「フォロースルーに大きな変化」ザンダー・シャウフェレ スイング解説 by目澤秀憲
「全米プロ」「全英オープン」と2つのメジャーを獲り、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのザンダー・シャウフェレ。以前に比べて増した安定感には目を見張るものがあるが、いったい何が変わったのか? 彼のスイングと、普段の取り組みを現地で見てきた目澤秀憲コーチ(桂川有人、永峰咲希らを指導)が解説する。
フラットトップからややクロス気味に
今年の「マスターズ」直前にも彼のスイングを解説しましたが、まずはその改造の内容を簡単におさらいしておきましょう。昨年末からクリス・コモと組み始め、スイングは激変しました。レイドオフ(トップでクラブが飛球線より左を向く形)がおさまり、クラブがニュートラルか若干クロス(飛球線より右を向く)に入るようになった。そして、そこからシャローイング(クラブが背中側に倒れる動き)気味にクラブを下ろすようになりました。
昨年までのザンダーは、フラットに肩が回りやすく、トップでレイドオフがきつくなることがありました。それだと時に大きく曲がりやすく、球が左に出て左に曲がることもあれば、右に出て右にいくこともあった。優勝争いの場面で、ドライバーショットを左右両方に曲げている印象は強かったと思います。
そのザンダーが、新しいスイングに取り組み始めてからわずか半年後の全米プロ(5月)で優勝。改造が功を奏し、スイングに安定感が出て、初のメジャータイトルをゲットしました。さらに全英オープン(7月)での優勝は皆さんも記憶に新しいと思います。僕は、コーチングしている桂川有人選手の帯同で「スコットランドオープン」と全英オープンの2週間現地にいましたが、久しぶりに見た彼のスイングは実に洗練されていました。
ロイヤルトゥルーンの練習場でザンダーが球を打っているのを見たのですが、クリスと一緒に取り組んでいた練習内容はすごくはっきりしていました。まだトップでフラットになる感じが残っているようで、練習場ではトップでシャフトをクロスさせ、なおかつフェースをオープンに使いながら打っていました。そして、そこから大きくシャローイングさせながらフェードを打つ練習をしていた。実際コースでは、いい意味でフラット過ぎないプレーンで下ろしていて、つかまったドローを打っていました。練習場ではコースで出てしまう癖(フラットトップ)と真逆の動きをすることで、修正を図っていたんでしょうね。
クリスとずっと取り組んできたのはプレーンの安定だと思いますが、コースでまさにその“真っすぐ真っすぐ”のオンプレーンを体現できていた。必要以上にインアウトでもなく、一方でアウトインをきつくすることもない。
さらに全英ではフォローサイドの動きにも変化が見て取れました。クラブをリリースし過ぎないというか、手元が体から外れない。となるとインパクトゾーンは自ずと長くなり、インパクトが安定して球もねじれない。元々ショートアイアンではできていた動きが、長いクラブでもできるようになっていました。
全英オープン最終日、ザンダーのバックナインでのスコアの伸ばし方は、まさにそのスイング改造の努力のたまものでした。ロイヤルトゥルーンのインコースは全て左からの風。元々フラットになりやすい選手が左風に対してドローを打とうとすると、右から右のミスもあり、嫌がったらチーピンも出てしまう。その状況下でも、彼は取り組んできたスイングをやり切れていた。いい球が出れば薄いドロー、左に球が出てもストレートでフェアウェイに収まる。かつてのようにフェースがクローズで当たらなくなっていたので、高い確率でフェアウェイをとらえることができていました。
今までのスイングだと一番苦手なシチュエーション。その中でも新しいスイングをやり切って勝利をもぎ取ったという事実は非常に大きい。今回のメジャー優勝は、本人の中でも相当な自信につながったのではないでしょうか。(取材・構成/服部謙二郎)