「出球の9割はフェースの向き」日本では珍しいパット専門コーチの教えVol.1
PGAツアーでは一般的な「コーチの分業制」が今、日本でも少しずつ浸透しつつある。国内ツアーでパッティング専門コーチとして活躍するのが、昨年スコッティキャメロンとアドバイザー契約を結んだ24歳の丸山颯太氏だ。プロツアーのシード選手から多くのアマチュアを指導。今回は同業のコーチ向けに行われた丸山氏のパッティング講座に潜入した。いささか難解ではあるが、アマチュアにとっても攻略のヒントになるかもしれない。(全3回)
「パットのコーチング」 テーマは全部で7つ
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パッティングのコーチングとして、テーマに挙がるのは以下の7項目。今回は順番に説明していきましょう。
1. 打ち出し方向(ダイレクション)
2. エイム(向き)
3. スピード(距離感)
4. ボールの転がり&スピン
5. ストローク
6. クラブフィッティング
7. グリーンリーディング(ライン読み)
打ち出し方向への影響は「インパクトのフェース向き>ヘッド軌道」
パットでボールが打ち出される方向には「インパクトのフェース向き」が約90%、「ヘッド軌道(スイングパス)」が約10%、影響します。この割合を逆と考えるアマチュアの方が多い。実際にはインパクトでフェースが向いた方向にボールは出やすいので、どんな軌道でもフェースが目標を向いていれば、真っすぐ出る可能性は高いわけです。
「真っすぐボールを出したいから、ヘッドを真っすぐ動かしたい」と言う方は多い。それも軌道の影響が大きいと思っているからで、軌道が真っすぐならボールも真っすぐ出ると勘違している。ですから僕のレッスンは、だいたい「フェース向きを見直すこと」からスタートします。
とはいえ、軌道が重要でないとは言えません。例えばインサイドアウト軌道の場合、ターゲットの右側にスイングしていくため、体が反応してフェースを左に向けたくなります。逆にアウトインだと左にスイングする分、フェースは右に向けたくなる。ですからヘッド軌道を整えることは、インパクトのフェースの向きがスクエアに戻りやすくすることに繋がります。軌道による打ち出しへの影響は10%と言いましたが、真っすぐ打ち出すためには重要な要素と考えています。
もちろん打ち出し方向には「打点位置」も関係します。クラブヘッドは、芯を外したときに「フェースのツイスト」が発生し、トウ側に当たるとフェースは右、ヒール側に当たるとフェースは左を向きます。打点の安定も、方向性に対して重要になるわけです。
プロもアマもまずは「エイム」からレッスン
続いては「エイム」について。アドレス時のフェースの向きのことです。フェースが真っすぐの状態でインパクトを迎えるために、とても重要。ですから、どんなレベルのゴルファーに対しても僕は必ず「エイムチェック」からレッスンしていきます。エイムのズレが、ストロークのズレに繋がるからです。
では、エイムを毎回同じようにするにはどうするか。エイムは以下7つの要素によって決まります。
1. アイライン(目)
2. ボール位置(前後左右)
3. 首の前傾角度
4. 首の傾き
5. 体の向き
6. ボールの打ち出し
7. バーチカルライン
エイムは「1」(アイライン)の要素から順にズレやすいもの。エイムがズレている場合は、1~6の要素を元に、真っすぐ見えるポジションをみつけてもらいます。
「アイライン」とは、真っすぐを正確に検出する視力のことです。例えば、足元のボールからターゲットまでの黄色い棒があるとしましょう。レーザーを使って正確にカップの中心に合わせた棒ですから、真っすぐを向いています。目のラインがズレている方は、黄色い棒の場所に立ってアドレスしても、棒がカップの中心を向いているように見えません。ですから最初の作業として、この黄色のホリゾンタルライン(ターゲットに対する横向きの直線)が“ちゃんと真っすぐ見える”目の訓練をしないといけません。
続いて「ボール位置」。ボールは左目の下、とよく聞くと思いますが、実際は左目の下より内側(体側)の人もいれば、外側(体と反対側)の人もいる。適正なボール位置を探していると、先ほど置いた黄色い棒が真っすぐに見えるポジションが出てくるので、自分で小まめに動いてその位置を探してほしいのです。真っすぐ見えるところが正しいボール位置。ミラー(鏡)などの練習器具を使ってチェックしてもらうと、自分の目の位置がズレていないかを確認できます。
「首の前傾角度」もエイムを決める要素。首の前傾が地面に対して平行に近くなると、アドレスは少し立ち気味になり、目もより下を見るようになります。
「首の傾き(左右)」はどうでしょうか。ジョーダン・スピース選手の構えを思い出して下さい。彼は首をだいぶ右に傾けてアドレスします。彼にとっては首が傾いた状態でホリゾンタルライン(黄色い棒)が真っすぐ見えている。とはいえ、首の傾きはないほうが良いのは間違いありません。ストロークに影響が出ます。本来は首が右に傾くと、目の向きが右に向きやすいのです。
続いて「体の向き」。肩の向きなど、アドレスした時の景色に入るものもエイムに影響します。左肩がかぶっているように見えると、右を向いているように感じてしまう。その意味では両足のつま先の向きも影響します。つま先は目に見えるため、向きがバラバラだと、直線の見え方のズレにつながりやすい。つま先の向きは都度、あまりズラさない方が良いと思っています。
6つ目の要素が「ボールの打ち出し」。例えば、引っかけて打つことの多い人がいた場合、体の向きに対してボールが左に飛び出す景色を見続けることで、体は右を向きたくなるものです。気づけば直線の見え方も変化してしまうので、その人が普段ボールを打ち出す方向もエイムに大きく影響します。
最後の「バーチカルライン」は、ホリゾンタルラインに対する直角のラインのことです。フェースの向きのことであり、向きを真っすぐにしたときに、ホリゾンタルラインがちゃんとカップを向いているかをチェックする必要があります。ヘッドのデザインやオフセット具合でバーチカルラインの取りやすさも変わってくるので、真っすぐ構えられないならヘッドのデザインを変更する必要も出てきます。
エイムをつかさどる7つの要素を踏まえ、ホリゾンタルラインがうまく見えないゴルファーにはトレーニングをしてもらいます。そういう方は、そもそも直線を見慣れていないか、パターを練習する時間が足りていない可能性があります。ストリングライン(ゴムひも)などを使ってボールとカップを直線で結び、それを景色に入れながら練習をしてもらうのも一つ。レーザーを当てたり、パターマットに白い直線を引いて練習するのも一つです。(取材・構成/服部謙二郎)
※第2回では「スピード(距離感)」からレッスンを再開します。