上達ヒントの宝箱

物理を使いこなせば飛びヂカラ増強!第2章アドレス編

2011/04/15 10:15

スイングのためのアドレスを!

ものすごく当たり前のように聞えるかも知れませんが、アドレスとはスイングのためのもの。スイングの良し悪しを決定づけるスタート地点であることは周知の通りでしょう。しかし、アドレスのためのアドレスになっている方が実に目立ちます。

アドレスのためのアドレスとは、形ばかりにこだわり、ボールを打つ動作へのつながりや力感が曖昧なアドレスです。確かに、見た目の形も大切ですが、永井流の作用反作用理論では、まず合理的なスイングありき。そのスタート地点となるアドレスとは、一体どんなものなのでしょうか?

股関節の高さの鉄棒に乗る感じ

股関節くらいの高さの鉄棒に、両腕で支えて乗るような力感をイメージしてください。跳び箱を飛ぶ時、両手を突いた姿勢ということもあります。実は、これがアドレスで意識すべきすべてです。つまり鉄棒の上に乗る姿勢は、クラブの上にからだを乗せることになります。このポジションこそが、スイングのためのアドレスであり、スイングをよりパワフルにするための第一歩。

「えっ?それだけ・・・?」と思うかも知れませんが、鉄棒に乗るイメージがあれば、自ずと理想的なアドレスになってしまうから不思議ですよ。でも、「ワイドスタンスで重心を低くした方が軸の安定につながる」という意見もありそうです。どうしてやや高重心に感じる鉄棒のイメージなのか、もう少し解説が必要ですね・・・。

インパクトに負けないような力感

第1章でお話しした通り、永井流の理論では、作用反作用と入れ替えが2大キーワードです。そして、アドレスにおいて必要な作用とはクラブがボールを打ちに行くエネルギーを下に押さつける力になります。

ヘッドが遠心力を持ちながらボールに向かい下降する反作用で、インパクトでは手元が浮いてしまう現象が生じます。ですから、この手元の浮き上がりに負けない態勢をアドレスの時点で準備しておくことが大切なんです。

さあもう一度、鉄棒のイメージを思い浮かべてみましょう。鉄棒の上に両腕で支えて立つ力感は、どんな感じになりますか?真下に力を加えて鉄棒を押さえつけるような感じになりますよね。これがインパクトの衝撃に耐え、グリップエンドを浮かせない作用へとつながるのです。

腕力で押さえ込むのではありません。自分の体重をクラブの上に乗せるようにして、自重を使うのがポイントです。

フトコロのグリップ位置はひとつ

フトコロとグリップ位置の関係ですが、腕の力を抜いてダラりと垂らしたポジションが理想と言われます。しかし、それだけではインパクトの反作用を押さえることができません。脇をしめて肩を沈め、胴体部分と腕を連結させてこそ、フトコロの中でグリップを真下へ押さえつける感覚が生まれます。

鉄棒に乗ったイメージでも、この体幹部との連結がなければ、鉄棒を支えることができません。写真のように、フトコロの中で腕が体から離れて斜め前方にあれば、自重を使ってクラブを押さえることができませんし、反対にからだに近づきすぎてもダメです。体感部との連結ができてからだ全体で押さえることが出来るポジションはひとつしかありません。それは多分アドレスの定説的な、コブシ1個から1個半くらい離れた位置になると思います。

脇を締めて胸を高く

鉄棒の上に乗るイメージでアドレスすれば、脇はどんな状態になるでしょうか?クラブを押さえる意識を持つだけで、脇は自然に締まり、胸の位置が高くなり姿勢がよくなるはずです。脇を締めて肩を沈めると上腕部に自然と力感が出てきます。その分、グリップしている前腕部やリストはリラックスできるのです。

これとは逆に前腕部やリストが力んで硬くなり、上腕部や脇・肩がルーズになっていることが多いです。それでいてワイドスタンスで踏ん張って、軸や重心の安定を図りミートするのが、小手先スイングの正体です。

鉄棒のイメージで下半身はどうなる?

さて、今度は下半身。鉄棒のイメージは、言い換えれば真下から上にかかってくる力を、真上から押さえつける感じでした。このとき下半身はどんな形が理想的でしょうか?

股関節から前傾せず、腰が下がり背中を丸めた猫背の構えだったらどうでしょう?下から押されたら、後ろにひっくり返りそうですよね。グッと真下に力強く押さえつけるイメージならば、股関節や足首にしっかりした角度ができ、お尻が突き出てしっかり腰が入るはずです。膝は「曲げる」というより「緩める」程度でいいでしょう。「曲げる」と言うと腰が落ちてしまう人が多いです。

重心の位置は意識しなくても良い

重心の位置はどうでしょう。カカト体重につま先体重、膝を曲げ腰を落としてどっしり構えるのとスラッと上に伸びたバレリーナのような構え、話題の左軸スイングに2軸スイングなど・・・。アドレスの重心位置やスイング中の重心の使い方については、前後・上下・左右、いろいろなイメージがあるものです。

実際のところ、鉄棒のイメージでアドレスをすれば、重心の位置は前後・上下・左右すべて整います。それを基軸にして、例えば傾斜地では重心を低くするとか、ドライバーは右軸よりでアイアンは左軸というようなアジャストがあるのは事実です。そしてからだの中心で整えた重心を、左右に動かして飛ばしのエネルギーを作るのがこの先の動きです。その準備のためのアドレスなので、「アドレスのためのアドレス」ではないというのはこのことです。

机のぞうきん掛けドリル

最後に、インパクト前後の力感を体に覚え込ませる方法をご紹介しましょう。クラブを写真のように持って、机をぞうきんがけするイメージで、4時~8時の幅で腕を左右に動かすのです。

机を磨き上げる感じで、しっかりとクラブを押さえつけながら左へ右へ。重心を左右に揺する動きと同調させます。このクラブを押さえながら重心の移動でインパクトゾーンをつくるのが、フルスイングからアプローチまで全てのインパクトに求められる動きです。この動きで30ヤードのアプローチを打つのが、スイングつくりの基本ドリルとなります。

【撮影協力】グッドフィールドゴルフクラブ

■ 永井延宏 プロフィール

1969年埼玉県生まれ。日大桜丘高校ゴルフ部でキャプテンを務め、卒業後に渡米。ミニツアーに参戦しながら最先端ティーチング技術を学ぶ。その後独自のスイング理論を展開し、ツアープロコーチ、アマチュアゴルファー指導をこなす傍ら、雑誌やレッスンDVDなどで活躍。現在は都内のグッドフィールドゴルフクラブ、アナライズ神田スタジオを中心にゴルフスクールを展開中。
・ホームページ http://www.deepingolf.com
・ツイッター @nobunagagolf