オデッセイ「マイクロヒンジ」研究!ホワイトホットインサートとの違いは?/オグさんのパター偏愛日記#3
パターの新連載3回目は、オデッセイの新製品「マイクロヒンジ(MICRO HINGE)」シリーズ(2024年11月発売)を取り上げます。マイクロヒンジとはオデッセイのインサートの名称で、このインサートが初めて搭載されたモデルは2017年の「オーワークス」。打感がソフトで転がりが良いと評判になりました。私個人の感想も非常にソフトな打感で、文字通り地を這うような転がりが安定して打てるパターとして印象に残っています。
マイクロヒンジインサートは、ウレタンプレートの上にステンレスの爪がいくつも突起しているように成形されています。インパクト時にこの突起が順回転をかけ、インパクト直後の芝とボールの摩擦を軽減することで、スムーズな転がりを実現するとのこと。
ホワイトホットよりもソフトな打感
なぜオデッセイは、このタイミングでマイクロヒンジインサートを復活させたのか?理由はいくつかあると思いますが、現在の主流である「ホワイトホットインサート」とはまた異なる魅力があるからでしょう。パッティングでの打感は、インパクト時にフェースとボールとの接点が小さくなるほど軟らかく感じやすいです。ボールの表面に小さな接点が食い込み、弾く働きを軽減するからです。平滑に仕上げてあるホワイトホットインサートは適度にソリッドな打感ですが、インサート上に複数の突起が施されているマイクロヒンジインサートは、非常にソフトな感触です。打感はゴルファーそれぞれの好みがありますので、よりソフトな打感が好みならマイクロヒンジインサートの方が気持ちよいと感じるでしょう。
マイクロヒンジインサートの爪はすべて上方に向いた状態で設置されています。インパクト直後に順回転がかかるようにするためです。表面がフラットなホワイトホットインサートとはブレイクポイント(曲がる地点)などが微妙に異なるでしょうから、ゴルファーによって合う合わないが変わる部分だと思います。
【選び方】距離感が合うのはどういう打感?
今回改めて打った「マイクロヒンジインサート」搭載のパターですが、個人的な感覚としては、前作と変わったところはありませんでした。相変わらず打感はソフトで微妙なタッチが出しやすく、地面に吸い付いているような良い転がりは、速いグリーンと非常にマッチしそうです。パターの重さはモデルごとに異なりますがおおむね標準的で、重めのグリーンでも問題はないでしょう。
現在オデッセイの主流であるホワイトホットインサートとの差異は、打感や転がりにあります。どちらを選ぶかですが、インパクト時の感触と距離感がマッチすることが重要ですので、距離感が合うのは少しソリッドな感触か、それともソフトな感触かがチョイスのカギになると思います。感触だけを優先して距離感が合わなくては本末転倒ですからね。ソフトな感触は衝撃を吸収しているわけですから「飛ばない」と感じやすいです。マイクロヒンジインサートは、ソフトな感触なのに転がりの良い、ある意味矛盾した性能。どんなに高性能でも自分自身の感覚とマッチしなければ良い結果は得られませんので、この性能を理解したうえで使用するとより性能を生かしやすくなるでしょう。
各モデルがそれぞれどういう人に合うかの目安を記しましたので、下記記事を参考にご覧ください。
■マイクロヒンジ #1
構えやすさと転がりの良さを両立したブレード
#1はオデッセイの多くのシリーズにラインアップされているおなじみのヘッドです。ボディには「ヴァーサ」シリーズで好評な2色のカラーリングを採用し、目標への正確なアライメントをアシストします。
<合う人>
センター軸 or 左軸 → 左軸
ボール位置センター or 左寄り → センター
クランクネックはオフセット量が多くフェースがシャフトより後方に位置するため、ボールをセンターにセットしやすい。またハンドファーストに構えやすく、シャフトが左肩を指した構えが自然に取れるため、左軸にマッチしやすいと言えます。
■マイクロヒンジ DW
ブレードとマレットのいいとこ取り
ブレードタイプの奥行きを広げたようなヘッドにストライプカラーを組み合わせることで、ブレードタイプの特徴である構えやすさを増長しました。そこに、長さのほとんどないベントネックを組み合わせてフェースバランスに設定。ストローク中のフェースのねじれが少なく、言わばマレット型に近い特性に仕上がっています。
<合う人>
センター軸 or 左軸 → センター軸
