軽やレンタカーが増えたって本当!? ゴルフ場に停まっているクルマの車種を調査
若い世代のゴルファーの増加やコロナ禍による生活スタイルの変化などで、ゴルファーの乗るクルマの車種が大きく変わったと聞く。確かに最近のゴルフ場では、昔は見られなかった軽自動車やレンタカーが目につくようになった。需要の変移によってゴルファーが好む車種(ボディタイプ)は、どのように変わったのか――。気になる編集部は、実際にコースへ出向き、駐車場に停まっているクルマの車種を調査した。
目次
- ■メンバーコースでは1位セダン、2位SUV、3位ミニバン
- ■パブリックではSUVとコンパクトカーがセダン抜き!
- ■河川敷はメンバーコースと似た結果に “ならでは”な理由も
- 人気車種の変動30年史 “セダン一択”からSUV、ミニバンへ
- “マイルドヤンキー”思考がもたらす地方ナンバーへ抱く意識の変化
調査方法は、9~10月の晴れた日曜日のゴルフ場に出向き、メンバー、パブリック、河川敷コースの3カ所で、停車しているボディタイプを計測するというもの。合わせてシェアorレンタカーと目されるステッカーが貼ってあるクルマ、もしくは「わ」「れ」ナンバーの車数をチェックした。
■メンバーコースでは1位セダン、2位SUV、3位ミニバン
埼玉県の名門コースが集う飯能地区に位置し、都心からのアクセスも良いメンバーコース・飯能くすの樹カントリー倶楽部では、セダンが31.7%(139台中44台)で1位、続いてSUV・クロカンが24.4%で2位(34台)、ミニバン・ワンボックスが20.1%で3位(28台)という結果に。注目の軽は4.3%(6台)と、それほど多いとはいえない数にとどまった。
飯能くすの樹カントリー倶楽部での榎本健支配人は、「元々20~30年前のゴルフ場は、他の車種が見当たらないほどセダンが当たり前でした。本日(調査日)の客層はメンバーが7.5、ビジター2.5という割合で、まだまだ長年ゴルフを楽しんでいるメンバーさんが多く、年齢は60~70歳代が大半を占めています。セダンが多かったのは、当時から長く愛用している車種で馴染みのあるモデルを選ばれてきた方が多いからだと推測します」と、調査結果を分析した。
ただ、近年の変化も確実に感じているようで、「2000年以降はミニバン、最近では軽自動車、SUVも目にする機会が増えました。平日では若いお客様も多く、曜日を変えればまた異なる結果になるかもしれません」と、車種の多様化についても言及した。
■パブリックではSUVとコンパクトカーがセダン抜き!
パブリックコースの代表は、緩やかな丘陵にレイアウトされ、初級者からの人気が高い丸の内倶楽部(千葉県)。メンバーコースでは1位だったセダンを抜き、SUV・クロカンが27.3%(95台中26台)で1位、コンパクト・ハッチバックが23.2%(22台)で2位という順位に。飯能くすの樹カントリー倶楽部ではあまり見当たらなったレンタカーが10.5%と、かなり多い結果となった。
この数字には当コースの内海直樹支配人も少し驚いたようで、「コロナ禍から若者の数が増え、それに応じてレンタカーの数も増えてきました。本日は特にそれが顕著になったといえます。実は土日より平日のほうが(レンタカーが)多く、車種も軽やコンパクトカーの数も多く目にします。都内にお住まいの若年層ゴルファーで、普段は車を所有していないけれどゴルフ場に行くために借りるケースが増え、また借りる車も大型より小回りの利く車種を選ぶ人が増えたのだと思います」と、来場者はほぼ都内からというコースの特徴から分析した。
■河川敷はメンバーコースと似た結果に “ならでは”な理由も
最後は河川敷コースを代表して、数少ない都内に位置するリバーサイドコース・赤羽ゴルフ倶楽部で調査。メンバー6、ビジター4割と、飯能くすの樹カントリー倶楽部とほぼ同じ客層比率が影響したのか、1位セダン31.4%(102台中32台)、2位SUV・クロカン24.5%(25台)、3位と4位のミニバンとコンパクトカーの順位は違ったものの、ほとんど全体的に似た順位となった。またレンタカーも0台と見かけられなかった。
