ダフる人ほど勇気を持って「右肩を下げる!」 レッスン最前線からLIVEルポ
これからお届けするレッスンのやり取りは、感覚論とは無縁の科学目線の世界。最新技術を使ったリアルなレッスンの一部始終をレポート。人の振り見て我が振り…直せます。
「コントロールショットの距離が合わない」が悩みの和田さん(20代、男性、平均スコア89)
ゴルフ歴3年でベストスコア82、平均スコア89と急激に腕前を伸ばし、ゴルフが楽しい盛りの和田さん。週1練習、月1ラウンドという熱心さの割に70台に手が届かない理由が、短い距離のショットにあると自己分析する。「60~100ydのショット精度の低さが悩みです。54度のウェッジで打つことが多いのですが、ダフリやトップも出ますし、距離感が出ずに『乗るだけ』になってしまうことも多く、スコアを落とす原因になっています」(和田さん)。
スイング解析で距離が合わない原因を探る
今回の指導役は小澤亜美(おざわあみ)コーチ。早速スイングをチェックしていくと、平均80台で回るだけあって悪いスイングではないが、ミスの原因となる問題点も見えてきた。「バックスイングで上半身の回転が『35度』と若干浅め(ツアープロ・写真右の平均値は『42度』)、そのせいでダウンスイングも外からクラブが下りる傾向があり、カット軌道になっています」(小澤コーチ)。
「それよりも問題なのがダウンスイングからインパクトにかけての体の回転不足です。インパクトではプロのように腰が『43度オープン』が平均値。和田さんは『14度』しか回っていません。この回転不足が問題の元凶ですね」(小澤コーチ)。
右肩が高い状態でインパクトを迎えていた
和田さんは、腰が回らないのを補う形で肩が突っ込みやすく、右肩が高い状態でインパクトを迎えていた。本来、両肩を結んだラインが「30度」ほど右下がりのインパクトが平均。が、和田さんは「14度」右下がりと圧倒的に右肩が高い。そのためインパクトで手元を押し込めずにハンドレート気味となり、打点が安定していなかった。「ダウンスイングで思い切って右肩を下げていく感覚を体得してもらおうと思います。回転不足だからといって腰を回そうとするとスウェーの原因にもなりやすいですが、右肩を下げる意識を持てば結果的に腰も回るようになるはずです」(小澤コーチ)。
ダウンスイングで2本の棒の右端をぶつける
小澤コーチが指導したのは、ズボンお腹側のベルトループに長い棒(今回はシャフト)を挿し、もう1本の棒を両肩に当ててシャドースイングをするドリル。ダウンスイングで2本の棒の右端がぶつかるように右肩を下げていく。「想像以上に思い切って体を右に倒さなければ棒同士が当たりません」と小澤コーチはアドバイス。
「こんなに右肩を下げたらダフッてしまう気がするんですが、実際にクラブを持ってやってみると、むしろこっちのほうがダフらない。自分の感覚がこんなにズレていたのかと驚きますね」(和田さん)。
ドリルの結果、レッスン前に比べると右肩の突っ込みも抑えられ、手元も若干押し込めるようになってきた。それでもまだ足りないと判断した小澤コーチは、次に和田さんのトップでのグリップの握り方の意識改革に着手。
インパクトでボールを押し込むための意識改革
「和田さんは、トップでグリップを左手で強く握る意識が強いです。これだと力みやすく、手首が甲側に折れ、オーバースイングやカット軌道になりやすいんです。これを、トップで右手の人差し指にクラブを引っかけるような形に変えてもらいました。こうすると余計な力みが取れ、左手も掌屈(手首を手のひら側に折ること)できるようになって、ハンドファーストな状態が作りやすくなるんです」(小澤コーチ)。
コントロールショットの際、距離を抑えるために体の動きを小さくする一方で、飛ばなくなる感覚を嫌がって腕を大きく動かしていた和田さん。その結果、オーバースイング気味になっていた。これが体を止めて腕を大きく振る「手打ち」の正体。グリップを修正して手の動きを抑えたことでクラブを大きく担げなくなり、結果的に腕と体の同調性が高まった。インパクトでハンドファーストになりやすく、ロフトも立ち、緩みがない分だけ小さく振っても飛ぶようになった。
スコアアップの第一歩を踏み出した
「まだこの距離感に慣れませんし、右肩を下げる恐怖感も残っているので戸惑っています。ですが、動きが上手くできると当たりが厚くなってダフリやトップも出ません。左手の『掌屈』ができてハンドファーストが作れれば小さく振ってもちゃんと飛ばせることもわかったので、あとは練習あるのみです」(和田さん)。
和田さんの悩みは100yd未満のコントロールショットだったが、ハンドファーストのインパクトが身につけばアイアンショット全般が劇的に変わってくるだろう。
■ 小澤 亜美(おざわあみ) プロフィール
1997年8月19日生まれで千葉県出身、ゴルフテック恵比寿所属。
父の遊び相手として幼少期に初めてゴルフクラブを握る。本格的にゴルフを始めたのは中学。その後、高校・大学と学生競技ゴルフを経験したが、ケガの影響で競技ゴルフを断念。大学卒業後、一度はゴルフから離れたが、ゴルフの面白さが忘れられずコーチの道へ進む。