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石川遼が採用した「5本ウェッジ」は新たなトレンドになる?

2022/04/12 18:00
5本体制がトレンドになる日は近い!?(Andy Dean/PIXTA)

国内男子ツアー「東建ホームメイトカップ」開幕を前に、石川遼のセッティングに注目が集まった。9Iを抜いて、43度の特注モデルを入れた「ウェッジ5本」体制。すでにPGAツアーでは、3本から4本が主流となっているなかで、5本というアイデアは新たなトレンドとなるのか!? ウェッジ使用プロが増加中の新興メーカー「ジューシー」代表のクラブ設計家・松吉宗之氏に、今後のセッティング動向を聞いた。

4→5本 ウェッジ増の流れは必然的

特段に驚く試みではありません」と、石川のセッティングについて率直な感想を述べる松吉氏。「実は単品ウェッジでは、20年ほど前から、ロフト角42度相当のモデルを何度か企画・販売してきました。実感としては、ようやく日の目を見た感覚です(笑)」

松吉氏が独立前に21年間勤めた「フォーティーン」では、5本体制はすでに構想済みであったようだ。「遅かれ早かれ、必ず5本体制の時代は来るでしょう」――特に力説するわけでもなく、クラブの進化に伴う自然な流れとして受け止めている。

ウェッジが5本必要になるふたつの理由

理由はふたつ。「まずひとつは、飛び系と呼ばれるアイアンが増え、ストロングロフト化が加速したことで、フルショットの下に入れる番手が必要になるから。不足したロフト角を補うという意味で、9I相当のロフト角のウェッジが必要になるわけです」

石川が抜いた9Iのロフト角は44度の設定なので例外となるが、近年は確かに30度台のモデルが増えている。ツアーレベルでも、松吉氏と同じ感覚のプロは少なくないだろう。

石川遼 開幕2日前のクラブセッティング

「そしてもうひとつは、アイアンとウェッジの根本的な作りの違いが要因」と、意外な理由を挙げた。

「ウェッジは元々、アイアンよりも重心位置が高く、スピン量が多いために飛距離が出にくい設計のクラブ。ヘッドスピードの速いゴルファーが振っても、自然と距離が抑えられる構造です。アイアンと同じように振ったとしても、ヘッド形状や重心性能により、球が勝手に飛びすぎない。抑える意識が必要なアイアンよりもシンプルで、縦の距離を合わせやすいといえます」

やや低めの打ち出しから高スピンによって球が高く上がり、真上からピンをデッドに狙えるウェッジ。飛ばないことよりも、飛びすぎることに注意を払うツアープロにとって、9Iよりも9Iと同じロフト角のウェッジのほうが、球の高さやスピン量を落とすことなく飛距離だけを抑えられるため、リスクは少ないようだ。

選択肢が増えることでデメリットも

では、アマチュアも5本体制のセッティングを参考にするべきか。「もちろんメリットもあればデメリットもあります」と、松吉氏は続ける。

「当たり前のことですが、ウェッジの本数を増やせば、プレー中に考えることが増えます。例えば、15~30ydの繊細な距離感を要する短いアプローチ。どのウェッジで打てば良いのか、いろいろと考えすぎてしまいます。コースマネジメントに長けている経験豊富な人であれば対応できますが、初中級者にとっては迷ってしまう材料を増やすだけ。また少ない本数なら、重点的に練習する番手を限定でき、アプローチ時の得意クラブをつくりやすい。分散してしまうほど、良い面も悪い面も考えられるわけです」

また、「前提として、スイングに悪い影響を及ぼしかねない」と、危惧する別のデメリットも挙げる。

「飛距離が出にくいウェッジの特性を理解しておく必要があります。ウェッジはアイアンほどフルスイングに向いていないクラブ。アイアンとの飛距離の差を埋めようと、強引に目いっぱい振り切ることでスイングを壊す危険性があります」

ウェッジの本数変化が今後、結果にどう影響するのか

それでも近い将来、ウェッジ4~5本体制が一般化するとにらむ松吉氏。「予想はあくまでも市場全体を見たときのマクロ的な観点です。アマチュアゴルファーの皆さんには、『ウェッジは何本が正解』と決めつけることよりも、コースマネジメントに応じて必要な本数を決めることが大切です。4度刻みのロフト角に縛られて頭を悩ますのではなく、明日のラウンドで手助けしてくれるクラブを素直に選ぶべきでしょう」と提言した。

トレンドよりも、適応力。あなたは次回のラウンド、何本体制で臨む?