科学の力でお悩み解決

トップでの「グリップの奥行き」気にしたことある? レッスン現場からLIVE中継

2023/08/20 16:00

これからお届けするレッスンのやり取りは、感覚論とは無縁の科学目線の世界。最新技術を使ったいまどきのコーチたちのリアルなレッスンの一部始終をレポート。人の振り見て我が振り…直せます。

もっと飛距離を伸ばしたい松岡さん(ゴルフ歴15年、30代、女性、平均スコア90台)

松岡佳奈(まつおかかな)さんは、ゴルフ部出身でベストスコア75という腕前。社会人になってからはプレー頻度も減り、現在の平均スコアは90台、ドライバーの平均飛距離は210ydで、あと10yd飛距離を伸ばしてゴルフのレベルを取り戻し、安定して80台でプレーできるようになりたいという。最近はスライスが出ることも多く、「曲げたくない」意識から振れなくなっているのではないかと自己分析している。

スイング解析で、飛距離ロスの原因を探ると

ツアープロ(写真右)に比べ、グリップエンドの位置が頭に近く、アップライトなトップになっている

レッスンを担当する小関政晴(こせきまさはる)コーチは、「松岡さんのスイングは、非常によくまとまっています。データを見ても、数字の面で大きなエラーはありません」とするも、要望にある「飛距離アップ」という点については、「もう少しトップでグリップエンドの“奥行き”が出てくるといいかもしれません」とアドバイス。

小関コーチの言う「トップでのグリップの奥行き」とはどういうことだろうか。

「スイングを後方から見たときに、トップでグリップエンドと頭の距離が近い。軌道でいえば少しアップライトすぎるということですね。トップに“奥行き”がないせいでダウンスイングの軌道がやや外からになっています。肩の開きも早くなることで手首のリリースのタイミングが早く、エネルギーをロスして飛距離が出ていません。もう少し手元の位置が背中側にきて“奥行き”ができると、もっと遠心力が使えて飛距離も伸びますし、球もつかまります。目安はグリップエンドがかかとの真上に来るような位置ですね」(小関コーチ)

まずは効率のいい右腕の使い方を体で覚えよう

右腕を伸ばして大きな円弧で振り、ゴムティなどを強く叩いてみよう

飛距離アップを目指し、はじめに小関コーチが提案したのは、右手1本でクラブを振る素振り(ゴムティなどを叩く)。ゴムティを強く叩くためには、右腕を長く使う必要があり、右腕を伸ばすように使って大きな円弧で振る必要がある。

右ひじを曲げず、伸ばすイメージでトップを作る

「右腕を長く使うように振れれば、いまよりもフラットめなトップになってきます。トップの形を直すというよりは、右腕の効率のいい使い方を身につけてもらうほうがわかりやすいですし、実効性があります。利き腕である右腕の動きを整えて、その右腕に従ってスイングすれば、自然と動きはよくなっていくはずです」(同コーチ)

シャフトや細い棒などを使って右手一本で速く往復で振る

続いて行ったのは、クラブのシャフトだけを右手で持ってビュンビュンと振る素振り。速くかつ往復で振ろうとすると、軌道は自然とフラットになることがわかる。この感覚を実際のスイングにも生かしていきたいところだ。

“奥行き”のあるトップ作り

両腕を伸ばして、右手の位置に左手を合わせる。そのイメージでバックスイングしてみよう

これまでのドリルを終え、片手だと「フラットに遠くに上げる」というのは体感できたが、問題は両手になったとき。両手になると左手に引っぱられて手元の奥行きがなくなりがちだ。そこで「バックスイングでは右手の位置に左手を届かせるような意識を持つといい」と小関コーチがアドバイス。両腕を伸ばして左右に広げ、その右手の位置に左手を持ってくる感覚だと左肩も入りやすく、“奥行き”のあるトップが作りやすい。

レッスン後のトップ(写真右)を比較するとグリップエンドの位置がかかと側へと変化し、フラットなトップに

この感覚で実際にボールを打ってもらったところ、トップの位置も従来よりフラットになり、ヘッドスピードも上がってフォローの振り抜きもスムーズに。「実際にスイング画像を見て、こんなに手の位置が低くていいんだと驚きました。自分の感覚では真横に振っているくらいです。でも、手元が体の近くを通る感じも出て、体の回転もスムーズになりました」(松岡さん)

スイング画像を見る限り、明らかに良くなってきた松岡さんだが、新しいスイングの感覚に慣れていないせいか、トップなどのミスが増えてしまった。そこで小関コーチは2つのポイントをアドバイスした。

ダウンスイングでのポイントを2つアドバイス

お尻を後ろに下げて右サイドに空間を作ることで、クラブを下ろすスペースができる

「ひとつは切り返しで股関節を折り曲げて、地面に圧をかける意識を持つこと。少しかかと体重気味になってもいいので、お尻を後ろに下げて右のわき腹のアタリに空間を作ると体が浮かず、トップのミスが防げます」(同コーチ)

ダウンスイングで肩の開きを抑えると、手首のリリースのタイミングが変わりエネルギーロスが減り飛距離が出てくる

「もうひとつはインパクトで顔を右に向ける意識です。右足前くらいにボールを置き、そのボールを見ながら打つイメージを持つと体の開きが抑えられ、さらに飛距離も出ると思います」(同コーチ)

もともと動きの質は高く、球をつかまえる感覚も持っている松岡さん。これで飛距離アップできれば、学生時代のゴルフを取り戻す日も遠くないだろう。

■ 小関 政晴(こせきまさはる) プロフィール

1966年2月2日生まれ、千葉県出身、ゴルフテック銀座ANNEX所属。
中学まで野球とバスケットボールを部活動で行う。高校3年間はサッカー(大会優秀選手)に熱中し、社会人になってゴルフを始める。競技ゴルフに「どハマり」しアマチュア競技に多数出場。その後、上達の為レッスンに通い、指導に興味を持つ。レッスン歴25年弱。学生・研修生・女子トーナメントプロのレッスンを担当。プロテスト合格者3名。

体とグリップエンドに空間を作ることで、バックススイングで右ひじを伸ばしやすいアドレスへと変更した
右ひじを伸ばすようにバックスイングすることで、奥行きのあるトップへと向かう準備ができた
レッスン後は、右ひじが下がり、わずかではあるがフラットなトップに
切り返しで、体の開きが少し抑えられたことで、クラブの軌道がフラットに変化した
わずかではあるが、前傾角度がキープされた状態でインパクトを迎えている
前傾角度を保ったままフォロースルーへと向かっている
左にしっかりと体重の乗ったフィニッシュに