「ベリーナロースタンス」で構えよう/ねぇ、キース!教えてアプローチ(前編)
PGAツアーで屈指の飛ばし屋として知られる、キース・ミッチェル。今回、彼に聞くレッスン(全2回)のテーマはドライバー!…ではなく、「ウェッジテクニック」だ。ロングゲームの豪打とは裏腹に、フワッとした柔らかい球で寄せるミッチェル流の極意をじっくりと教えてもらった。(取材・構成/服部謙二郎)
スタンスを狭くするのは「飛ばさない保険」
―アプローチについて教えてください。まずはセットアップから。
ポイントが2つあって、フェースを少しオープンにすることと、スタンスを狭くすること。ボクの場合、スタンスは「ベリーナロー」(very narrow. すごく狭い)で、たとえばピンまで30ydくらいだとほとんど両足を閉じる感じかな。
―それぞれの狙いは何ですか。
フェースを開くのは、短い距離でも最大限にスピンをかけるためで、スタンスを狭くするのは飛距離を制限するため。スタンスを広くしてしまうと、短い距離を打とうとしているのに「飛んじゃう」ことがあるからね。
―体重配分はどうしていますか。日本のプロは「アドレスからずっと左足体重」という人が多いですが。
本当? まあ、それでも悪くないと思うけど、それだと切り返しのときに逆に右足にかかっちゃうのが怖いかな。ボクは左右の足に均等に、50%ずつかけるようにしているよ。テークバックはほとんど50%ずつのまま、切り返しからは自然に左足に乗っていく感じだね。
―それはボールを上げたり、転がしたりする場合も同じですか?
同じだね。ボールを上げたいときには、右足体重になりがちなんだけど、そうならないように意識しているよ。低く打ち出すときは、少しだけ左足のほうに多く体重をかける場合もあるけれど、基本的には左右に50%ずつというのは変わらないかな。
―打ち方のポイントは? やはり、ややハンドファーストにして、ヘッドを上から入れますか?
シャフトはストレートのまま「アップ&ダウン」というのを意識しているよ。つまり、シャフトを垂直にして構えておいて、インパクトでも垂直の状態に戻すということだね。シャフトリーン(shaft-lean. シャフトの傾き=ハンドファースト)を強くすると、ディロフトする(ロフトが減る=立つ)から、ボールが低く出てしまう。そうするとスピンは減るから止まりにくくなってしまうんだ。だから、入射角でいうと限りなくゼロに近いのが理想かな。もちろん、あえて低い弾道で打つときは、シャフトリーンを強くして、入射角を少し上からにすることはあるけどね。
―フェースにボールを「乗せる」ような感覚はありますか?
それは当然、意識しているよ。できるだけ長い時間、フェースとボールがコンタクトしているほうがいい。なるべく手を使わず、胸の回転で打っていくようにしているんだ。よく言われることだけど、肩と両腕でできる三角形をずっとキープしたまま打つイメージだね。30ydくらいの距離なら、コックもほとんど使わない。50ydとか60ydくらいになると自然にコックが入るけど、短い距離はノーコックで、手の操作はのぼ「ゼロ」の感覚で打つようにしているよ。
―下半身はどういうふうに使うイメージを持っていますか。
ひとことで言うと「ベリースティル」(very still)、つまりすごく静かに使うということだね。最初に言ったように、アドレスでの体重配分は左右の足に50%ずつ。そこから、ショットほどじゃないけど体重移動はあって、でもそこまで大きくはないから、ほとんど動いていないように見えると思う。とくにテークバックサイドはそうだね。フォローサイドはしっかり回転するから、最終的には左足に全部体重がかかる感じになるよ。