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なぜ2大メーカーが同日発表? コンテンツ化で変わる発表会の意義

2021/01/27 17:08
SIM2とエピックSPEED/MAX(※提供:テーラーメイド・キャロウェイ)

テーラーメイド「SIM2」とキャロウェイ「新エピック」の注目シリーズが、どちらも1月20日に発表された。両社とも例年1月下旬に米国で開催される世界最大のゴルフ見本市「PGAショー」に合わせて新商品を発表してきた経緯があり、同じ時期に発表会を行うことは多かったが、日本国内で同日発表となるのは今回が初めて。偶然か? それとも話題作りのための画策か? クラブメーカーの広報活動に詳しいギアライター嶋崎平人氏に、その真相を聞いた。

そもそも発表会の日程は誰がどのように決める!?

両社の発表会が同日に行われた理由について、嶋崎氏は「偶然だったと思いますよ」と即答する。

テーラーメイド石坂友宏、キャロウェイ河本結が登壇

「新商品発表会の日程は、各メーカーの施策部門が決めるのですが、発表後にメディアに取りあげてもらう期間を考慮して、発売日の約1カ月前に定めます。その後、多くのメディアが来場しやすい都内ホテルを会場として押さえ、登壇してもらう契約プロのスケジュールを確保し、発表会の数週間前には関係者に招待状を送ります。その手間と時間を考えると、日程を一度決めた後、他社の動向をうかがいながら調整するということは考えにくいです」

メディア露出を一番に考えた偶然のバッティング

石坂友宏と同社社長マーク・シェルドン-アレン(※提供:テーラーメイド)

コロナ禍の影響で、やむを得ずテーラーメイドはZOOM、キャロウェイはYouTubeで、それぞれ発表会を行った。オンラインの形式を取ってはいるが、配信場所はどちらも事前に押さえた会場からだった。都内イベント会場を予約するとなると、遅くとも6カ月以上前と推測できる。そのように考えると、嶋崎氏の「偶然説」は頷ける。

同社契約プロの田中瑞希、河本結、西村優菜が参加(提供:キャロウェイ)

「メーカー側が考える発表会の意義は、メディアの露出です。最大の露出――たとえば新聞の1面を飾ろうと考える人がいたとして、わざわざ競合他社の商品と日程を重ねる利点はありませんよね。あくまでも推測ですが、両社とも米国・欧州を含めた海外での発表と日本での発表と、自社内でのスケジュールの兼ね合いが影響していると思います。他社の動向云々よりも、自社の都合が大きかったでしょう」

コンテンツ化で変わる発表会スタイル

アクリル板を挟み、フェースシールドで万全のコロナ対策(※提供:テーラーメイド)

日程のバッティングは偶然だったと主張する嶋崎氏だが、「ただ、同日でもデメリットにならない要因はあったのかもしれません」として、時代背景とともに発表会のスタイル自体が大きく変わりつつあることにも言及した。

「両社とも当初は、できるだけ多くの来場者に商品を手に取ってもらうことが、大きな目的のひとつだったと思います。ですが、距離や接触への気遣いが必須の条件となったことで、発表会の模様をひとつの動画コンテンツとして、撮影をメインとしたオンライン実施に切り替えました。両社とも公式YouTubeで公開していますが、この見せ方自体に大きな意味があったと思われます」

画面上でも分かるほどの大型イベントホールにて実施(※提供:キャロウェイ)

「結果論かもしれませんが、ユーザーから見れば、発表会の開催時間に都合を合わせる必要がなく、ライブで見なくても、後日再生して見ることができる。メーカー側は、新商品の性能をメディアを通してではなく、ひとつのコンテンツとして多くのユーザーに届けることができる。であれば、競合他社との同日発表のデメリットを気にせず、予定した日程通り行うことができます。そういう意味では、このバッティングが偶然ではなく、新たな発表会スタイルの可能性を示唆しているように感じます」

革新的な性能で、クラブの常識を覆してきた両社のこと――。新製品発表会の在り方でも、従来の形式に固執しない新たなスタイルを模索していくのか? 引き続き注目したい。