どれとウマが合う? 性格が大違いのホットメタル3兄弟 ミズノ「JPX925 HOT METAL/PRO/HL」アイアン
JPX誕生から20周年を迎えたことし、ミズノが2年ぶりに「JPX HOT METALシリーズ」をリニューアルした。近年は米国でもシェアを伸ばしているという「JPXシリーズ」は、どのような進化を遂げたのか。その打感、弾道、特徴をアスリートゴルファーのコウタロウ(ドライバーでHS50m/s)とベテランゴルファーのシオさん(同HS40m/s)がチェック。詳しい性能はギア知識が豊富なミタさんが解説する。
クロモリより強度が高いフェース素材で反発性能をアップ
【ミタさん】
昨年の秋は「MPシリーズ」が出ましたから、ことしの秋は「JPXシリーズ」です。
【シオさん】
JPX925は「HOT METALシリーズ」だけで3機種あるんですね。
【ミタさん】
スタンダードの「HOT METAL」があって、ロフトを増やした「HOT METAL HL(以下HL)」。そして、形状を少し小さくしたのが「HOT METAL PRO(以下PRO)」です。
【コウタロウ】
「JPXシリーズ」って全体的にどんどんカッコよくなっているので、「MP」に近づいてきた雰囲気があります。
【ミタさん】
デザインはたしかにスッキリして、シャープになっています。でも性能は全然違います。「JPXシリーズ」は20年前から一貫して飛距離を追求しておりますが、前作の「JPX923 HOT METALシリーズ」でスイートエリアの反発がルール限界に達しました。ですので今シリーズはその高初速エリアを拡大したモデルとなっています。
【コウタロウ】
そもそも飛距離を出せる理由って何ですか?
【ミタさん】
もちろんロフトの違いもありますが、フェース素材に使用している高強度ニッケルクロムモリブデン鋼の影響が大きいです。
【シオさん】
よくクロモリ(クロムモリブデン鋼)っていうのは聞きますけど、「ニッケル」というのは?
【ミタさん】
ニッケルクロムモリブデン鋼はクロモリ鋼よりも強度が30%以上あって、航空機にも使われています。相応の加工技術も必要となりますが、強度が高い素材を使うことでフェースを薄くできる。その結果、反発性能を高くすることができます。
【シオさん】
歴代の「JPX」はやさしい印象もありますけど、そこも進化していますか?
【ミタさん】
実は今作は設計をイチから見直して、フェースの最薄部分を前作から薄くしつつ、ソールの下側にあえて空洞を作っています。その空洞の効果によってオフセンターヒットしたときの初速が落ちにくくなり、高初速エリアが大幅に拡大しています。
【シオさん】
内部構造を見ると、タングステンも入っていますね。
【ミタさん】
ヒール、センターに比べて、トウ側に多くのタングステンを配置させたことでもスイートエリアが広がりました。
【コウタロウ】
20周年だからなのか、すごく力が入っていますね。
【シオさん】
打つのが楽しみです。
3モデルとも個性が違う!まさかのキャリー160ヤード
【ミタさん】
3機種あるので、まずはシオさんに「HOT METAL」を打ってもらいましょう。
【シオさん】
やっぱりミズノは顔がキレイ。一発でスクエアに構えやすいですね。アイアンの形状とゴルファーの好みをよく分かっているなと思いました。
【ミタさん】
打感や飛距離はどうでしたか?
【シオさん】
もちろん飛距離性能も高かったのですが、驚いたのは打感。「MP」に比べると硬めで弾き感はありますが、上品な音で心地よい。飛び系のアイアンでこういう打感は唯一無二かも。
【コウタロウ】
キャリーで170ヤード以上飛んでいましたね。でも落下角度が40度未満だったので、高さがもう少し欲しいところ。
【ミタさん】
大丈夫!そのために「HL」がありますから。7番アイアンのロフトは「HOT METAL」が28度で、「HL」が31度です。
【シオさん】
「HL」はグースも入っていてトップラインも厚い。でも決してボテっとした印象はありません。打ってみると、めちゃくちゃ簡単。楽に打球が上がってくれて、球筋が安定しました。弾道が高くなったことで落下角度が45度近くにまでなり、私の場合は距離もほとんど変わりませんでした。
【ミタさん】
「HL」は高さがしっかり出る分、シリーズでいちばん飛んだというケースも珍しくありません。特に弾道が低くて悩んでいるゴルファーは「HL」を試してほしい。
【コウタロウ】
左右のバラツキも減りましたね。
【ミタさん】
純正のカーボンシャフト「Mフュージョン」はどうでしたか?