ボール位置センター or 左寄り → センター
クランクネックよりも垂直に近い角度でシャフトが装着されており、センター軸で釣るように構えて振り子のようにストロークするスタイルがおすすめです。オフセット量がしっかりあるのでボール位置はセンターがよさそうです。
■マイクロヒンジ 2-BALL V-LINE
適度なアバウトさが良い
オデッセイの看板ヘッドのひとつ「2-BALLアライメント」を採用したモデル。ヘッド上部にボールとほぼ同じサイズのディスク(白丸)2枚を横に並べることで、正確なアライメントが取りやすいのが特徴です。ストローク中に白い残像が目に残るため、イメージが作りやすいメリットも。本モデルはベントネックで、適度なオフセット量があります。2つのディスクによってフェース向きが管理できるので、水平や垂直のラインで構えるのが苦手な人に良いモデルです。
<合う人>
センター軸 or 左軸 → センター軸
ボール位置センター or 左寄り → センター寄り
マレットモデルらしい、フェースバランスの仕上がりなので、振り子のようにストロークするセンター軸がマッチします。ボール位置は、個体差かもしれませんが、オフセット量がそこまで大きくないので、どちらでも行けそうです。どちらかといえばセンター寄りがマッチします。
■マイクロヒンジ MARXMAN FANG
長いサイトラインが特徴の“大MOI”マレット
ボディ中央部をくり抜いて外周に重さを配置することで慣性モーメントを高めたマレットタイプ。ボール径と近い幅の白と黒のサイトラインが特徴で、2-BALLとは異なる構えやすさを追求しています。ベントネックによるフェースバランスで安定感が高く、芯を外してもブレにくいモデルです。
<合う人>
センター軸 or 左軸 → センター軸
ボール位置センター or 左寄り → センター
2-BALLとよく似た特性で、センター軸の振り子ストローク、ボール位置センターとのマッチングが良好です。
■マイクロヒンジ #7 DB
構えやすさと適度な操作性で人気のツノ型
#7は、オデッセイの看板ヘッドのひとつ。奥行きのあるマレットタイプながら後方の面積は小さく、重心は比較的浅めに位置しています。サイトラインも長めのものが刻まれており、マレットらしい構えやすさと深すぎない重心位置によって適度な操作性を持つモデルです。DBはダブルベントネックを表します。
<合う人>
センター軸 or 左軸 → センター軸
ボール位置センター or 左寄り → センター
やや操作性があるとは言え、ベントネックとの組み合わせによりオートマチックな振り子ストロークとマッチします。
■マイクロヒンジ #7S
操作も可能なショートスラントネック搭載マレット
#7にショートスラントネックを組み合わせることでトウハングの角度を持たせたモデル。これにより、上記DBよりもヘッドが開閉する力が大きく、操作性が向上しています。オフセットの量も小さくなり、左軸でも扱いやすくなっているので、マレットタイプが構えやすいけれど振り子ストロークがマッチしない、といった人は試す価値があります。
<合う人>
センター軸 or 左軸 → 左軸
ボール位置センター or 左寄り → 左寄り
オフセットが小さいのでブレードタイプと同じように扱え、左寄りのボール位置や左軸のストロークと好相性です。かといってセンター軸ストロークやセンターのボール位置に合わないわけではないので、好みで選べるでしょう。
#1がイチオシか!
ずっと使い続けているツアープロもいる「マイクロヒンジインサート」を人気のヘッドと組み合わせ、シリーズとして復活させる。これは非常に良い戦略だと思います。オデッセイで現在主流の「ホワイトホットインサート」よりもソフトな感触なので、軟らかい打感を好むゴルファーにはこちらがおすすめです。
個人的には、#1が好きです。非常にきれいなブレードの形状と重すぎない重量、構えやすいカラーリングに高性能インサートと、パターに要求される機能全部乗せです。価格も現在のパターの平均価格よりはリーズナブル。高コスパで高性能なパターを探している人は要チェックです!
取材協力:AR GOLF JAPAN
■ 小倉勇人(おぐら・はやと) プロフィール
ゴルフショップ「ゴルフフィールズ ユニオン」店長。クラフトマン、クラブフィッター、さらに雑誌やウェブ記事の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。