松澤淳二支配人によると、「平日はもう少し軽やコンパクトカーも多く、数字は変わると思います。ただ、日曜日はメンバーさんが多いこともあり、このような割合が多いです。コロナ禍以降で若年層のゴルファーは確実に増えたと感じますが、近隣から来られる方はクルマを使わず、電車やバスで来られるケースも多く、急激に車種の変化が見受けられるというまでには至っていません」と、河川敷ならではの理由を教えてくれた。
人気車種の変動30年史 “セダン一択”からSUV、ミニバンへ
市場に詳しい自動車生活ジャーナリスト・All About「車」ガイドの加藤久美子氏は、「今回の結果を見ると、年齢層の影響が大きいように感じます」と見解を述べる。(以下、加藤氏コメント)
「メンバーと河川敷コースでは、パブリックコースより年齢層が高く、60~70代がメインと聞きました。この年代は、約30年前のバブル期からゴルフを始められ、クルマも1人1台所有が当たり前の時代でした。
当時、1989年に自動車税が改定されるまでは、排気量ではなくナンバーで税額が区分されていたため、『3』ナンバー(ナンバープレートの地域名の右の数字が300番台のクルマ)は現行以上に高額な租税が課され、あまり出回っていませんでした。改定後に日産『シーマ』やトヨタ『セルシオ』の初代モデルが発売され、この頃入り始めたメルセデス・ベンツ『190』、BMW『3』シリーズもそろったことで、“高級セダン”ブームが到来します。
その後、バブル崩壊とともに、それまでバリバリ働いていた世代が、家族との時間を増やす傾向に走ったことで、“第1次アウトレジャー”ブームに移り、三菱『パジェロ』、トヨタ『ハイラックスサーフ』、日産『テラノ』といった四駆車が流行します。後にその流れをくんだのがスポーツ用多目的車、SUVです。同時期にステーションワゴンも人気を集めましたが、より幅広で高級路線も加味したミニバンが支持されていきます。
大まかにタウンユースの人気車種の移り変わりを説明しましたが、ゴルファーが所有するモデルも、ほぼ同じ流れだと思います。以前の“セダン一択”から需要が多種多様に分かれ、SUV、ミニバンといった車種に移行していった。加えて、現在は宅配便を活用する人が増え、トランクルームの広さをそれほど気にしなくなったことで、ゴルファーのニーズが軽やコンパクトカーまで及んだといえます。
“マイルドヤンキー”思考がもたらす地方ナンバーへ抱く意識の変化
シェアorレンタカーの増加については、コロナ禍の影響で1人の空間を確保できる優位性をそこに感じる人が増えたからではないでしょうか。地方では、クルマ通勤を推奨する企業が増え、駐車場を会社が負担するという事例も耳にしました。昨今、ささやかれ続けてきた若者の“クルマ離れ”の波が収まったとは言えませんが、少し違った角度でクルマの在り方が見直されたのではないでしょうか。
また、若年層の間によるマインドの変化も大きいといえます。以前はデートに行くのに、『わ』『れ』や地方ナンバーは恥ずかしい… という意見がありましたが、最近ではそういった声は全く聞かれなくなりました。むしろ地方ナンバーについては、地元愛を公言する“マイルドヤンキー”的な価値観が肯定的に受け取られる風潮の中、都心への憧れに固執する思考より前向きな象徴として、好意的に見られるようになりました」
車種の変化も、シェアorレンタカーの増加も、どちらもゴルファーの価値観の移行が起因していると説く加藤氏。軽やコンパクトカーだけが単に増えたわけではなく、ゴルファーの趣味嗜好が多種類に増え、各々が持つ好みが多岐に分かれただけ。それが車種に少しだけ反映したと見るべきなのかもしれない。(編集部・内田佳)
取材協力/パシフィックゴルフマネージメント株式会社(PGM)、株式会社オールアバウト(All About)
■ 加藤久美子(かとう・くみこ) プロフィール
All About「車」ガイド。山口県下関市生まれ。大学時代に神奈川トヨタのディーラーで納車・引き取りのアルバイトを経験し、卒業後「日刊自動車新聞社」へ入社。 1995年より独立し、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務めたのち、コメンテーターとしてテレビやラジオの情報番組に多数出演。ブログ「クルマ好き“検定親子”は道なき道を走り続けます!」