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「真っすぐ動くのはヘッドでなくシャフト」日本では珍しいパット専門コーチの教えVol.3

2024/05/09 16:42
ツアーの現場で岩崎亜久竜のパッティングをチェックする丸山氏(左)

日本ツアーの現場では徐々に専門分野に特化したコーチが存在感を出しつつある。パッティングコーチの丸山颯太氏は、大卒から2年にして経験値はすでに高く、プロのシード選手を何人か抱えている。同業のコーチ向けに行われた丸山氏のパッティング講座に潜入。いささか難解ではあるが、アマチュアにとっても攻略のヒントになるかもしれない。(最終回/全3回)

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パッティングのコーチングとして、テーマに挙がるのは以下の7項目。今回は「ストローク」から説明します。

1. 打ち出し方向(ダイレクション)
2. エイム(向き)
3. スピード(距離感)
4. ボールの転がり&スピン
5. ストローク
6. クラブフィッティング
7. グリーンリーディング(ライン読み)

真っすぐ動くのはヘッドではなくシャフト

続いて「ストローク」です。

ストロークの話をするときに、僕は必ずクラブの動きを説明します。ゴルフ量販店で売っているパターのほとんどが、ライ角が70度に近く、シャフトには20度のプレーンの傾きができます。そうなるとストローク中はアーク(円弧)が発生するのが自然。「ヘッドは真っすぐ動かすべき」と言う方が多いのですが、「ライ角通りにストロークすると、ヘッドは円弧を描く」ということを最初に理解してもらいます。

ヘッド軌道に対してフェース向きをコントロールするべきであり、ロフトもコントロールしなければいけません。ストローク中は「フェース」「ロフト」「ライ」この3つのローテーションをコントロールすることが大事になります。イップスになったり、手に違和感を覚えるゴルファーは、だいたいストローク中にこの3つのローテーションが複雑に入り混じって動く。では、この3つのローテーションを一つずつ解説していきましょう。

3つのローテーションを安定させたい

まずは「フェースのローテーション」です。シャフトが回転することによってフェースの向きは変化します。自らシャフトを回転させて、シャフトがねじれてフェースが極端に開閉するのは避けたいのですが、実際には必要以上にフェースをローテーションさせてしまう人が多い。

続いて「ロフトのローテーション」。これはシャフトの傾きによって起きます。パットは振り子運動なので、シャフトが目標側に傾けばロフトは下を向き、その逆であればロフトは上を向きます。

最後の「ライ角のローテーション」はストローク中に起きるタテのねじれ。パットが苦手な人のエラーとして一番多いのがこのライ角の変化です。「テークバックが上がらない」という女子プロは多いですが、そういう方はだいたい地面に対してグリップに圧をかけて構え(手元が低くなる)、始動でヘッドが外側に上がりやすい状態を作っています。

つまり、アドレスで自らパターのライ角を変化させている。クラブの動きがタテ向きになるので振り幅も大きくはできず、ロングパットでテークバックの距離が足りずに急激な加速をしてインパクトの帳尻を合わせるケースが多い。クラブの動きも体の動きもスムーズではなく、軌道もぐちゃぐちゃで打点もバラバラ。アタックアングルも鋭角になり、ボールの打ち出しが地面に打ち込むような形になります。そうなるとボールの転がりも悪くなります。

松山英樹は朝の練習で必ずレーザーを使ってシャフトの動きをチェックしている

ライ角のエラーは、ストロークに対する認識違いによるものが大きい。「ターゲットに対してヘッドは真っすぐ動く」と思っている方がほとんどで、実際「ターゲットに対して真っすぐ動くのはヘッドではなくシャフト」なのです。テークバックではシャフトは真っすぐ動き、ヘッドの軌道はライ角通りに自然なイン・トゥ・インを描くというのがニュートラルなストローク。ターゲットに対するフェースの開閉は自然に起きるものであり、シャフトが振り子の動きで傾くことで、ロフトのローテーションも自然と起きます。

安定と可動のバランスを見極めたい

2時間の講義はあっという間

ストローク中は体の動かない部分「安定」と、動かす部分「可動」の見極めが大事。ストローク中に可動するのは胸と肩だけです。つまり、胸と肩以外は安定していてほしい。ゴルフを始めたての方に「パッティングってどうやって打つんですか、どこを動かしたらいいんですか」とよく聞かれます。そんなとき、僕は最初に「どこを動かすかではなく、どこを止めるのかなんです」と説明します。止める所が明確になると、もうあとは動かす所しかなくなります。ですから、「ここは止まる部位」というのをしっかりと理解してもらいます。

