石川遼とパターコーチの会話がマニアックすぎた件 「なぜロフトは2度?」
先週の「日本ツアー選手権」での事。宍戸ヒルズのパッティンググリーンで、石川遼が年若いパッティングコーチを見かけ、「記事見ましたよ」と声をかけた。相手は、岩崎亜久竜、比嘉一貴、佐藤大平らの帯同コーチでもある丸山颯太氏。丸山コーチがパット講座を開いたときの記事を読んで、その内容が「面白かった」というのだ。そこから立ち話が始まった。ツアーでも1位、2位のパット巧者石川と、新進気鋭の理論派コーチの会話の応酬。マニアックな内容だったが、上達のヒントが散りばめられていたので、かいつまんで紹介したい。
石川遼のパター ロフトは「2度」設定
まず、石川のエースパター(ホワイトホット XG #7センターシャフト)を見た丸山が、「それってルーク・ドナルドが使っていたモデルですよね」とヘッドをマジマジと観察。これに石川が食いつく。「そうそう。ルークのエースはベントネックだけど、いったんセンターにしていた時期もあったんだよね」と、かつての世界ランキング1位のパット巧者の話題になった。石川が言うには「10年ぐらい前に作ってもらっていて。ずっと使いたかったんだけどなかなか(投入する)タイミングがなくて」とのことだった。
丸山コーチが「ロフトは何度にしているんですか?」とのっけから細かい質問をすると、石川は「これは2度。オデッセイのパターは4度が多いけど、4度だとこう見えるじゃない」と言ってクラブを掲げてハンドファーストの形を作ってみせた。ロフトがあるとハンドファーストで構えやすくなり、そうなると「シャフトがフェースに介入しちゃう」という。丸山コーチは深々とうなずいて納得したが、「フェースに介入する」とはいったいどういうことなのか?
石川は「ハンドファーストに構えるとシャフトが斜めになるので、ロフトやフェース面の向きが分かりづらくなる。僕はわりと真っすぐに構えたくて、シャフト、フェース共に真っすぐにしたいんです。ロフトが立っているとその分ボール位置も左に置けるし、そうなるとボールをつぶし過ぎないで済むんですよ」と解説してくれた。すかさず丸山コーチも「その感覚よく分かります。僕もクランクネックを使っていたんですが、ハンドファーストがきつくなるとセンターシャフトを使ってアドレスをリセットしていました」と自身の経験談を語った。
丸山コーチは石川の理屈をさらに補足した。「クランクネックやショートネックってオフセットがあるので、どうしてもハンドファーストに構えやすくなります。ハンドファーストだと基本的にフェースは右を向きやすく、インパクトでフェース面はブレやすくなる。さらにロフトもブレやすく、強く飛び出たり、石川プロが言うように打ち込みすぎて飛ばなかったり、ボールの転がりに影響が出ます。インパクトロフトの理想はだいたい1.5度ぐらいですが、石川プロはフィーリングでそれが分かっているんでしょうね」。石川のロフト設定に感心しきりだった。
「でも、いろいろと操作できるのはショートネックとかクランクネックの良さでもあるよね。このパター(#7)はひとつの打ち方しかできないから」と言う石川に対し、「確かにそうですね。操作性の良さがあるとイメージが出やすくて、それで構えやすい部分もありますよね」と丸山コーチ。二人の話はだいぶディープな方向に進んでいった。
続けて丸山コーチは、「それは何を試しているんですか?」と石川のバッグの中に入っていた2本の新しいパターを目ざとく見つけた。1本は流行りのジェイルバードミニ、もう1本は古い「EXO SEVEN」の中尺センターシャフトだった。石川は「ジェイルバードはクランクネックにしてもらって、ハンドアップで構えたいとき用に作ってもらいました。センターをずっと使っているとハンドダウンになりやすいんでね。EXOは中尺の長いグリップ。使ってみたいなと思って試したけど全然ダメだった」と笑って説明した。
その後も興味深そうに石川のパッティング練習を眺めていた丸山コーチ。プロコーチとしてはツアーで駆け出しの身。ツアー屈指のパター巧者との思わぬ出会いを、コーチングの肥やしにしたかったのだろう。終始興奮気味に石川に質問していたのがとても印象的だった。(編集部/服部謙二郎)