ゴルフ雑学 芝の畑「ナセリ」
今回のレポートは“ナセリ”
都内某所にあるという謎のゴルフ場研究所(通称ゴルラボ)で日夜ゴルフ場の研究に励む新米ドクターのS吉くんが、ゴルフ場にまつわるアレコレを研究するという当コーナーが唐突に始まりました。
記念すべき連載第1回目は、先日ラウンドしている途中に発見した芝生の畑!?について調べてきたみたいだけど……。
(取材協力/カレドニアン ゴルフクラブ)
カレドニアンの“芝の達人”登場!
(S吉) というわけで、早速ゴルフ場にやってきました! ……ゴルフ場に芝の畑があったが、あれって何ですか?
(石井) 畑ですか?それは“ナセリ”と言います。“ナセリ”とは、英語の“nursery”のことで、日本語では苗木場とか圃場とか呼びます。ゴルフ場では、特にグリーン用に芝を養生している場所のことを指すことが多いですね。当ゴルフ場では、15番ホールと16番ホールのカートパスの所で育成しています。
(S吉) あ、あなたは、日本有数の高速グリーンを誇ると言われているカレドニアンGCにオープン当初から在籍し、現在グリーンキーパーを勤めていらっしゃる千葉県出身の石井浩貴さん(54)ですね!
(石井) 説明的な紹介ありがとうございます(笑)。ここカレドニアンがコンディションのいいグリーンを一年中キープできるのも、ナセリがあるからなんです。
(S吉) というのは?
(石井) このゴルフ場では、ナセリで14種類もの芝を育成し、さまざまなテストをして、どうしたら快適なグリーンコンディションを維持できるのか日夜研究しているのです。昨年11月に14フィート(マスターズのガラスのグリーン並)チャレンジキャンペーンをやり、話題にもなりました。
(S吉) なるほどー。
(石井) では、早速ナセリを見に行ってみましょう!
なんと14種類もの芝生を育成中
(S吉) うわー、壮観ですね。
(石井) 14カ所に区分けして、それぞれ別の芝を育成しています。ここで、肥料の種類やまき方、カットの仕方、転圧の仕方など、さまざまな実験を行っているのです。その結果、現在このゴルフ場では「Tyee(タイイ)」という第4世代の芝をグリーンに使用しています。
(S吉) 第4世代?
(石井) 芝の世界は、常に品種改良が進んでいるんです。ベント芝では、特に有名なところでは、ペンクロスというのが第1世代。ペンA2が第3世代、そして、Tyeeや007、オーソリティなどが第4世代です。ちなみにペンA2の“A”はオーガスタ(Augasta)の頭文字なんですよ。
(S吉) どんなふうに進化してきているんですか?
(石井) 病気に対する強さや管理のしやすさなどもそうですが、芝の密度がだんだん高くなってきています。真っすぐ上に育つというのも特徴ですね。いわゆる芝目がなくなってきて、傾斜に対して素直に転がるグリーンが作れるのです。
普段は見えない努力がいっぱい
(石井)芝を短く刈ることでスピードを出せるのですが、芝には生長点というのがあって、それを刈ってしまうと枯れてしまいます。最新の芝は生長点が低く、より短く刈っても大丈夫なようになりました。私たちは、グリーンモア(芝刈り機)の刃も独自に改良して、より短く刈れるようにしているのです。
(S吉) そんな見えない努力がされていたんですね!
(石井) 速いグリーンを作りたかったら、ローラーをかければ簡単なんです。でも、そうするとコンパクション(地面の硬度)も上がってしまい、スピンの効いたナイスショットもグリーンに止まらなくなってしまいます。適度なコンパクションを維持しながら、高速グリーンを作り、しかもその状態を1年中キープするのは大変なんですよ。
(S吉) そうなんですね。……でも、ナセリがないゴルフ場もありますよね? そういうところはどうしているんですか?
(石井) 昔はグリーンの芝の張り替え用にナセリがたいていのゴルフ場にはあったのですが、ナセリがあるということはグリーンが1面増えるのと同じなので、管理の手間が増えてしまうのです。なので、最近は練習グリーンをナセリ代わりにして、コース内の芝を張り替えるときは練習グリーンから持っていくというコースが多いみたいです。
(S吉) 練習グリーンが2つあるのに、片方が使用禁止になっているコースをよく見るのは、そういう事情だったのですね。
(石井) はい。そうです。
(S吉) ナイスショットはピタッと止まる、でもパッティングはスリリングという高速グリーンを維持するために、ナセリでの研究は欠かせないということですね。まさに「ナセリの“ナセリ”業ですね」
(石井) ……。
今回のS吉クンまとめ!
ナセリとは、芝を養生する圃場のこと! ナセリで芝の種類や育成・管理方法を研究し、コースでのグリーンコンディションの向上に役立てているのだ!そして、この研究がいろんなゴルフ場で進むとどこのゴルフ場に行っても、年間を通じて高速グリーンが楽しめナイスショットはピタッと止まり、パッティングではスリルを味わう事が出来るゴルフ場が増えると言う訳だ。益々ゴルフが楽しくなるな~~。