S吉クンのゴルフ研究 report.11 砂にもいろいろありまして
前回、「グリーンに砂をまくと速くなる」という意外な事実を知ったS吉クン。今回は他にもいろいろあるゴルフ場の“砂”について、引き続き富里GCのグリーンキーパー、北野慎一さんにお話をうかがいました。
(取材協力/富里ゴルフ倶楽部)
「USGA適合の砂」がある
(S吉)北野さん、ゴルフ場では様々な種類の砂を使っているというお話でしたよね。
(北野)はい。まずは先週の続きですが、グリーンの砂についてお話ししましょう。実は、グリーンの砂にも“USGA適合”の砂というのがあるのです。
(S吉)USGAって、あのUSGA(全米ゴルフ協会)のことですよね!?
(北野)そうです。USGA適合の砂を使って、USGA方式で作られたグリーンというものがあるのです。世界中で広く普及しているグリーン構造なのですが、日本で、ちゃんとしたUSGA方式でグリーンを造成しているコースは少ないようです。ここ富里GCはUSGA方式です。
(S吉)USGA方式で作られたグリーンとは、一体どんな構造なのですか?
(北野)芝生のすぐ下の“ルート層”と呼ばれる部分は、粒がそろっているグリーン用の砂と、保水力を高める“ピートモス”と呼ばれるおがくず状のものを混ぜて構成しています。砂は保水力が低いので、ピートモスで保水力を高めているのです。
(S吉)表面からは見えない地下部分に工夫があるんですね。
(北野)そうですね。ルート層の下には“砂利層”があり、そのすぐ下には排水管を設けています。
(S吉)この構造にはどんなメリットがあるのですか?
(北野)透水性が高く、グリーンに水が溜まりにくいのが一番のメリットです。
砂には用途別に名産地が
(北野)ところで、富里GCではグリーン以外の場所の造成にもUSGA方式が使われているのですが、どこだか分かりますか?
(S吉)ちょっと想像ができないです……。
(北野)それはティーインググラウンドです。実は多くのゴルフ場では、地表の水はけを良くするためにティーインググラウンドがゆるやかな「かまぼこ型」になっていたりするのですが、富里GCは地下構造で水はけを良くしているのでティーインググラウンドを平らにできたのです。これだと、微妙な傾斜でティショットに影響が出ることもありません。
(S吉)し、知りませんでした……。
(北野)おっと、話がそれました。グリーンの砂の話でしたね。グリーンの砂は、焼いて植物の種などをなくし、ふるいにかけて粒形と大きさを揃えてから使います。ちなみに産地にもこだわっていて、ここでは青森産を使っています。
(S吉)なるほど。バンカー用の砂とはどう違うのですか?
(北野)バンカー用の砂は、グリーンの用よりも少し粒が大きいものを使用します。やはり丸くて大きさが揃っているものが理想です。丸いと固まりにくく、エクスプロージョンショットがしやすくなります。ちなみにバンカー用の砂は愛知産です。グリーン用の砂もバンカー用の砂も、握った時に「キュッキュッ」となるのがいい砂の見分け方です。
(S吉)(握ってみて)あ、本当だ。あと、ゴルフ場の砂といえば、目土用の砂ですね。
(北野)はい。多くのゴルフ場では山砂を使用しているようですが、こちらでは川砂を使っています。こちらは霞ケ浦産を使用しています。川砂の方が山砂より透水性がいいんですね。また、砂だけで目砂にしているところも多いようですが、ここでは目砂に堆肥を混ぜています。
(S吉)なるほど。目砂によるディボット跡の回復をより促進するのですね。
(北野)そうです。
(S吉)「たかが砂、されど砂」でスナ!
今回のS吉クンまとめ!
・グリーンの作り方にはUSGA方式と呼ばれるものがあり、富里GCではその方式を採用している。地下が何層にもなっていて水はけがよい。
・グリーン用の砂はバンカー用の砂よりも粒形が小さい。砂はどちらも粒が丸くて大きさが揃っているのが良いとされる。握った時に音が鳴ることが、いい砂の条件と言われている。目砂には、芝の育成のために堆肥を混ぜていることもある。