「2024溝規制問題」あなたのクラブは大丈夫? 中古ウェッジ市場への影響は
2024年から全ゴルファーに適応される溝規制をご存知だろうか? ロフト角25度以上のクラブに適応される規制で、ラフからでもスピンがかかるクラブを制限するための規制だ。これにより、今まで使えていたアイアンやウェッジが違反クラブとなってしまう場合がある。ゴルフクラブとして使えないわけではないが、ルール上は使用できない。今回はギアマニアを自負する筆者が、間近に迫った2024年の溝規制について説明する。
2010年に導入された溝規制の猶予期間が2023年12月31日に終わる
2010年からドライバーとパターを除くロフト角25度以上のクラブに対して、新しい溝規制のルールが施行されている。2010年から主要プロツアー、2014年からエリートアマチュア競技、2024年からは一般アマチュアも溝規制に対応していないクラブはルール違反となってしまう。そのため、2010年より前に発売されたアイアンやウェッジのほとんどが使えなくなる可能性があるため、心当たりのある人は2023年中に確認して欲しい。
規制に対応しているかどうかは、ゴルフルールを統括するR&Aのウェブサイトにクラブのデータベースで確認ができる。自分の使用しているモデル名を検索し、該当クラブのページに記載された「Meets 2010 Groove Specs」という項目に“Yes”と表記されていれば使用可能だ。メーカーによっては、公式ウェブサイトで規制対象モデルのリストを掲載しているため、合わせてチェックすると安心だ。
1980年代から続いていた溝問題
そもそものきっかけとなったのがピン「EYE2 ウェッジ」(1982年)だ。当時は単品ウェッジというジャンルがなく、アイアンセットに含まれるウェッジだった。しかし、「EYE2」は当時の主流のV字溝ではなく角溝を採用しており、ウェッジだけで使う人も多かった。アイアンセットは約200万セットが売れる大ヒットとなったが、ラフからでも明らかに止まるとツアー選手からクレームが来たことが問題の発端だ。
ゴルフルールを司るUSGAとR&Aは「EYE2」を規制すべく、1990年から角溝を禁止にすると発表した。それに対してピンは、USGAとPGAツアーを相手取って独占禁止法で訴え、1990年にUSGA、1993年にPGAツアーに勝訴した。そのため、新しい溝規制に合致してはいないものの、特例としてルール適合モデルとしてツアーで使用することが認められていた。そして、2010年にプロツアーにおいて溝規制が始まったが、永久適応である「EYE2」のウェッジを引っ張り出して使う選手が現れ、PGAツアーで大問題となる。最終的にピンとPGAツアーで話し合いにより、使用特権を放棄することで合意。「EYE2」は使用禁止となった。
「EYE2」は角溝による高いスピン性能だけでなく、ヘッドの重量設計やソール形状と相まってウェッジとしての基本性能が高い。そのため、溝規制導入後に発売された「EYE2 XG」(2011年)や「EYE2 GORGE」(2014年)などのモデルでは、溝形状以外の性能が受け継がれている。古いモデルだが、中古市場ではどちらも7000円前後からが相場だ。
伝説の激スピンウェッジはもう使えない?!
ルール規制が無ければ迷わず勧めるのが、激スピンウェッジのブームを作ったフォーティーン「MT-28 ウェッジ」(2002年)。一本一本彫刻された溝によって、アプローチしただけでボールのカバーが削れてしまうとクレームが来た逸品。
発売から20年以上経過しているため、数は少ないが5000円以下で見つかるはず。ただし中古で見つけても、溝の賞味期限は過ぎているだろう。競技に出ることはなくても、ルール違反のクラブを使うのは気が引けるという人は、溝規制をクリアした各社の激スピンウェッジをチェックしてみて欲しい。2010年の規制前に作られたウェッジを今でも使っている人はごくわずかだと思うが、購入年度があやふやな場合は上記の方法で調べてみてはいかがだろうか。(文・田島基晴)
■ 田島基晴 プロフィール
1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。