では、その止めるべき部位はどこなのか。本来動かしたくない部位、エラーが起きやすい部位の例を挙げます。その一つが「側屈」です。基本的にストローク中は、胸は背骨に対して垂直に回転します。でも実際は、ほとんどの方が側屈を入れて胸を回そうとします。側屈が入ると、スイングアークが無くなりやすく、シャフトの回転が入ってねじれが発生しやすい。そうなるとライ角の変化も起きやすいので、先ほどいった3つのクラブのローテーションにかなり影響が出てきます。

「ヘッドを真っすぐ動かすように練習しています」という人ほど、この側屈が入りやすい。ですから、たまに胸の辺りにレーザーを持ちながら練習するなどして、胸がストローク中にどこを向いているのかをチェックしてもらうこともあります。

手首の角度が過剰にならないようにチェックしていく

二つ目の体のエラーが「骨盤」です。これはお尻が回り過ぎたり、横に動いてしまうことです。打った後にボールを見送ったり、ヘッドと一緒にお腹が動いたりするのもひとつ。女子プロに意外と多く、だいたいは支点が大きく横に変化しています。骨盤の回転自体も抑えてほしくて、骨盤が回り過ぎると胸の動きも必要以上に回ってしまいます。そうなると右肩が前に出たり左肩が前に出たりして、フェースのローテーションが過剰に入ってしまいます。

それ以外に起きやすいのが「手首」のエラー。撓屈(とうくつ。手首を親指側に折る動き)と尺屈(しゃっくつ。手首を小指側に折る動き)と言いますが、これらが過剰だとライ変化につながりやすい。これはグリップの握り方の影響を受けやすく、フィンガーで握る方は基本的に手首が動き過ぎてライ変化が起こりやすい。

そんな人には、手のひらのグリップの入る角度を修正し、手のひらにグリップが当たる面積を増やし、撓屈、尺屈を減らしてライ変化を抑えます。違和感がなければ、グリップを太くすればするほど手のひらにグリップがあたる面積が多くなるので、太くしてもらいます。

フィッティングにおける3つの「L」とは

最後にクラブフィッティングです。僕はフィッティングの際に、三つの「L」を大事にしています。「Length(レングス・長さ)」、「Lie(ライ)」、「Loft(ロフト)」。重要度もその順番通りです。

フィッティングの際には、まずレングスから考えます。いきなりライ、ロフトにはいかない。クラブ設計者のコンセプトをあまり変えたくないので、できるだけライ角やロフト角はいじりたくない。レングスだけでエラーが直せるように努力します。エイムの時にお話ししたホリゾンタルラインや、ボール位置などを加味し、腕の長さも意識しながらアライメントが取りやすい長さに調整します。

3つのLでクラブをフィッティングしていく

クラブフィッティングでストロークを修正していくこともあります。例えば、比嘉一貴プロもその一人でした。比嘉プロは、普段からアドロフト(ロフトを増やす)させて打つ傾向があり、打点は下目でアッパー軌道、ミート率を落とした状態で距離感を作っていました。測定したデータを見せ、ストロークの傾向を説明した上で、パターのヘッド自体を見直していこうという話し合いをしました。

具体的にはパターにちょっとオフセット(グースをつける)を入れてハンドファーストに当てやすくしました。さらに、ヘッドのトップにサイトラインを入れることによって、打点が上になるよう調整しました。プロのフィーリングと僕たちコーチの狙いをマッチさせる、クラブ側からのアプローチでストロークの修正を考えてフィッティングしたのです。その結果、ボールの初速が良くなりました。

みな最後まで丸山氏の話に熱心に耳を傾けていた

また、僕が教えているジュニアには、ミスヒットを補正してくれるような補助機能がついたパターをできるだけ使わないようにしてもらっています。ミスがミスと分かるパターを選んでもらいたい。芯を外したら音が変化して、フェースが振動するのもちゃんと感じとってほしい。ジュニアの頃は感性を磨く時期。自分の基準を見つけてほしいと思うのです。(取材・構成/服部謙二郎)