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「バックライン派」は絶滅危惧種に認定? 平田憲聖も杉浦悠太も「マル」グリップへ

2024/10/15 13:00
杉浦悠太はことしからバックラインを有りから無しへ

◇国内メジャー◇日本オープンゴルフ選手権競技◇東京ゴルフ倶楽部(埼玉)◇7251yd(パー70)

バックラインの入ったグリップを使っているゴルファーは、世の中でどれぐらいいるだろうか。アマチュアはバックライン入りが未だ多いとも聞くが、驚くことにプロの世界ではバックラインつきグリップ使用者が激減していた。男子ツアーで「バックライン有り&無し」の割合をプロやツアー関係者からヒアリングしたところ、だいたいではあるが「有り2:無し8」の比率だった。かつては「有り8:無し2」の印象だっただけに、まさに使用率は逆転している。

取材を進めると、「バックライン有りのクラブを握ったことないです」という若手プロもいたほど。かつて尾崎将司などはバックラインが強調されたグリップを使っていたし、ツアーレップ(用具担当)も下巻きテープでバックラインを強調していたものだった。またプロはつかまりを抑えるために、バックラインをズラしてグリップをスライスに入れていた(左手のグリップが浅くなるようにバックラインを右方向にズラして入れる)のも、往年のゴルフファンは覚えているかもしれない。そんな時代も終焉してしまったのか。

「やっぱりカチャカチャの影響は大きいですよね」と話すのは某メーカーのツアーレップ。ネックにいわゆる弾道調整機能のついたヘッドが主流になり、シャフトを簡単に替えられるようになったことがバックライン減の大きな要因だという。「バックラインがあると、シャフトを替える際に握りたい位置とラインの位置がズレて、グリップに違和感が出る可能性が高いですからね。それだったら『面倒なので“マル”(バックライン無し)にしよう』というプロは多いです」(同レップ)

タイガー・ウッズのグリップ。グリップもシャフトもロゴを裏に入れるのがおなじみ

実際に取材した中では、弾道調整機能がついたウッド系だけマルで、アイアンをバックライン有りにしているプロもいた。マルが増えた理由としては、タイガー・ウッズの影響もあるという。「タイガーがグリップを裏差し(ロゴを逆向き)にして構えていましたよね。あれもマルだからできること。バックラインがあるとラインが上にきて邪魔ですからね。タイガーのグリップを真似する選手が増えて、自ずとマル派も増えました」と同レップ。カチャカチャの浸透、ウッズの影響…ここ20年をかけて徐々にマル派が増えてきたわけだ。

杉浦はバックライン無しにして成績が上がったという

実際、ことしバックラインを「有り→無し」に変更したプロがいる。平田憲聖杉浦悠太だ。賞金ランキング1位と6位の選手がともに今季グリップを替えていたのには驚いた。5月の「関西オープン」から替えたという平田の理由は、やはり“カチャカチャ”によるもの。さらに春先から替えていた杉浦は、「マルにして成績が上がりました」と話す。「今までは左手の人差し指でなんとなくバックラインを感じていましたが、実際はラインを使うわけでもなくほぼ無意識でした。ただ、グリップ交換時に『アレ?』って違和感を覚えるケースが全くなくなったのはうれしい。結局、気持ちよく構えられるようになったことでスイングの感触もいいです」

少数派になった「有り派」の意見とは

新しいグリップの突起部分をのぞき込む岩崎亜久竜

続けて少数となった「有り派」の意見も聞いてみたい。グリップメーカー最大手のゴルフプライドは、グリップ背部に盛り上がりのありバックラインを際立たせた「ALIGN(アライン)」というモデルを出しており、岩崎亜久竜小木曽喬佐藤大平らトップ選手が好んで使用している。

そのうちの一人である小木曽は「昔からバックライン入りを好んで使っていました。右手の人差し指を突起した部分に当てたいんです」と話し、右手人差し指をグリップに引っかけて説明してくれた。「よくトリガーって言いますけど、僕も右手を引っかけた状態で構えてフェースを真っすぐにしています。ですからもう(バックラインが)ないとスクエアが分からなくなる」という。

右手をバックラインに引っかけるように握る

小木曽のドライバーは弾道調整機能のついたヘッドだが、バックライン有りだと面倒ではないのか。「確かに手間はかかりますけど、それよりもスクエアをちゃんと取るほうが上回りますよ。フェースを開くことの多い60度だけバックラインを入れていません」。有り派の中でも、小木曽のようにロブウェッジだけマルにするケースは多い。「フェースを開いて握ったときにバックラインが邪魔になるんです。特にバンカーとかで中途半端にフェースを開くときが気になる」そうだ。

ツアーではグリップ裏の盛り上がりがより大きくなった「ALIGN MAX」の展開も始まり、小木曽は「やばいすね。僕はこっちに替えます。強調されていたほうがいいんで」とグリップ交換を頼んでいた。

小木曽は構える際に右手人差し指を伸ばしてスクエアを確認していた

バックライン「有り派」と「無し派」、それぞれの言い分はいかがだったか。我々アマチュアはプロのように頻繁にグリップ交換はできないが、その細部へのこだわりはぜひ参考にしてほしい。(埼玉県狭山市/服部謙二郎)

バックラインをさらに強調した新しいゴルフプライドのグリップ「ALIGN MAX」