オーバースイング&シャフトクロスは“始動”で直す レッスンの最前線からLIVEルポ
これからお届けするレッスンのやり取りは、感覚論とは無縁の科学目線の世界。最新技術を使ったいまどきのコーチたちのリアルなレッスンの一部始終をレポート。人の振り見て我が振り…直せます。
オーバースイングを直したい田邉さん(ゴルフ歴4年/20代男性/平均スコア110)
田邉奎斗(たなべけいと)さんは、平均スコア110というアベレージゴルファーだが、先日ついに100切りを達成し99を出した。今後に向けて腕前の上達はもちろんだが、「オーバースイングなのでもう少し見栄えのいいフォームにしたい」(田邉さん)と話す。
スイング解析で、悩みの原因を探ると
さっそく今回のレッスンを担当する井上真熙(いのうえまさき)コーチがスイングを解析。画像を見てみると、たしかにクラブを担ぐようなオーバースイング気味のトップで、シャフトクロスにもなっている。このトップからではインサイドからボールをとらえるのは難しく、カット軌道かつオープンフェースになりやすいわけだ。
「いろいろな要素が複合していますが、田邊さんの場合はバックスイング時の手首の使い方にいちばん問題がありそうです。いまの田邉さんは左手首が背屈(手の甲側に折れる)、右手首が掌屈(手のひら側に折れる)しながらクラブを上げています。右手でクラブを持ち上げるような動きが強く、左腕が地面と平行になった時に右手の甲側が少し上向きなり、そのままトップを作ると右の手首が伸びた状態になります。結果として、トップでクラブを受け止められず、フェースオープンでオーバースイングになりやすいです。本来は、始動からテークバックの序盤にかけて、左手首を掌屈するようにし、トップでは、右手の甲側が地面を向く動きが欲しいんです」(井上コーチ)
「体を一生懸命回そうとするあまり、バックスイングで左肩が浮き上がるような形になって前傾角が崩れていることも、体の上下動も起こりやすく、ラウンド中にダフリやトップも出やすいと思います」(同コーチ)
手首の使い方とクラブの上げ方の練習法
手首の使い方を身につけるために、井上コーチは田邉さんの足元にクラブを置き、ガイドラインにした。これはクラブの向きをチェックする練習法だ。左足かかとと右足つま先を結ぶようにクラブを斜めにセットし、その上で手元を動かさず手首の動きだけでクラブを始動する。このとき自分の目から見て、足元に置いてあるクラブと上げたクラブがそろう位置に上がればOKだ。
ポイントは手元を低い位置に保ったまま、左手首を手のひら側に巻き込むように折り、右手首は甲側に折っていくこと。これによって、フェースが閉じつつクラブはインサイドに動く。
「この動きは、最初からインサイド方向にクラブが上がりますが、クラブフェースが閉じていくので、従来のようにカット軌道で下りてきたとしても左にしか球が出ません。そのため軌道も自然に直ってきます。最初はハーフスイングで、引っかけ気味の球が出てもOKと割り切って練習してください」(同コーチ)
軌道の修正はスポンジバーなどを使ってイメージ練習しよう
井上コーチは、軌道をより意識してもらうために、ボールの右前にスポンジバーをセットした(真っすぐかややインアウト気味に)。これでクラブが外から下りるイメージは消えて、正しいインサイドアウト軌道のイメージが身についてくる。その結果、弱々しいスライスが減り、つかまった球が出るようになってきた。さらに画像を見ても、田邉さん自身はハーフスイングくらいの感覚でも、実際は肩の高さ以上にバックスイングが上がっていることが分かった。こうした意識のズレからも、いままでが「上げすぎ」だったことが分かる。
「バックスイングで『上げる』感覚は忘れてください。最初に手首の形を作ったら、あとは少し体を回すだけで十分に深いトップができるんです。たったこれだけしかクラブが上がっていないという感覚でも、実際は回転量は十分ですし、フェースが閉じてくれば自然とハンドファーストのインパクトができロフトも立って、距離も出ます。あとはいままでとの違和感に慣れるだけですので、がんばって練習してください」(同コーチ)とエールを送った。
■ 井上 真熙(いのうえまさき) プロフィール
1998年6月4日生まれ、茨城県出身、ゴルフテック六本木所属。
10歳の時に、叔父の誘いでクラブを初めて握る。高校でゴルフ部に入り競技ゴルフの道へ。その過程でゴルフの楽しさを伝える仕事に就きたいと思い高校卒業後は、ゴルフの専門的な知識を学ぶため、東京ゴルフ専門学校へ入学。卒業と同時にゴルフテックへ入社し、レッスンコーチの道へ進み、現在に至る。