アラ、不思議! 「右腰の回転量」を増やしたらトップのミスが収まった レッスン最前線からLIVE中継
これからお届けするレッスンのやり取りは、感覚論とは無縁の科学目線の世界。最新技術を使ったいまどきのコーチたちのリアルなレッスンの一部始終をレポート。人の振り見て我が振り…直せます。
トップのミスを少なくしたい池田さん(ゴルフ歴20年/30代男性/平均スコア120台)
池田さんは、ゴルフ歴は長いものの平均スコア120前後。スイングが安定せずに球がバラつき、ラウンドではトップのミスが多い。特に長いクラブが苦手で、ドライバーではOBも多く飛距離も出ない。全体的にスイングのレベルアップを図りたいという希望だ。
スイング解析で見つけたミスの原因
さっそく石村大輔(いしむらだいすけ)コーチがスイング解析を行った。
「一番気になったのは、ダウンスイングでの左(目標方向)への移動量が少なく、ボールに対してクラブが『届いていない』点です。トップのミスが多いのはこれが直接の原因でしょう。ツアープロ(写真右)はアドレス時より腰が平均3.1インチ(約79mm)左に移動し、スイングの最下点は体の中央かやや左側が基本。対して池田さん(写真左)は、0.9インチ(約23mm)しか左に動いていません。バックスイングで体全体が右へ移動し、右に体重が残ったままダウンスイングを迎えるので、クラブの最下点が右にズレ、ヘッドがボールに届かずトップします。最終的に直したいのは最下点のズレです」と課題を指摘した。
体重移動のイメージの違い
この指摘を受けた池田さんは、「右足全体に体重を移動させながらバックスイングしています。その方が、腰も肩も回転しやすいと思っていました」と説明。
これに対し、石村コーチは、「右への体重移動が悪い訳ではないです。池田さんは右に体重が移動すると同時に、腰も上体も右に移動しすぎています。この動きだと、回転でなく、横移動になります。バックスイングで右へのスウェーが多すぎると、肩や腰の回転不足になり、ダウンスイングで左への移動がスムーズにできなくなります」とイメージの違いを説明した。
実際にプロと腰の動きの数値を比較しても、その差は明らかだった。「ツアープロのヒップスウェー(腰の移動量)は、平均0.3インチ(約8ミリ)目標方向に動きながら腰が「44度」回転しています。これに対し、池田さんは、目標と反対方向に2.0インチ(約51ミリ)移動しながら腰の回転量は「38度」と少ない。まずはこのスウェーを改善していきましょう」(同コーチ)
イスを使ったドリルで右へのスウェーを修正
そこで石村コーチが提案したのは、イスを使ったドリルだ。「アドレス時の右かかと位置に合わせて、右斜め後方にイスを置きます。池田さんが普段どおりにバックスイングすると、スウェーしているので右腰がイスにぶつかってしまいます。イスと腰の間に空間ができるような動きを習得するのが目的で、このドリルのポイントは、バックスイングからトップにかけて右腰を左足かかとに乗せるようにして動かしてみましょう。一般的にバックスイングからトップにかけて右足かかとに体重をかけていくのが理想的と言われますが、池田さんの場合は、右へのスウェー防止と左への移動がスムーズにできるようになるため、左足かかとに体重を乗せる意識でOKです。右のお尻を目標方向に向けるような感覚でクラブを上げるイメージを持ってください。初めは違和感があるかもしれませんが、これをうまく習得できれば、トップ時点で左への体重移動の準備が完了します。あとは、そのまま振り下ろすと自然に左への体重移動が行われるはずです」(同コーチ)
「池田さんは、最下点が右にあったので、ボール位置も右に寄せていました。左に移動しなくても『届く』ようにアジャストしていたのです。イスのドリルに合わせ、ボール位置もいまより靴1足ぶんくらい左(目標側)にします。最初はヘッドが届かない感じがするので不安だと思いますが、左にあるボールにもヘッドがしっかり届くように、左サイドに体重を乗せていくことが大事なんです」(同コーチ)
左への移動量が改善
イスを置いたままハーフスイングで練習した結果、切り返し以降の左への移動量が「0.9インチ」から「3.7インチ(目標方向)」と大幅に改善(写真右)。これにともない、最下点の位置が左に移動したことで、トップの悩みも少しずつ解消し、スイングの精度が明らかに向上してきた。
「いままでと体の動かし方の感覚が全然違って驚きましたが、画像や数値を見ればこれが正しいということに納得できました。いままでなかった、ボールを芯でとらえている感覚も少しわかるようになりました」(池田さん)
「まずはバックスイングの感覚を身につけること。そうすればもっと体がスムーズに回るようになり、ドロー系の球も出るようなってきます」と石村コーチ。あとは練習あるのみだ。
レッスン後の池田さんのスイング 左に体重が乗って厚いアタリへ変化
■ 石村 大輔(いしむらだいすけ) プロフィール
1989年1月14日生まれ、熊本県出身、ゴルフテック六本木所属。
14歳からゴルフを始め、大学では数々の競技に出場し九州大会優勝。全国大会の出場経験もあり、卒業後は太平洋クラブ成田コースで研修生として入社。2016年よりゴルフテックへ入社し、現在は六本木店のチーフとしてコーチ業、マネジメント業務を行っている。