルのアイアンを使っていて、もう少し飛距離が欲しいという人がハマる距離感だと思います。
【ヨシダくん】
(ドライバーで)ヘッドスピード40m/sのシオさんが打って、7番で175yd近く飛ぶなんてスゴイですね。
【シオさん】
フェース下部に当たってもほとんど飛距離が落ちません。左右のズレはもちろん、上下の打点ブレにも強い印象です。何球か打ってみましたが、弾道が安定していたので、コースに持って行ってすぐに使えそうです。
【ヨシダくん】
僕は一発目からすごく良い球が出ました。普段の7番と比べて10yd以上飛んでいてびっくり! 打感は前作と比べると格段に良くなっています。芯を食った強い手応えがありつつ、柔らかいフィーリングが残るので、めちゃくちゃ気持ちいい。中空アイアンにありがちな弾き感がなく、打感の良さが気に入りました。
【ミタさん】
打感に関してはヘッド内部に入っている「スピードフォーム」という充填材の効果が大きいと思います。前作より軽く、柔らかくなったことで反発力を高めつつ、ソフトな打感になっています。
【ヨシダくん】
アイアンとして総合力がすごく高いなと思いました。昔の成績表で言えば“オール4”の優等生タイプ。しかも、ちょっと打点がズレたりしたときでも、手に嫌な振動が伝わってこない。飛距離もほとんど落ちません。
まとめ
【ミタさん】
アスリートゴルファーのヨシダくん、ベテランゴルファーのシオさんが全部門で4点の評価をした「P790」。総合力が高く、ミスヒットに強い万能なアイアンです。2人にとっては“オール4”でしたが、平均スコアが85~95くらいでヘッドスピードが42m/s前後のセミアスリートゴルファーが使うと、飛距離性能と安定性により“オール5”となる可能性を持つモデルだと思います。
【ヨシダくん】
評価は“オール4”だったけど、総合力は5点満点です。
■ 試打したクラブのスペック
テーラーメイド P790 アイアン
●番手(ロフト角):7番(30.5度) ●シャフト:N.S.プロモーダス3 ツアー105 ●硬さ:S
■ ミタさん プロフィール
1978年生まれ。かつてのサッカー少年が父の影響でゴルフを始めたのは高校生のとき。2014年にゴルフテックに入社し、レッスンコーチ兼クラブフィッターとして活躍した。現在はギア知識を活かして、コンテンツの企画を担当。洋服や車など好きな「モノ」への探求心が人一倍強く、作り手の素材や製法へのこだわりが大好物。デニムやスニーカーへの知識も豊富。
■ ヨシダくん プロフィール
1985年生まれ。「日本一の漫才師」を夢見た幼少期を経て、学生時代はゴルフに没頭。日本アマなどに出場した。日本プロゴルフ協会(PGA)ティーチングライセンスを取得した2012年にゴルフテックに入社。長年、レッスンコーチを務めていたが、現在はコンテンツに出たり、作ったりしている。ヘッドスピードは50m/s前後。持ち球はフェード。最近は四十肩との付き合い方を模索中。
■ シオさん プロフィール
1967年生まれ。GDOでは古参の編集部員。若い頃は小ぶりヘッドのドライバーとマッスルバックのアイアンを愛用していたが、近年ではミスに強く、飛ばせるギアを好んで使用している。ヘッドスピードは40m/s前後。ミドルアイアンでグリーンに止まる球が打てないことが最近の悩み。持ち球は低めのドロー。平均スコアは80くらい。