「掌屈」をやってみたもののミス連発…このまま続けていいのか?【レッスン最前線ルポ】
これからお届けするレッスンのやり取りは、感覚論とは無縁の科学目線の世界。最新技術を使ったいまどきのコーチたちのリアルなレッスンの一部始終をレポート。人の振り見て我が振り…直せます。
トップでのシャフトクロスと引っかけに悩む岩井さん(ゴルフ歴25年/平均スコア90台後半/50代・男性)
岩井忠(いわいただし)さんは、トップで左手首が甲側に折れてシャフトがクロス(クラブが飛球線より右を向く)するスイングと長年格闘してきた。そんな中、レッスン動画やゴルフマンガを見て「これだ!」と思って数年前から取り入れたのが手首を「掌屈」(手首が手のひら側に折れた形)させる動き。上手くいくとつかまったいい球が出るものの、引っかけのミスが出るようになり、このまま続けていいものか悩んでいる段階だ。
おさらいしよう!そもそも「掌屈」のメリットとは?
渡部夏生(わたべなつき)コーチは「掌屈動作自体は悪いことではない」と言い、その理由を説明する。「正しく掌屈ができているとフェースをシャットに使え、球をつかまえやすい。さらにレイドオフ(トップでクラブが飛球線より左を指す)なトップを作りやすく、インサイドからクラブを下ろしやすいというメリットがあります。ただ、岩井さんのスイングを見ていると、掌屈できている時とできていない時でバラつきがあります。掌屈ができていない時は、インサイドからクラブが上がってトップでシャフトクロスし、ダウンスイングではクラブが外から下りる逆ループ軌道になりやすく、引っかけが出ていたのだと思います」(同コーチ)
「クロスハンドグリップ」で正しい動きを身に付ける
そこで渡部コーチは、「クロスハンドグリップ素振り」を提案。「クロスハンドでのスイングは、手首が使えないぶん体の動きが悪いと全然当たらなくなります。岩井さんはそもそも手首の動きにこだわりすぎて体の動きが不十分になっていました。逆手に握ることで、まずは体の動き方を身につけられます」。さらに渡部コーチは素振りの際のポイントを指摘。「アウトサイドにクラブを上げてインから下ろす『ループ軌道』を意識してください。このときトップでヘッドが手元より背中側に収まるようにイメージしてくださいね」
素振りをしていく中で岩井さんは、「手打ちになっている感じがするんですが…」と戸惑いをみせる。ただ、スイング動画を見る限りしっかり体は回っており、コンパクトながらもトップの回転量は十分確保されていた。そこで渡部コーチは、掌屈のタイミングを意識できるさらなるドリルを提案する(下の写真)。板などのボードを両腕で挟んだまま素振りをする練習だ。
「岩井さんは今までトップに達してから左手首の掌屈を作ろうとしていましたが、これが手首の過剰な動きや、『逆ループ』の原因になっていました。バックスイングの始動と同時に手首を使い始め、先に掌屈を作ってから体を回す感覚のほうがスムーズに動けると思います。ボードを使うと、その感覚をつかみやすい」(同コーチ)
「シャフトクロス」が解消されインサイドアウト軌道に(レッスン後)
「岩井さんの場合、バックスイングに集中することで、自然とダウンスイングもよくなってくるはずです。今後また引っかけが出るようになったら、一度クロスハンドにして素振りをし、体の動きを確かめてスイングをリセットしましょう」(同コーチ)とアドバイス。
正しい掌屈を使ったスイングに向けて、岩井さん、あとは練習あるのみだ!
■ 渡部夏生(わたべなつき) プロフィール
1999年8月10日生まれ、山形県出身、ゴルフテック神田所属。
8歳から祖父の影響を受けゴルフを始める。高校からは親元を離れゴルフ部に所属。大学では1度ゴルフから離れたが、ゴルフのかかわる仕事をしたいと思いゴルフテックへ。