【新連載】オデッセイ「Square 2 Square」話題の“トルクレス”はどうなんだ?/オグさんのPUTTER偏愛日記 #2
オグさんです。パターだけをフィーチャーした新連載、今回はオデッセイの新製品「Ai-ONE Square 2 Square」シリーズのパター(以下、S2S)を取り上げます。これはツアーの一部で人気上昇中の「トルクレスパター」オデッセイ版。ショートパットにとにかく強く、結果を求めるプロがこのような“変わり種”を使うのは以前から散見されます。
パターを選ぶ際の重要なポイントとして、ボール位置とストロークタイプが重要だと私は考えています。これらはゴルファーによって異なるので、自分のスタイルにマッチするパターを選ぶことこそ安定したパッティングにつながる近道です。しかしこのS2Sはスタイルが確立されている人もいない人も使えるモデルとして私は注目しているため、今回取り上げようと思いました。
上記を説明したこちらの記事も是非ご覧ください。
自然と真っすぐ打てるパター
S2Sシリーズは、簡単に表現すれば「シャフトの角度に逆らわず構えれば、自然と真っすぐにストロークできるパター」で、そのための特徴的な仕掛けが複数搭載されています。
S2Sは通常のパターと異なり、シャフトがヘッドの中央付近に接着されています。この場所はヘッドの重心位置であり、ここにシャフトを装着することで「ストロークバランス」を実現させています。
「ストロークバランス」とは、同社の過去モデル「TOE UP」「バックストライク」などに見られた設計で、ヘッドを宙に浮かせた状態でシャフトを支えると、トウ側が真上を向く構造のこと(通常のパターはトウが下方向を向きます)。このストロークバランスはストローク中にヘッドが動こうとする力を極力抑え、プレーヤーが余計な力を加えなければ構えた方向へ安定してボールを打ち出せます。
さらにシャフトの挿し方にも工夫がみられます。打ち出し方向に3.3度傾けて装着されており、パターどおりに構えると自然とハンドファーストの構えになります。こうすることでストローク中における腕や手首などの余計な動きを抑制し、オートマチックに安定したストロークができるのです。
S2Sは3つのヘッドをラインアップしています。どれも前述した工夫がなされ、打点がズレてもボールの転がりが変わりにくいAi-ONEフェースを搭載し、非常にミスに強く仕上がっています。
■Ai-ONE Square 2 Square ジェイルバード
“初出”は実は10年前
本モデルの一番の特徴は、やはり構えやすさでしょう。横方向のサイトラインがほとんどなく、2色の塗り分けによる垂直なラインはコントラストとも相まって、ヘッドのどこを見ても目標に対して正確に構えやすくできていると思います。
■Ai-ONE Square 2 Square #7
ツノ型は今や不動の人気
「ツノ型」「クワガタ」「カニ」などの愛称で呼ばれる#7は、愛用者の非常に多いモデルです。ヘッド形状由来の構えやすさに加え、打ち出し方向と平行に入る長めのサイトラインはボール幅とほぼ同じで、ストロークのイメージが自然と湧きます。
■Ai-ONE Square 2 Square DW
幅の広いブレード型
モデル名の「DW」とはダブルワイドの略で、ヘッドに奥行きのあるブレードタイプによく使われる名称です。ブレードタイプの構えやすさやシャープさと、マレットほどではないにせよ適度な安心感を両立させたモデルとして最近増えつつあります。ブレードタイプ愛用者や、大きなヘッドに苦手意識があるプレーヤーに向けたモデルです。
S2Sはパットスタイルが固まっていないほど効く!?
他のパターとは異なる特徴を複数持つS2Sは、使用するにあたって気を付ける点があります。それは「パターに逆らわないこと」です。傾いて装着されたシャフトはハンドファーストの形―リストの動きを抑制できる構え―を再現性高くするための工夫で、シャフトが垂直になるよう構えてしまうとロフト角がつき過ぎフェースが左を向きやすくなります。換言すれば、これほど打ち方を強要されるパターも少ないでしょう。ですが、パターの言うこと?を聞いていれば、非常に安定したストロークが手に入ります。
【ポイント-1】 どちらかといえば左肩軸のイメージで
S2Sはストロークバランス設計によって、ストローク中のフェースの捻じれが非常に少ないパターです。その特性を生かすには、プレーヤーが余計なことをしないのが一番。ハンドファーストで構えればリストの動きが抑制されるので、その形を維持してショルダーストロークを意識して打てば、パターの特性によって安定したパッティングができます。
通常のパターよりも少し吊るように意識すればストローク中のヘッド軌道がストレートに近くなりやすく、ストロークバランスのメリットがより生かせます。軸のイメージは、センター軸でも問題ないですが、どちらかといえば左肩軸の方がマッチします。構えた時点でハンドファーストになるため、グリップエンドが左肩方向を指します。そのグリップエンドの向きを維持するイメージを持つととてもスムーズにストロークできました。
【ポイント-2】構えやすいものを選べばOK
S2Sはシリーズのコンセプトが明確なこともあり、3つのヘッドの大きな差異はアドレス時の見え方です。言ってしまえば、一番構えやすいと思ったものを選べば良いでしょう。
<ジェイルバード>
ジェイルバードは、打ち出し方向に対して垂直なラインによる構えやすさが特徴。フェース付近ではなくヘッドの中央付近を見てアドレスするゴルファー、または利き目が右のゴルファーが構えやすいと感じることの多いモデルです。
<#7>
#7は、打ち出し方向に対して平行に入る長いサイトラインを持つモデル。ブレード側のセンターにもサイトラインが入っており、白いAi-ONEフェースと合わせてT字型のラインが生まれます。サイトラインがあった方が構えやすいと感じるゴルファーにマッチします。
<DW>
ブレードタイプのDWは他のモデルと比べてヘッドの奥行きが狭いこともあり、わずかですが、振り心地が軽く感じました。実物を計測した重量はほぼ同じでしたので、これは見た目の印象によるものでしょう。ヘッドの動かしやすさを感じたので、ストロークテンポがクイックな自覚があるゴルファーは、DWを振りやすいと感じると思います。
縦に長いブレードタイプは視覚的に扱いやすく感じられる形状です。S2Sはオートマチックに振るのがベストなので操作性は必要ありませんが、ブレードタイプの方が構えやすいならDWがいいでしょう。
前述の通り、S2Sはパッティングスタイルが固まっていないゴルファーほど良い結果に導いてくれるパターだと思います。パターをどう打っていいかわからない、ただ何となく打っている、なんていうゴルファーに是非おすすめしたいですね。自分のパッティングスタイルが決まっているゴルファーにとっては打ち方を強要されることにもなり得るので、マッチしないゴルファーもいるでしょう。しかしそんな人でもS2Sを1本持っていて損はないかなと思います。理由は、調子の悪い時にS2Sを使えば安定したパッティングが可能だから。それくらい使い方が明確で、非常に高性能なパターです。
取材協力:AR GOLF JAPAN
写真:小林司
■ 小倉勇人(おぐら・はやと) プロフィール
ゴルフショップ「ゴルフフィールズ ユニオン」店長。クラフトマン、クラブフィッター、さらに雑誌やウェブ記事の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。