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キャロウェイとテーラーメイドの新製品 異例の2年連続同日発表へ

2021/12/28 17:14
2021年も同日に新製品発表会を開催したテーラーメイドとキャロウェイ ※提供:テーラーメイド/キャロウェイ

世界の2大ゴルフクラブメーカー「キャロウェイ」と「テーラーメイド」が、どちらにとっても旗艦商品となる2022年モデルの日本発表を、2年連続で同日開催することとなり、話題になっている。自動車や家電製品などライバル社がひしめき合う業界は少なくないが、同日発表になるケースはほとんどない。“狙い”も憶測させる2年連続の「偶然」(両社の広報担当)だ。

またもや偶然?

両社が新製品発表を同日に行うのは、初めてではない。2021年1月にキャロウェイが「エピック」の新シリーズ、テーラーメイドが「SIM2」シリーズをお披露目した際も、2時間の差はあったものの同じ日にメディア向けの発表会を開催した。

当時、両社の担当者は「偶然」を強調した。しかし、2年連続ともなると「狙っているのではないか」という見方もしたくなる。

今回、報道各社への案内は12月に出されており、テーラーメイドの方がキャロウェイよりも7日早かった。ただ、発表会場や契約プロの日程をあらかじめ押さえておく必要性などを考えると、ライバル社の発表日が分かったあとで慌てて「ぶつける」ことは考えにくい。

発表会は、テーラーメイドがキャロウェイよりも約3時間早く開始。両社の会場間は地下鉄を使えば乗り換えなしで移動でき、記者は30分もあれば、“はしご取材”ができる。

「3時間の差は絶妙」

あるIT企業の広報責任者は「普通は業界でつながっている同士でやり取りして日時が重ならないようにするが、似たような発表を先に出されると嫌なのでぶつけることはある」と実情を打ち明ける。

その上で、今回のケースについて「記者の移動を考えると、3時間の差は絶妙。狙いは分からないが、お互いに認識した上で準備をしたと考えられる」と強調した。

民間企業を長く取材する経済部記者は「企業は基本的にライバル同士で発表日がかぶるのを嫌がる。自社のニュースの扱いが小さくなるし、下手をすれば記者に発表に来てもらえなくなるからだ」と指摘する。

「通常は水面下で親交のある広報担当者同士が調整したり、記者を通じてライバルの日程を探ったりしてバッティングを避けている」と明かす。

一方で、発表日を“ぶつける”場合としては「規模の小さい企業が大きい企業の発表に合わせ、『まとめ記事』として取り上げてもらうことで自社単体の記事よりも大きなニュースになることを狙う」ことがあるという。

「同日のほうがインパクト大」

流通業界に詳しいジャーナリストによると、近年はコンビニエンスストア2位のファミリーマートが四半期ごとの決算を、業界トップのセブン&アイ・ホールディングスと同日に発表している。「ファミリーマートは非上場のため、単体だと注目されない可能性があるからだろう」と推測した。

小林至・桜美林大教授(スポーツ経営学)は「抜け駆けをした方がニュース性は高くなるので、どちらにとっても本来は良いはず」とする一方で、同日発表の背景にゴルフ用品市場の縮小があると分析する。

「例えば、NFLやNBAは開幕日をずらしている。露出を分散させれば、注目の総数はずっと上がるからだ。ただ、それにはある程度のニュース性が担保されている状況が必要」と解説。「ゴルフ用品の市場が縮小している中で、同時発表の方がインパクトがある、そろって発表することそのものにニュース性が生まれるかもしれない、ということをマーケティングの観点から考えた可能性があるのではないか」と推察した。