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「長尺」が人気って知ってた?「Lマレ」も品薄 令和の中古パター事情

2024/10/04 20:00
市原弘大が長年愛用する長尺パター「ナタリー」。市原は長尺ヘッドをいつも中古で探している

パターの在庫がもう少し欲しい――。中古ショップの店長さんは、日常的にそう思っていると聞いた。ゴルフクラブで最も“賞味期限”が長いのがパター。50年前、いや100年前のものだって、ルールに適合すれば使うことができる。今回はヒット商品の歴史的な背景を検証しつつ「長尺」「ロングネック」「L字マレット」などの中古パター事情を調べてみた。

長尺パターはそもそもモノが少ない

シニアツアーでは長尺パターを使うプロが目立つ。さらに最近では堀琴音原江里菜をはじめ、女子ツアーでも見かけるようになってきた。2016年のルール改正、アンカリング規制により使用者は一時的に減ったが、パターの一部(主にグリップエンド)を体に固定(アンカリング)させずに打つことで再び使い手が増えてきた。

男子ツアーでも長尺ユーザーは増えた。重永亜斗夢(左)は宮里優作の長尺を試す

実のところ日本では長尺パターを製造する企業、商品数が少ない。規制後に販売数が減ったため、並行輸入品が人気だ。中古ショップやオークションサイトなどで探しているプロも多いらしい。中古ショップでも入荷したらすぐに売れてしまう。

筆者は自ら長尺パターを作ろうと画策したが、長尺のシャフトが手に入らない。コネを使って、メーカーにツアーでも使用されるモデルを分けてもらったことがある。シャフトを手作りで伸ばす手もあるが、長尺専用シャフトは通常モデルよりも太く、剛性を高めている。

ロングネックを探してみると…

オデッセイが7月に数量限定で発売した「GIRAFFE-BEAM(ジラフビーム)パター」(2024年)を見て、「ロングネック、懐かしい」と思った方は、20年以上のゴルフ歴があるだろう。

L字型のようなロングネックのパターはかなり昔から存在する。クランクタイプのロングネックのパターは、タイガー・ウッズがかつて使用していたスコッティキャメロン「1996 X-S.L.C.ツアープロトタイプ」が有名だ。3000本が世に出たが、ネックの長さ(5インチ以下が適合)が違反していたため、回収された。その後、ルールに適した長さに変更された。

ツアーで人気の「GIRAFFE-BEAM」はロングネックがウリ

中古市場では不適合、適合モデルのどちらも4万円から10万円で、オークションサイトで見つかった。ロングネックモデルは重心距離を極端に短くできるので、安定したフェースバランスを実現できるのがメリット。フェースを開閉せず、ヘッドを真っすぐ引いて、真っすぐ出したい人に向いている。

デメリットはネックが長い分、重心が高くなること。「GIRAFFE-BEAMパター」はネックを梁構造にすることで軽量化した。数は少ないが3万円前後が相場だ。

L字マレットパターの人気は?

尾崎将司が全盛期に使っていたL字型パターは、ターゲットに対して正しくアドレスできているか少々不安になる形状だったことを思い出す。L字マレットが最初に流行ったのは、ニック・ファルド(イングランド)の活躍によるところが大きい。「TPA18」というL字マレットで「マスターズ」も「全英オープン」も制した。

L字なのにトウ・ヒールに重量を配分され、マレット形状で安心感もあり、構えやすい。TPAは、テーラーメイド、ウイルソン、コブラを渡り歩いたブランド。ファルドはテーラーメイド製を使っていた。その後さらに人気が出た際にはウイルソンに属していたため、テーラーメイド製のTPA18にはプレミアが付いた。

こちらは久常涼の愛用する「ブラック・シリーズix #9」。石川遼のL字に憧れて使い始めた

日本では石川遼が登場してからL字マレットが一気にブレーク。2007年にツアーでアマチュア優勝を果たした際に握っていたのはソリッドコンタクツというメーカーのパターで、原型はTPA18だった。

その後はオデッセイ「ブラック・シリーズix #9」(2009年)を愛用。L字マレットのメリット+ヘッド後方にタングステンウエイトを配置し、やさしいL字マレットとして大ヒットした。すでに1万円を切る価格で見つかるが、状態の良いものがほとんど存在しない。ちなみにL字マレット好きな筆者はオデッセイ「プロタイプ iX #9HT」(2012年)をコレクション。1万円前後が相場だ。

筆者の秘蔵パター「プロタイプ iX #9HT」

同じL字マレットではスコッティキャメロンも人気がある。「スペシャルセレクト デルマー」(2020年)はシンプルなデザインが魅力。相場も下がってきて3万円台で見つかるようになってきた。

長尺パターは練習器具としても使えると、シニアプロが取材で答えてくれたことがある。全身を使ってストロークすると通常の長さのパターを使う際にも恩恵がある。ロングネックモデルはヘッドの動かし方がシンプル。L字マレットは決してやさしくはないが、ショットの延長で転がせる気がする。

どのパターにもメリットとデメリットがあり、“どうせ入らないなら”自分のこだわりのパターを使ったほうが精神的にもよさそうだ。「やさしいパター」の“やさしい”はゴルファーの数だけある。さあ、中古ショップで探してみよう。(文・田島基晴)

市原弘大は携帯で中古パターをよくチェックしている

■ 田島基晴 プロフィール

1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。

スコッティキャメロン
発売日:2020/04/17 参考価格: 60,500円
オデッセイ
42A0141
発売日:2010/02 オープンプライス
オデッセイ
使用プロ増加中のロングネックパターをシリーズ化
発売日:2024/07/26 参考価格: 44,000円