科学の力でお悩み解決

「洗濯ばさみ」で手に入れるアイアンの分厚い当たり レッスン最前線からLIVE中継

2023/10/01 16:00

これからお届けするレッスンのやり取りは、感覚論とは無縁の科学目線の世界。最新技術を使ったいまどきのコーチたちのリアルなレッスンの一部始終をレポート。人の振り見て我が振り…直せます。

アイアンの「ぶ厚い当たり」が欲しい 赤羽彩子さん(ゴルフ歴12年/女性/平均スコア90前後)

赤羽彩子(あかはねあやこ)さんは、レギュラーティーでベストスコア84という腕前。自己流だがスイングは整っており、動きのクオリティは高いが、本人はアイアンの当たりが薄いと感じていて、もっとぶ厚いインパクトを手に入れたいという。

スイング解析で見つけた「薄い当たり」の原因

赤羽さんのインパクト(写真左)は手首がほどけてロフトがつきフェースが開く

今回レッスンを担当する小関政晴(こせきまさはる)コーチが、赤羽さんのスイングをチェック。

「トップで体が回り過ぎているため、ダウンスイングで少し振り遅れ、左への体重の移動量も不足しています。振り遅れを間に合わせようとして、ダウンスイングで少し体を止めて手首をほどいてヘッドを走らせている。その結果、インパクトは詰まりやすく、当たりも薄くなりやすいんです」と薄い当たりのメカニズムを解説した。

小関コーチは、いきなり赤羽さんのスイングを直すのではなく、まずクラブの特性の説明を始めた。「赤羽さんはトップでフェースの開く量が大きいのですが、これはクラブフェースが開こうとする動きを抑えきれずに緩んでしまっているからです。開いたフェースのまま切り返しでもフェースを抑えきれていない。結果、インパクトでもフェースが開き、ロフトも寝ています。当たりが厚い、薄いというのはインパクト時のフェースの向きやロフトが大きく影響します。フェースが十分に閉じ、ロフトが立った状態でインパクトを迎えれば、球を強く押すような感覚が得らます。これがぶ厚いインパクトです」

「プロや上級者はスイング中のフェースの向きを敏感に感じていますが、一般のアマチュアゴルファーの場合、視界にとらえられないトップ付近でのフェースの向きを感じるのは難しい。赤羽さんの場合もトップや切り返しでフェースが開いているという認識がないため、開く動きを抑えるという意識が持てないのだと思います」と小関コーチは解説を続けた。

洗濯ばさみを使って重心を管理する

クラブの重心位置を意識することで、フェースの管理がしやすくなる

その状況を踏まえ、小関コーチがまず指導したのは、「クラブの重心を感じて振る」こと。これは「フェースの向きを感じて振る」と同じ意味と考えていい。シャフト軸線から外れたところに重心のあるゴルフクラブの重心位置を感じながらスイングすることで、フェースを開閉するコントロールを身につけるのだ。

「『クラブの重心』があるのは、グリップエンドとヘッドの重心を結んだ線上の空間で、クラブを指で支えて釣り合いの取れる場所の近くにあります。ここを意識するために、シャフトに洗濯ばさみをつけて目印にし、視覚的に意識しやすいようにします。そしてこの点を意識しながら、ヘッドが8の字を描くようにユラユラと水平素振りをしましょう。ポイントはグリップエンドから始動して波打つように動かすこと。そしてフェースを大きく開閉しないようなテンションを維持することです」(小関コーチ)

赤羽さんも洗濯ばさみドリルをやって、徐々にクラブの重心を意識する感覚をつかんできた。

ハンドファーストのインパクトを身につけるための、さらなるドリル

ハンドファーストのインパクトができるとソールにガムテープがつくようになる

動きのコツが分かってきたところで、小関コーチはボールの先の地面にガムテープを貼ってスイングするドリルを提案した。「今までの赤羽さんはどちらかというと、アッパーブローですくい打ちになっていました。ボールの先にあるガムテープをはがすには、ボールにハンドファーストで当てないといけません。先ほどやったクラブの重心の位置を感じながら、地面のガムテープがはがしていく練習をすれば、徐々に当たりも厚くなってくるはずです」(同コーチ)

バックスイングで頭が右に動くと、打点も右にズレる

最初はガムテープをはがすことができなかった赤羽さんだが、小関コーチが頭の右横にシャフトを当てて右への「残りすぎ」を抑えると、一気に動きが改善。ぶ厚い当たりのインパクトでボールをとらえられるようになり、打った後にはソールににガムテープがつくようになった。

「ヘッドの振り抜きが抜群によくなって、インパクトの打感が劇的に変わりました! 飛距離も伸びていますし、すごくよくなっています。これでしばらく練習してみます!」(赤羽さん)

レッスン後の赤羽さんのスイング トップでフェースの開きが収まり「ぶ厚い当たり」に

■ 小関 政晴(こせきまさはる) プロフィール

1966年2月2日生まれ、千葉県出身、ゴルフテック銀座ANNEX所属。
中学まで野球とバスケットボールを部活動で行う。高校3年間はサッカー(大会優秀選手)に熱中し、社会人になってゴルフを始める。競技ゴルフに「どハマり」しアマチュア競技に多数出場。その後、上達の為レッスンに通い、指導に興味を持つ。レッスン歴25年弱。学生・研修生・女子トーナメントプロのレッスンを担当。プロテスト合格者3名。