科学の力でお悩み解決

「スライス→ドロー」への第一歩 シャフトクロスを“ボードドリル”で直す

2023/05/14 16:00

これまでのレッスン界はやはり“感覚”が主流だった。例えば、「インサイドに上がっているからもうちょっと外に上げましょう」。これ、コーチのいう“もうちょっと外”ってどれぐらい外なの?そう思ったゴルファーは星の数ほどいるはず。これからお届けするレッスン中身は、そんな感覚論とは無縁の科学目線の世界。今どきのプロコーチたちの具体的なレッスンの一部始終を生レポート。人の振り見て我が振り…直せます。

「スライスが原因でドライバーが200ydしか飛ばない」と悩む佐藤さん(ゴルフ歴1年未満、30代、男性、平均スコア110前後)

ゴルフを始めて1年未満。毎週3~4回の練習と月に2~3回のラウンドを重ねてベストスコアは「101」と早くも100切り目前。悩みは「ドライバーのスライスがひどく、200ydしか飛ばないこと」。100切りを達成するために飛距離アップが必要で、「スライスをドローにすること」が目標と語った。

「アドレスに問題はない」が…

3Dの骨格検出を行う「オプティモーション」技術によって解析

独自に開発されたカメラ2台で、受講者のスイングを飛球線後方と正面から撮影して体の動きを解析する。

理想的なポジションは緑色で表示される

今回担当の増子瑠菜コーチは「バランスがいい姿勢のアドレスです。後方の映像でも重心は土踏まずにかかり、ひざも適度に曲がっていて全体的に問題はないですね」と診断。

スイング解析で問題点が一目瞭然

手を使ってクラブを持ち上げる形でテークバックを行っている

撮影したスイング動画は、AIによって3Dの骨格検出を行う「オプティモーション」と呼ばれる技術によって解析。肉眼ではわかりにくい様々な数値が明らかになる。アメリカのツアープロ50人スイングデータを元に受講者との比較をする。

増子コーチは、テークバックの始動について「手の動きが多い」と指摘。トップ時の体の回転角度は「肩76度。腰38度」だった。対してツアープロの平均値は「肩88度。腰45度」で、佐藤さんは肩・腰ともに回転量が少ないことが分かる。これは体の回転ではなく腕を使ってクラブを上げていることを意味する。

ツアープロの平均値に対し、肩や腰の回転が不十分で、トップで目標よりシャフトが右を向く「クロス」の状態に

後方からの映像を見るとクラブがアップライトに上がりやすく、さらに左手が甲側に折れることでシャフトが目標より右を向いて「クロス」した状態に。増子コーチは「クロスした状態からクラブを下ろすとインパクト時にクラブフェースがオープンになりやすい。さらに体の回転ではなく腕を使ったスイングをしていることで、アウトサイドインの軌道につながりやすく、それがスライスの原因になっています」と指摘する。

ボードを挟んで持つドリルで「体を使うこと」を覚える

ボードを両手に挟むことで肩や腰の回転を使ったスイングを身に付けることができる

体を使ったスイングを身に付けるため、増子コーチが提案したのはボードを使うドリル。ボードを両手で挟んで持ち、スイングと同じ要領で体を動かす。手(腕)を“ひょい”と上げてしまうのではなく、体全体を使うようになる。また、プロや上級者はテークバック始動時に左手が手の平側にわずかに折れるのに対し、佐藤さんは甲側にどんどんと折れていく。ボードが常に左腕の内側に付いているよう上げられると、左手首が甲側に折れることがなくなる。これでトップ時の左手甲の向きが、体の正面側から上向き(空向き)になり、ボールがつかまる態勢が作れた。

左手が甲側に折れなくなりシャフトが理想的なポジションに収まる(右)

ドリル後の映像でスイングを見比べてみると、左手が甲側に折れなくなり、シャフトクロスがなくなった。またダウンスイングからインパクトにかけて手が低い位置から入ってくるようになり、インサイドアウト軌道に改善された。

スライスの原因と、理想のドローを打つために

トップの形ができたらインパクトにかけて肩と腰を回すことでドローが打てるようになると増子コーチは語る

「スライスの原因は様々ですが、佐藤さんは体の回転が不足して腕でクラブを上げることでシャフトクロスしていました。これにより軌道がアウトサイドインになり、インパクトでもフェースオープンでよりスライスの度合いが強くなっていました。もちろん飛距離も出ません。ボードを使ったドリルにより、腕だけでなく体を使ったスイングをすることを覚え、さらに左手が甲側に折れることをなくすようにしました。これで軌道がドローを打つのに欠かせないインサイドアウトになりました」

が、ドリルをやった直後の佐藤さんは「ボールが右に飛びそう」とコメント。

「ボールが右に出て左に戻ってこないのは、ダウンスイングで体を回せていないことが原因です。トップの形ができるようになったら、ダウンスイングからインパクトにかけてしっかり肩と腰を回しましょう。球を右に打ち出して左へ戻ってくるドローが打てるようになります。結果、飛距離もアップしますよ」。

GDOが全国12か所で運営する「ゴルフテック」とは

1995年に設立され、アメリカでレッスン市場の25%以上のシェアを誇るのが「ゴルフテック(GOLFTEC)」です。日本ではGDOが運営し、2012年に第1号店がオープン。現在は全国12か所で展開している。本場アメリカのメソッドによるマンツーマン指導で累計25万人を超える受講者の実に96%が上達を実感。正しいスイング作り、正しいクラブ選び、正しい身体作りを常に意識したレッスンやフィッティングサービスを提供している。

■ 増子 瑠菜 プロフィール

1994年5月26日生まれ、福島県出身。10歳からゴルフを始め高校では全国大会にも出場。高校卒業後は地元のゴルフ場で研修生になり、ツアーキャディなどもしながらプロを目指す。その後LPGAティーチングも受講し26歳でA級ライセンス取得。ジュニア指導にも関心が高く、ジュニアゴルフコーチの資格も取得。