幡地隆寛のパターフィッティング潜入取材 「センターマレットのお手本は谷原先生」
ツアープロのパター選びは実に面白い。ヘッド形状、ネック形状、打感、インサート、重さ、長さ、バランス、グリップ、サイトラインの位置…。判断基準を数え上げればキリがない。幡地隆寛とツアーレップのやり取りも、プロの細かいこだわりが満載だった。新シーズンに向けたパター選びの裏側を取材したので、じっくり紹介したい。
目次
- “センターマレット”長期政権のきっかけは谷原先生
- ストローク矯正で長尺を試したことも
- いつかはブレードに戻したい…
- リディア・コーと同じ削り出し「P5」投入へ
“センターマレット”長期政権のきっかけは谷原先生
幡地隆寛のパターと言えば、真っ先に思い出すのは、羽のような形が特徴の「PHANTOM(ファントム)11」ブラックバージョンだろう。年間3勝を挙げた2024年シーズンを支えたストレートネック(センターシャフト)のマレットパターだ。「23年の夏ぐらいにインスタグラムで写真が上がっているのを見て、『めちゃくちゃ良さそう』と思い、現物を見ていないのに澤さんにリクエストしていました」。幡地が言う「澤さん」とは澤岩男氏。2019年にスコッティキャメロンパターを使い始めて以来、ずっとパターを組んでくれているツアーレップだ。
「ファントム11」は長期政権となって約1年半近くバッグに収まっていた。「実際は“ザ・センター”というより若干ヒール寄りに挿さっていて、完璧なフェースバランスではないんです」と澤氏が言うヘッドは確かに、シャフトがフェース中央よりややヒール側に“ズレ”ている。幡地は「いい感じにローテーションを使えるので、自分にはハマりました。ヘッドも慣性モーメントが高く、初めて打った時点で『絶対ショートパットは外さない』という安定感がありました」と振りかえる。
その“センター×マレット”を初めて使った2023年の「バンテリン東海クラシック」で“お手本の選手”が目の前にいたことも長期政権のきっかけになった。「予選ラウンドが谷原(秀人)さんと同組で、“ミスターセンターマレット”はどう打つのだろうと観察したんです。試合後に本人から話を聞いたり、練習グリーンでストロークの動きを見たりして、当時、自分の中で“谷原ブーム”が来ていました(笑)」
谷原のストロークには衝撃を受けた。「自分は元々、タイガー(・ウッズ)の影響で『インパクトで終わり』という打ち方をしていたんです。でも実際に谷原さんの動きを見ると、フォローでヘッドがパーンって出ていたんです。改めてタイガーのストローク動画を見返すと、ヘッドがしっかり出てきちんとリリースしているのが分かったんです。そこから自分も打ち方を変えました」と、フォローでヘッドを出すようにした。
新ヘッドと新ストロークがマッチし、グリーン上のパフォーマンスが向上。翌24年の好成績につながったのは言うまでもない。
ストローク矯正で長尺を試したことも
幡地とファントムの付き合いは長い。「初代ファントムが出た時に試しに1回打ったんですよ。“ナニこれ、めちゃくちゃいいパターじゃん”と」。ブレードタイプしか打ってこなかったこともあり、性能の良さに驚いた。選んだのは初代「ファントム11」の黒ヘッド、黄色いドットがヘッド上部についていた。「ブレードにはこだわりがありつつも“こういう良いパターが出たんだ”というのは頭の中に留めていました」
ストロークの矯正でファントム×長尺パターを試したこともあったとか。「確かJ・チョイさんがやっていたタイミングで、面白いなと思って澤さんに作ってもらったんです。それを使った後、通常の長さのパターに戻した時にストロークが明らかに良くなるんですよ」。その長尺パターは今も隠し持っていて、練習で時折使う。「ファントム11のような大きいヘッドは長尺に合う。体の動きを良くするために、良いパターがあるんだなという印象でした」
いつかはブレードに戻したい…
すっかりマレットユーザーになったイメージが強い幡地だが、常にブレードに戻す機会をうかがっている。「キャメロンを使う時点でブレード以外は絶対使わないと思っていました。昔はニューポート2を使っていたので、いつかはそこに戻りたい」。昨年もシーズン中に一旦「ファントム11」を手放し、「パッティングのフィーリングを確かめるため」にブレード型へ戻すことを試みた。
「中日クラウンズでニューポート2を一度引っ張り出してきて使いましたが、その時はフィーリングが出ませんでした。その後、日本プロでも予選落ちした日の正午から夕方5時くらいまでそのパターで練習をしましたが、フィーリングは戻らなかった」とブレードは再び封印した。
その際に出合ったのが「GOLO 6.2」というマレット型だった。「.2」が付くモデルはキャメロンがプラミングネックと呼ぶ、いわゆるクランクネック。「マレットでもクランクネックならブレードのようにフィーリング寄りで打てる。(ブレードに戻す前に)しばらくそれを挟もう」と決めた。
その後、夏にはストレートシャフト(センターシャフト)に変更。「フェースバランスにはなりきってない、ややトウが下がるトウハングタイプです。若干ローテーションを入れてつかまえられる。そうした味付けが欲しかった」。“ブレード味”のするパターでシーズン終盤を戦った。
リディア・コーと同じ削り出し「P5」投入へ
今回のオフでは、GOLOに似た形状でツアー唯一のマレット型削り出しヘッド「P5」をテストした。リディア・コー(ニュージーランド)も使うモデルだ。
エースだったファントム11と同様に、ストレートシャフトがややヒール側に挿さっている。「自分のストロークとの兼ね合いで今はフィーリングを重視したいから、少し操作できるヘッドを合わせました」と、一年かけてブレード寄りのイメージに少し戻すことができたわけだ。
シャフトのすぐ横には白いドットが入り、よく見るとヘッド上部にうっすら黒いサイトラインが入っている。「(サイトラインが)はっきり見えないように黒い線にしました。アライメントでは大事ですが、線が目立つとストロークで気になるので」と細かいこだわりを見せた。
今後はグリップを変えることも視野に入れている。「アライメントが取りやすいグリップに変えるという話をしています。シーズン中はアドレスで左を向きやすく、ストロークで逃がしてしまうクセがありました。グリップの太さを調整してアライメントで左に向きづらくする狙いです」と、新シーズンに向けて調整に余念は無い。
◇◇◇◇
14本の中でプロがこれほど細かくこだわるクラブは、他にないだろう。グリーン上のフィーリングとオートマチックのはざまで“最適な1本”を探す旅。プロの使っているパターを見ると、彼らが今どんなことに取り組んでいるのかが透けて見えるから面白い。(取材・構成/服部謙二郎)