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パット指導の最先端/シャウフェレのパッティングコーチ デレク・ウエダを知ってるかい?(1)

2023/08/20 13:15
いちばん左がデレク。オースティンキャディも教え子だった(真ん中)

デレク・ウエダ(DEREK UYEDA)と聞いてピンときた方はどれぐらいいるだろうか。地元サンディエゴでこそ知られたコーチだった彼の名前は、教え子のザンダー・シャウフェレの活躍とともに一躍、米国全土に知れ渡った。日本ではまだ馴染みはないかもしれないが、彼が開発したパッティングプレートは国内ツアーでも使用する選手が多くいるほど。シャウフェレ以外にも、エミリアノ・グリジョ(アルゼンチン)、チャーリー・ホフマンらのツアー選手、サンディエゴステート大などの学生も教えている。普段の選手とのやり取りや、パッティング上達のヒントを聞いてきた。(1話目/全3話)

デジタル傾斜計を使って“グリーンを読む練習”をしていた

―シャウフェレは今ではツアー屈指のパター巧者ですが、学生時代はどうだったのですか。

最初に会った頃のザンダーはひどかった(笑)。特にグリーンの傾斜を読む「目」が絶望的によくなかったんです。例えば6フィート(約1.8m)くらいの、私だけでなく、チームメートの誰が見ても「左から右に切れる」というラインなのに、ザンダーだけが「右から左だね」なんてことがしょっちゅうでしたから。

入念にラインを読むザンダー(2023年ウェルズファーゴ選手権3日目)

―今の彼からは想像もつきません。どう改善したのでしょう。

グリーンの傾斜を測ることができる「デジタル傾斜計」を使って、「数字」と自分の感覚を一致させる作業を繰り返しました。傾斜計を使うと、どちらに傾斜しているかだけでなく、どのくらい大きな傾斜かということも「数字」で分かるので、より正確で繊細な感覚を養うことができるのです。そのおかげもあって、今の彼はグリーンリーディング(傾斜の読み)に関しては、PGAツアーでもトップクラスだと思います。

―学生時代と比べてストロークで変わった点はありますか。

ザンダーは元々、軌道がイン‐アウトで、フェースがクローズだったんですが、それを学生のときにストレートに修正したんです。ストロークを精密に分析できる機械(パットラボ)を使って、毎日、何時間も練習していましたね。半年くらい続けて、今の完ぺきなストレートストロークを手に入れたんです。実際は、少しだけイン‐インなんですが、外から見てる分にはほとんど分からないレベルです。

デレクは定期的にツアー会場に赴き、ザンダーに修正をほどこす

―傾斜が読めて、ストロークも完ぺきなシャウフェレに今はどんなアドバイスを?

主にセットアップに関することですね。パッティングにおいて、毎回、自分が狙ったところに打ち出せるかどうかはとても大事で、それを決めるのがセットアップですから。最近のザンダーは、調子が悪くなると少し左を向いてしまう傾向があります。ボールから少し離れて立ちすぎてしまっている場合もあるのですが、ほとんどの場合はラインの見方だったり、目線のズレによるものです。機会があれば皆さんも試してみてほしいのですが、ボールを3つ、完ぺきに真っすぐに並べて(※)、最も手前のボールにセットアップしたときに、3つのボールのラインがどう見えるか。ボールの間隔は、最初は6フィート(約1.8m)、慣れてきたら9フィート(約2.7m)にしてみてください。

※ぴんと張った糸などをガイドラインにすると真っすぐ並べやすい

パッティングプレートで肩のラインをチェックするデレク

―ラインを見る目線が曲がっていると、ボールが真っすぐ並んでいるように見えない?

そうなんです。ザンダーはいまでも、そのドリルをやって目線がズレていないかチェックしています。加えて、練習グリーンでは「パッティングプレート」(※)を使って、フェースの向きや打ち出し方向のチェックをしながら練習しています。パッティングプレートのいいところは、それ自体がパッティングの問題点を教えてくれるところ。最初に自分が打ち出したい方向にパッティングプレートをセットして、プレートの示す方向通りに打ち出せて、強さも自分が思った通りだった場合、それでもカップを外れるとしたら、それは最初の「読み」が間違っているということですから。逆に、打ち方の問題(打ち出し方向のズレ、タッチの強弱)で入らない場合も自分で気付けるので、その場で修正できます。

※「パッティングプレート」は、デレク・ウエダが開発したパッティング練習器具。いまや世界中のツアーで愛用されている

パッティングプレート。グリーン上でフェース向きや出球のチェックができる

―プレート自体が鏡になっているバージョンもありますね。

鏡のプレートはアドレスすると、目線がどこを向いているかが一目瞭然です。ザンダーはさらに大きめの鏡プレートを足して、肩のラインもチェックしています。ザンダーを含めて、プロがどれだけセットアップを大事にしているのかが分かりますよね。(取材・構成/服部謙二郎)