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足のスペシャリスト・元サッカー選手が語る「ゴルフシューズ論」

2024/03/19 12:15

力強いシュートを打ち、ボールを自在に止め、芝の上を縦横無尽に走り回る。まさに足の感覚が研ぎ澄まされたサッカー選手が、最新のゴルフシューズを履いたらどう感じるのか?アディダスのシューズイベントに参加していた、元サッカー選手の田中隼磨氏とハーフナー・マイク氏に、その“足裏感覚”を聞いてみた。元サッカー選手が語るゴルフスパイク論。

1試合で20足のシューズを持って行く/田中隼磨氏

ゴルフ場に来ると、つい芝の状態を見てしまうというのは、ゴルフ歴20年でベストスコア81の田中隼磨氏(元日本代表、横浜F・マリノスなどでプレー)だ。

「やっぱり本能なのか、ゴルフ場にくると芝をじーっと観察しちゃいますね。サッカーのフィールドとつい比較してみたり。芝の質や、芝の長さも気になる。ちょっとぬかるんでるなとか、柔らかいなとか、足裏でけっこうすぐに感じます。球がそういうところに行くことも多いのでね(笑)」

アディダスのサッカースパイク(プレデター)を手に、独自のスパイク論を語る

田中氏は現役時代から「ピッチの芝に敏感なほう」だった。「例えば鹿島スタジアムは芝が長く、日産スタジアムなどは短い。基本的に長い芝には長いポイント(スパイク裏の突起)、短い芝には短いポイントを合わせて、滑らないようにしていました」

芝の状態に合わせて履き替える上に、前後半でも取り替えるため、1試合で20足近くのシューズを持って行くこともざらだった。「ポイントを整えた上で、その日の芝に合わせて自分の切り返しの大きさを変えていました。例えば芝が硬くて刺さりにくい時は、少し細かくターン。刺さりやすい時は、大胆に切り返していた」。足で芝を感じるその繊細な感覚は、他のどの競技の選手よりも鋭敏だったに違いない。

パターはオデッセイのセンターシャフト

そんな田中氏だからこそ、ゴルフシューズの性能、特にソールについてはこだわりが深い。「やっぱりこのグリップ、サッカーでいうところのポイントが気になりますよね。ゴルフシューズを選ぶときは、傾斜地でのグリップ力を気にします。例えばつま先下がりで、グリップが効いて滑らない場合はしっかり打っていけるんですけど、滑りそうならちょっと気を付けて打つ。グリップがしっかりしていれば滑らない安心感があるんで、ストレスがこっち(足)には行かないですよね」

アディダスの新しいTOUR360を履いてプレー

「新しいシューズはクッション性が高いので、足のストレスが少ない。僕はヒザのケガを持っているんですが、ヒザへの負担も軽減される。サッカーは90分間のスポーツなのに対し、ゴルフは長時間なので、履く靴にストレスを感じずにやりたい。その点、このシューズは芝の上を長く歩いてもヒザにやさしくていいですね」と、早くも足に馴染んでいる様子だ。

「この出っ張りの、2段構えがいいんですよね(ジェットブースト機能)。サッカーだとこの間がないじゃないですか。ソールと出っ張りの両方でグリップしてる感覚。特にラフに入った時にそれが生きる。より噛んでくれて、より踏ん張れる。足の指も使えてしっかり打てる意識が強くなります」。サッカー選手の足裏感覚は、聞いていて非常に説得力がある。

素足で蹴る感覚が好き/ハーフナー・マイク氏

サッカーのスパイクを片手に現役時代を振り返る

サッカーのスパイクでもフィット感を重視していたというハーフナー・マイク氏(元日本代表、ヴァンフォーレ甲府などでプレー)は、素足に近い感覚がベストと話す。

「フォワードというポジション柄、思いっきり蹴ることが多かったんで、ほんと自分の素足で蹴るイメージが一番合う。ですから、素足感覚になれる足にフィットしやすいモデルを選んでました。普段靴ではあまり靴下も履かないんですよ。でも、冷え性なんですけどね(笑)」

アディダスの人気モデルである「プレデター」を歴代履いてきたという

聞けば、シュートも“骨で打つ”イメージだったというから驚く。「右足の親指のつけ根の骨を使って打ったりしていました。ここって骨が硬いじゃないですか。骨の真ん中で打ったら結構強い球が行くんですよ。同じインステップキックでもわざとそこで打つと違う」

まさに一流ならではの繊細な感覚。シューズが足と一体になっているからこそなせる業であろう。「やっぱり靴のフィット感があるからこそ、そこの骨も生きるというか。足とシューズと地面が一体化する感覚は常に持っていました」

フォワードならではの話がもう一つ。「ポジション的に結構、体を張らなきゃいけないんです。ディフェンダーを背中に背負いながらボールをキープする。そういう時に踏ん張りが大事で、突き詰めるとやっぱりグリップ力になってきます」とマイク氏。

元サッカー選手の石川直宏氏(写真左)らと共にラウンド

初めての海外移籍の地・オランダでは、そのグリップで失敗をしてしまった。「日本はすごいキレイな短い芝なので、固定式のポイントでちょうど良かったんです。でもオランダはぬかるんでいるピッチが多くて、最初に固定式のポイントのスパイクで挑んだら、めっちゃ滑ったんですよ。前半15分ぐらいで5回ぐらい滑った。監督に怒られるかと思って冷や冷やしたのを覚えています(笑)」。その次の試合は取り替え式のスパイク(ぬかるんだピッチで滑りにくい)で臨んだという。

そんな経験を持つマイク氏だからこそ、新しいゴルフシューズのグリップ力にはだいぶ驚かされた。「今日のゴルフでは斜面で打つことが多かったんですが、その中でもしっかり踏ん張って打てました。ここは滑りそうだなってとこでもグリップがしっかりしていて、安心して打てる。足裏についているゴルフシューズのポイントは、ひとつひとつ小さいですけど、しっかり刺さってくれますよね」と、最新のテクノロジーに感心しきり。

人生初のバーディを獲り、大喜び

マイク氏は「ゴルフの経験はほとんどない」そうで、前回のゴルフはスニーカーのスタンスミスを履いてのプレーだったという。「サッカーのスパイクは、履き始めにかかとが痛くなり、革が伸びて徐々に足に馴染むサイクル。ゴルフシューズは今回初めてでしたが、一日中履いていてもノーストレス。履いた感じがしないというか、永遠に歩き続けられそうな感覚でした」。素足感覚好きにはたまらない一足というわけだ。

この日は人生初のバーディをとり、まさにゴルフにハマりそうな予感たっぷり。「めっちゃ気持ちよかったですね。ゴールを決めた時のような感覚。でもそんな騒いじゃダメなんですよね。飛び跳ねてグリーンを傷つけちゃダメって小塚君(フィギュアスケートの小塚崇彦選手)に朝言われていたんで。特にこのシューズのポイントはちゃんとしているから、余計に気をつけないと」と言いながらソールをなでなで。

ゴルフシューズの快適さに驚いていた

マイク氏は、新しい靴を買ってもらった子どものように、無邪気に喜んでいた。この日ベストスコアを更新したというから、きっとすぐに上手くなっていくんだろうな。(編集部・服部謙二郎)