【WORLD】再現性あるスイングにしよう by マット・クーチャー
2011年6月
2、3年前になるが、私は自分のゴルフを安定させるためにコーチを何度か変えていた。その中の一人、ダラスにいたコーチのクリス・オコネルの言葉は衝撃的だった。彼は「君のスイングからアスリートの部分を取り除きたい」と言った。それはとても受け入れがたいことだった。なぜなら、アスリートであることで、自分がツアーで活躍できていると思ったからだ。しかし彼は、それが問題だと言った。私がアスリートということに頼り過ぎているというのだ。そして、そこから全てが変わった。
クリス曰く、私のスイングには色々な要素が含まれるため、(ナイスショットをするのに)完璧なタイミングが必要だった。インパクトで手が返るか重心が正しいところにくれば素晴らしい結果となったが、安定はしていなかったのだ。だから、スイングをシンプルにすることに取り組むことにした。ゴールは、再現性を高めるため可能な限りスイングを簡単にすること。あなたに安定感がないのは、タイミングがマズい可能性もあるのだ。だから私の経験が、あなたにも生かされるはずだ。
Key No.1 スティープに肩を回す
当時の私は肩をレベル(フラット)に回していた。みなさんもこれが正解と思っているのではないだろうか。しかし、レベルに肩を回すとインパクトもシャローに入り、特にライの悪いところでインパクトが安定しなくなる。そこで、肩の回転をスティープにすることにした。まずバックスイング中も頭を右サイドに動かさずに中央に残した。こうすることでスティープ(急)な角度で左肩を地面の方向に回転させることができる。スティープなダウンスイングによってボールコンタクトが改善されるのだ。
次に左腕を胸につけるようにした。これで両腕と身体に一体感が出た。トップで左腕と肩のラインが並行になっていることが分かるだろう。この形にすればインパクトまで調整が不要になり、シンプルなスイングになるのだ。
もうひとつ意識したことは、バックスイングで右肩甲骨を背中の中央に向けて締めるように動かすことだった。これで肩の回転がスティープになり、しっかりとしたバックスイングをすることができるようになった。
Key No.2 臀部を左に回転させる
臀部のアクションもスイング改造の要点だった。肩同様、臀部も現在はバックスイングでスティープにターンしている。トップでは、まるで右臀部を突き出しているようだが、この動きが左肩の下方向へのターンと拮抗しているのだ。臀部を突き出さなければ、肩のターンは軸を外れてしまうだろう。一方、ダウンスイングでは左ヒザ、左モモ、左臀部が重要になる。左サイドを逃がすように、または左に回転することで右サイドがハードにドライブするのだ。以前はトップから臀部がボールに向かって動き、クラブがインサイドから入りプッシュやフックを招く結果となっていたが、現在は左臀部を左側に押し出し身体の後ろで回転させている。これにより、クラブが鋭角に降りてくるのでボールを的確にとらえることができるようになった。
Key No.3 身体でリリースする
先にお話ししたが、私たちの目標はスイングからタイミングをとらなければいけないという問題を排除することだった。これには、インパクトでクラブフェースをスクエアにするために手をロールさせることも含まれている。しかし今では、ひとたびダウンスイングで左サイドにシフトしたら、ハードにターンし、身体でクラブをリードすることができるようになった。理由は左腕を胸につけているから。これにより手をロールさせることなく、身体の回転でフェースをスクエアにできるのだ。
そして身体がスイングを牽引すると、インパクト後に腕がインサイドの軌道を取るようになる。以前の私はラインに沿って真っ直ぐにダウンしたり、時には右側に振ることもあったが、現在のスイングのシェープは身体と腕が一体となっているので、同心円のように身体の回りの軌道を腕が動くようになった。
今では、本当にピュアな状態だと、インパクトに向かう際に左ヒザ、左臀部、左肩という左サイド全体が自分の後ろを回るように感じことができる。クリスが表現したように、自分のスイングからアスリートの部分が取れ、パフォーマンスが突出するようになったのだ。
米国ゴルフダイジェスト社提携
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■ マット・クーチャー プロフィール
2010年PGAツアーで最も成長した選手の一人。「最少平均スコア」と「賞金王」の2冠に輝き、初のライダーカップチーム入りも果たした。アマ時代はT.ウッズが3連覇した翌年の全米アマを優勝、大学時代からメジャー大会にも出場し密かに注目されていた。初のフルシーズンの02年には「ホンダクラシック」で初優勝。一度はネイションワイドに落ちるも07年に復帰。10年の全米オープンで自身メジャー最高の6位タイ、全米プロでは初日を終えて単独トップ(結果8位タイ)。過去5年でトップ10入りが23回あり、いつも勝てそうな位置にいながら最後伸ばしきれない選手…というイメージが付きまとうも、10年FedEx Cup初戦「ザ・バークレイズ」ではプレーオフの最初のホールで深いラフからのセカンドをグリーンの傾斜を利用してカップに寄せるスーパーショットを見せ、自身3勝目を挙げた。テニスはプロ並みの腕前で、一時はフロリダ州を代表するNo.1ダブルスプレーヤーだった。