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「WHITE HOT」、「PURE ROLL」「TERYLLIUM」…どの打感が好み?インサートの歴史を中古で巡る

2025/11/28 20:00
名器の数だけ名の知れたインサートがある

パッティングは方向性と距離感が明暗を握る。その距離感に大きな影響を与えるのがパターのフェースだ。今回はフェースに搭載されたインサートと溝の技術の歴史を振り返りながら、好みのパターを中古ショップで見つけよう。

インサートと溝加工の重要性

良いパターを表現する2大常套句は、「打感が柔らかい」と「転がりが良い」だろう。メーカーはそれらを実現するため日々、フェース面のつくりについて試行錯誤する。

樹脂や金属を素材にしたフェースのインサートは、ゴルファーの打感を左右する。モデルによってボールの反発の度合いが変わる。素材が軟らかいと、反発も打音も控えめになりやすい。違う素材を組み合わせることで、反発だけでなく打音をコントロールすることもある。

ピンのTR溝は芯とその周辺で深さが違う

一方、金属を削り出し、無数の溝をつけたフェースはよりクッキリとした打球感が響く。溝加工にはインパクト時にボールの回転方向(順回転)を最適化する効果がある。凹凸の構造の違いによって球との接地面積が大きく変わり、転がり方に影響する。

歴史的フェースインサート オデッセイ「ホワイトホット」

星野陸也の「ホワイトライズ」もホワイトホットインサート

フェースインサートを語る上で、外せないのがオデッセイだ。1995年、「ストロノミック」という衝撃吸収樹脂をインサートに使った「デュアルフォース2 ロッシー」、「ロッシー2」というパターを大ヒットさせた。黒いインサートで知られたが、緑と青も存在した。

その後、キャロウェイの傘下に入ったオデッセイはさらに飛躍する。キャロウェイが発売したウレタンカバーのボールと同じ素材をインサートに使った「ホワイトホット」シリーズを2000年にリリース。衝撃を吸収し、わずかに“たわむ”フェースによるソフトな打感が大いに受けた。進化を経ても25年来、片岡尚之谷口徹といったプロはこのインサートを愛し、それぞれ「ホワイトホット2ボールブレード」、「ホワイトホット#5」を今も使用する。

テリリウム、AGSI、TR溝

ブルックス・ケプカのパターはテリリウムインサート

そもそも、柔らかい打感を追求したインサートがひろまった理由はボールの進化にあった。プロや上級者は1990年代半ばに糸巻きバラタボールから、ソリッドボールを使うようになった。ソリッドボールは糸巻きよりも総じて硬く、以前と同じ打感を得るためにパターで対応したいという要望が増えた。

1997年発売のスコッティキャメロン「トライレイヤード」に装着されているインサート「テリリウム」は、軟鉄削り出しボディに銅系の合金インサートを組み合わせたものだ。

金谷拓実の「シグマ2」はTR溝

テーラーメイドの初代「スパイダー」に搭載された「AGSI」インサートは、樹脂を素材にして溝をつけ、柔らかい打感を表現した。その進化系が現在の「ピュアロール」でフェース面から45度、地面を向くように傾斜して配置された溝が、効率的な順回転を生み出す。

ピンは「TR溝」という、芯とその周辺の溝の深さを変えることで、ミスヒットによるボール初速の低下を補うインサートを誕生させた。現在は打音と打感にこだわった「PEBAX(ペバックス)」インサートが主流になっている。

歴史的インサートのパターをゲット

左が初代ホワイトホットインサート(2ボールブレード)、右が復刻ホワイトホット(ホワイトホットOG ロッシーS)

オデッセイの初代「ホワイトホット」(2000年)はコレクターズアイテム化しており、状態によって価格がかなり違う。5000円前後から2万円以上とかなりの差がある。コンディションにこだわるなら、復刻モデルとも言える「ホワイトホットOG」シリーズ(2022年)がオススメ。1万円台前半で見つかる。

オデッセイのエポックメイキングな別モデル「マイクロヒンジ」インサートが装着された「オー・ワークス」(2017年)も見逃せない。ウレタン素材に鍵状の爪の突起を多数配置した「マイクロヒンジ」は、打感も柔らかく、インパクトから順回転に入るのが早くて転がりが良い。相場は1万円前後から。なお、2024年に「マイクロヒンジ」とインサートをシリーズ名にして復刻モデルが登場した。転がりの良さを求めるならイチオシだ。

上がマイクロヒンジ(オーワークスパター)、下がピュアロール(初代スパイダーX)

ピンのペパックスインサートにTR溝を組み合わせた「シグマ G」(2017年)は1万円を切る価格、「シグマ 2」(2018年)は1万円台前半で見つかるだろう。

メーカー独自のインサートを持つパターは他にも数多く存在する。購入前にまずは試し打ちしよう。「柔らかい」、「転がりが良い」という感じ方は個人差がある。テストする際は自分の愛用するボールを持参してほしい。フェースの改良はボールの進化と切っても切れない縁があるからだ。(文・田島基晴)

■ 田島基晴 プロフィール

1963年生まれ。ゴルフギア好きが高じて、地元広島に中古ショップ「レプトン」のゴルフ部門を設立。現在は店舗で得たギア知識を活かし、ゴルフライターとして活躍。YouTube動画の企画編集やブログ執筆など活動は多岐にわたる。

ピン
ピン史上、もっとも打感が柔らかい
発売日:2017/03 参考価格: 34,020円