【シオさん】
50グラム台ですがしっかりしたフィーリングで、カーボンシャフトとは思えない安定感がありました。90グラム台のスチールシャフトを使っているゴルファーにとっても違和感のない振り心地だと思います。
【ミタさん】
では、コウタロウは「PRO」を打ってみてください。
【コウタロウ】
いつも通り顔がイイ。少なくとも飛距離が出るタイプのアイアンの顔じゃなくて、中・上級者が好む形状です。
【ミタさん】
打感はどうでしたか?
【コウタロウ】
まさに“HOT メタル”という打感です。メタルっぽい強さ・弾き感がありますが、手に残る余韻としてはマイルドで温かみがある。今まで打感に違和感があって飛び系のアイアンを避けていた人も、コレなら使えると思います。
【ミタさん】
距離もすごいですね。
【コウタロウ】
飛びすぎじゃないかと思うくらい飛距離が出ましたね。ただ、思っていたよりも操作性があって、決してオートマチックに打つだけのアイアンじゃない。。それが他の2機種と明らかに違いました
【ミタさん】
3機種とも飛距離性能は高いですが、それぞれ個性が違います。「HOT METAL」は適度な安定性を持たせた中弾道の高初速モデル。少しスピン量は抑えめで強い打球が打てます。「HL」は打ち出しも、最高到達点も高くて、スピンもしっかり入るタイプ。「PRO」は操作性もあるので、テクニックがある人ほど球筋をコントロールしやすい。中・上級者で飛距離が欲しいタイプにオススメです。
【コウタロウ】
バックフェースのデザインは似ているけど、打つと全然違う。“似ていない”兄弟モデルです。(笑)
まとめ
■ 試打したクラブのスペック
ミズノ JPX 925 HOT METAL
●番手(7I):28度●シャフト:N.S.プロ950GH neo●硬さ:S
ミズノ JPX 925 HOT PRO
●番手(7I):29度●シャフト:N.S.プロ950GH neo●硬さ:S
ミズノ JPX 925 HOT METAL HL
●番手(7I):31度●シャフト:Mフュージョン●硬さ:R
■ マイクラブ情報
コウタロウ:ピン ブループリント アイアン
●番手(ロフト角):7I(34度) ●シャフト:KBS Cテーパー 125 ●硬さ:S+
シオさん:タイトリスト T300 アイアン<2021年>
●番手(ロフト角):7I(29度) ●シャフト:NSプロ モーダス3 ツアー 105 ●硬さ:S
■ ミタさん プロフィール
1978年生まれ。かつてのサッカー少年が父の影響でゴルフを始めたのは高校生のとき。2014年にゴルフテックに入社し、レッスンコーチ兼クラブフィッターとして活躍した。現在はギア知識を活かして、コンテンツの企画を担当。洋服や車など好きな「モノ」への探求心が人一倍強く、作り手の素材や製法へのこだわりが大好物。デニムやスニーカーへの知識も豊富。
■ コウタロウ プロフィール
1985年生まれ。「日本一の漫才師」を夢見た幼少期を経て、学生時代はゴルフに没頭。日本アマなどに出場した。日本プロゴルフ協会(PGA)ティーチングライセンスを取得した2012年にゴルフテックに入社。長年、レッスンコーチを務めていたが、現在はコンテンツに出たり、作ったりしている。ヘッドスピードは50m/s前後。持ち球はフェード。最近は四十肩との付き合い方を模索中。
■ シオさん プロフィール
1967年生まれ。GDOでは古参の編集部員。若い頃は小ぶりヘッドのドライバーとマッスルバックのアイアンを愛用していたが、近年ではミスに強く、飛ばせるギアを好んで使用している。ヘッドスピードは40m/s前後。ミドルアイアンでグリーンに止まる球が打てないことが最近の悩み。持ち球は低めのドロー。平均スコアは80くらい。