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パターは「平成」30年間でどう進化したのか?

2019/09/29 05:00

平成元年パターと令和元年パターを試打検証

左は元祖ピン「アンサー」、右は渋野日向子も使用しているピン「シグマ2 アンサー」

新製品が発売されるたびに、大きな進化を遂げてきたゴルフクラブ。約31年前の平成元年に人気だったモデルと令和の最新モデルを試打比較して、平成の時代にどれだけ性能が変わったのかを検証する。今回はドライバー編アイアン編ウェッジ編に続き、パターの進化を検証した。

平成元年モデルは、打ち出しが低い & スキッドが短い

5mのパットを各モデル5球打ち、その平均値を計測

モデルはブレード、マレット、L字の形状の異なる3タイプのパターを使用し、それぞれ新旧1本ずつのモデルを試打。テスターは自身もさまざまなモデルを使用してきた鹿島田明宏プロにお願いし、実際にトラックマンでの計測を行った。

上からブレード、マレット、L字の比較数値

トラックマンの計測で判明したことは、3モデルとも平成元年モデルのほうが「打ち出し角(Launch Angle)」がやや低め。順回転に転がり始めるまでの距離(スキッド/Skid Distance)が短いことも分かった。この結果から考えられる傾向は、平成元年モデルではややダウンブローでインパクトし、打ち出し角がやや低めに出て、順回転は徐々に“かかる”というより、フェースの動きで“かけていく”動きが自然と入るのでは? ということ。

ピン「アンサー」ではややダウンブローのインパクトに…?

この見解について鹿島田プロは、「パターの場合、厳密には無意識にいろいろな調整をモデルごとにしてしまっているので、一概には言えないと思います」と前置きした上で、ストロークでの感覚の違いについて「平成元年モデルでは始動でグリップを一度、飛球側に出してからテークバックする『フォワードプレス』をしている感じがある」と述べた。無意識とはいうものの、編集部ではこの要因をクラブの総重量にあるとにらんだ。

無意識に始動時の手元の位置が違っていた

「総重量」の変化がパッティングを変えた

シャフトやグリップも含めた総重量で計測

各クラブの総重量を計測したところ、令和元年モデルのほうがすべて重い結果となった。

■ ブレード型

ピン「アンサー」 502g
ピン「シグマ2 アンサー」 539g

■ マレット型

ラム「ゼブラ フェースバランス(FACE-BALANCED)」 525g
オデッセイ「EXO ロッシー」 551g

■ L字型

マグレガー「トミーアーマー IMG5」 482g
オデッセイ「オー・ワークス #9」 489g

ブレード型では37g、マレット型では26g、L字型では7gとそれぞれ差に大小はあるものの、総じて令和元年モデルのほうが重いことが判明。この結果を踏まえて鹿島田プロは、自身のストロークについて「ヘッドが軽ければある程度インパクトの強弱でタッチを決められますが、重いほどパター自体のリズムでストロークしたくなります。平成元年モデルでフォワードプレスする理由は、ヘッドの動きを生かして分厚いインパクトを打ちたいという意識の表れだと思われます」と分析した。

パターが重くなったのは米男子ツアーのせい?

高速グリーンで有名なオーガスタでも1980年代前半までそれほど速くなかったとのこと ※画像は2019年「マスターズ」最終日

平成元年モデルより令和元年モデルは総じて重いことが分かったが、この重さの変化はどんな理由から生まれたのか? 鹿島田プロはパターを制作しているメーカー側の観点で要因を挙げる。

「いまやパターモデルの主軸はキャロウェイ(オデッセイ)、タイトリスト(スコッティ・キャメロン)、ピンといった海外メーカーです。ベースとなっているのは、米男子ツアーの高速グリーン。30年前と比べて硬く高速化されているため、現代のパターは強くヒットさせなくても自然と転がるようにできています。ヘッドだけでなく、グリップも太く重たくなり、手の動きよりパター自体の慣性を使って、一定のスピード感でストロークできるようになっているのです」

実は30年前の重量パターがおすすめ?

今回計測したそれぞれの重量帯を参考に

ヘッドの製造精度やフェース面のテクノロジーなど、明らかな“進化”と呼べる部分とともに、近年のグリーンの高速化により、感覚よりオートマチックに打てる機能への需要にともない、重さや慣性モーメントの拡大という形で“変化”を遂げてきたパター。

ただし、我々アマチュアゴルファーは、米男子ツアーのような超高速グリーンでプレーすることはほとんどない。グリーンの速さを売りにしているコースもあるが、国内では30年前と比べてそれほどスピード感が変わったとは言えない感覚だ。そういう意味では、30年前の米ツアーで流行したパターの重さ(今回の平成元年モデル程度)が、現状の国内コースのグリーンに適しているのではないか、とさえ思えてくる。

最新パターをうまく使いこなすには

「流行に合わせてストロークの意識も変えていくべき」と語る鹿島田プロ

では、現代の令和元年モデルをどのように使いこなせば良いのか? 最後にこの質問を鹿島田プロにしてみると、「最新パターでパットの距離感が合わない人は、強い慣性モーメントを持つパターを手にしながら、自分の感覚を強く加えてしまう人と言えます。インパクトの強弱ではなく、一定のスピードで振り幅を変えて距離を打ち分けるオートマチックな動きを練習しましょう」と、ひと言アドバイスで締めくくってくれた。

これからの令和の時代、最新モデルを使いたい人はオートマチックな動きをマスターし、感性で打ちたい人は中古ショップを巡って、30年前のような軽めのパターを探してみると良いかもしれない。

取材協力:オーク・ヒルズカントリークラブ

■ 鹿島田明宏(かしまだあきひろ) プロフィール

1965年生まれ、東京都出身。東日本ジュニア4連覇、全日本シングルプレーヤーズ選手権優勝。日大ゴルフ部で主将を務め、その後PGAプロテスト合格。初心者でも明確で分かりやすい定評のあるレッスン、経験豊富なギア知識で多くのゴルフ誌で活躍中。

オデッセイ
発売日:2018/07 参考価格: 45,360円