あえて“ゴルフなし”第2弾 名門コースを横目に宮崎シーガイアを楽しむ方法
「来週、宮崎に行ってもらえない?」。上司からの突然の指令を二つ返事で引き受けた。宮崎といえば、“おいしい”食事が確約されているからだ。地鶏に釜揚げうどんに宮崎ビーフ…。宮崎には国内男女トーナメントが開催される名門ゴルフ場も多いが、ここはあえての“ゴルフなし”。食にありつくためなら、たとえどんな過酷な弾丸出張であっても乗り切れる(はず)!
聞けば、憧れのフェニックス・シーガイア・リゾートに宿泊できるというではないか。ミシュラン三ツ星ホテル宿泊体験に続く、リゾート取材。今年2度目のガッツポーズで、エアチケットを手にした女性編集部員の旅行記――。(編集部・糸井順子)
■宮崎の“ランドマーク” は南国ムード溢れる高層ホテル
宮崎ブーゲンビリア空港は、温かく、鼻孔をくすぐるお花のようないい香りで迎えてくれる。“ブーゲンビリア”の名称に妙に納得、うふふ。空港からタクシーで30分ほど走って、旅の目的地、フェニックス・シーガイア・リゾートへ。太平洋に面した南北約11km、およそ700haの広大な敷地内に、今回宿泊するシェラトン・グランデ・オーシャンリゾートのほか、国内男子ツアー「ダンロップフェニックストーナメント」が開催される名門・フェニックスカントリークラブ、プールや温泉施設がある。ワオ!
エントランスを抜けると、自然光が差し込む巨大ロビーが目に飛び込んできた。中央は吹き抜けで、階下には南国ムード溢れるヤシの木と、色とりどりの熱帯魚が泳ぐ水槽。まるで海外のビーチリゾートにでもいるようで、身も心も開放的に…おっと、いけない(仕事、仕事!)。今回も“おひとりさま”であることが悔やまれる…。でもせっかくだから、いつかやってくるかもしれない、ムフフな再訪に期待しつつ、仕事+αの『妄想メモ』をスタートした。
■午後2時:「風待ちテラス」
「さて、なにから始めよう」。まずは、宿泊者だけが利用できるという『風待ちテラス』で小休憩をとることにした。船が出帆のために順風を待つ、という意の「風待ち」。2016年8月オープンの同テラスは、テーマ毎に置かれた旅の書籍や雑誌を手に取り、居心地の良いさまざまな形状の椅子で考えを巡らせ、思い思いの時間を過ごせるスペースだ。ついつい長居してしまいそう。
…二人で肩を並べて、ガイドブックのページをめくる。「ここおいしそう!」「いや、きょうの気分はこっちかな」なんて、楽しいじゃなーい! このままでは妄想が止まらないので、重たい腰をあげて館内を散歩することに。
■午後3時:「レタールーム」
『風待ちテラス』の奥に小部屋がひとつ。扉をくぐると展示室のような、図書館のような趣の部屋だ。テーブルの上には色鉛筆やスタンプ、様々なポストカードが準備されている。さらにクラシックなタンス(のちにポストと判明)が置かれていた。聞けば、ここは「未来へ」「大切な人へ」「あてのない気持ち」を手紙に書くことができる『レタールーム』なのだとか。
オープンから3年で約3万8000通がポストに投函されたという。未来への手紙は最長20年間ここで保管され、再訪した際に受け取るタイムカプセル的なシステム。まだ見ぬ家族や将来の自分に宛てた手紙…。なんともロマンティックで胸がときめく。ただ、いざ私も…とポストカードに向き合ってみると、なかなか筆が進まない。そう、理由は聞かないで。自らタイムオーバーを宣告し、後ろ髪を引かれながらも『レタールーム』を後にした。
■午後4時:「アクティビティセンター」
ゴルフ媒体で取材をしているので、同リゾートのことはもちろん知っていたつもりだったが、そのアクティビティの多さを目の当たりにして驚いた。ゴルフはもとより、セグウェイツアー、レンタサイクル、乗馬に陶芸、スピリチュアルツアーなどなど、ゴルフ以外にも魅力的なメニューがたくさんある。あれもこれもとやってみたいことを数えると、1泊2日の滞在時間じゃ全然足りなーい!
でも妄想は捗る。「さぁ僕の手につかまって!」と、白馬にまたがる王子様系男子に導かれ、さっそうと黒松林を駆け抜けるホースライディング。いやいやちょっと現実離れしすぎかな? 暴れん坊将軍のオープニングも真っ青の昭和な味付けの妄想だったことに気づき、こっそり赤面した。
■午後5時:「KUROBAR」、「焚火のリビング」
まだまだ館内散歩は続きます。日が傾きはじめた夕方の景色を、中庭にあるモダンなデザインのバー「KUROBAR」と「焚火のリビング」で楽しむことにした。夜にはライトアップされたガーデンプールと、天窓から降り注ぐ星。うーん、ムード満点。こんな素敵な場所で口説かれたら、多少の欠点には目をつむって「うん(目がハート)」と言ってしまいそう。まちがいなく告白成功率上がりますって!
焚火のリビングでは、ポットコーヒーサービスとマシュマロが用意されていたので、初めての“焼きマシュマロ”に挑戦した。ほんのりと焦げ色がつくまで焚火であぶる。ポイントは火に近づけすぎて焦がさないこと。うっすらと色が付いたら出来上がりだが、このポイントさえ守れば、ふわっトロッな“焼きマシュマロ”が完成する。
――気温が下がり始める夕方5時。美しく暮れるマジックアワーが“おひとりさま”を一層さみしくさせたけど、“焼きマシュマロ”だけは私を癒してくれた。
■午後6時:鉄板焼「ふかみ」
待ちに待った夕食タイムはホテル内1階にある鉄板焼「ふかみ」。通された席はなんと海外メジャー4勝を挙げているブルックス・ケプカ選手が「ダンロップフェニックストーナメント」に出場(2016、2017年大会で連勝)した際に食事をしたというケプカシート! あのタイガー・ウッズ選手も訪れたというから、ゴルフマニア女子としてはテンション、アゲアゲだ。
――ついにこの時がやってきた。目の前に、ケプカ選手は連日700gも食べたという宮崎牛のステーキがドーンっ! とろけるほど柔らかく、甘味とコクがハンパない…。「宮崎出張サイコーー!!!」と、マスターズを制したタイガーばりの雄叫びが出そうになったけど、ここは公共の場なのでグッと我慢した。
■午後8時:温泉施設「松泉宮」
お腹もいっぱいになったことだし、一日の締めくくり、といったらやっぱり温泉でしょ。松泉宮には、「おゆのみや」(『湯道』を体現した湯室)をはじめ、「離れ湯」(貸切露天)、奥の湯「月読」、前の湯「新月」が点在する。この日は黒松林に囲まれた「月読」へ。角を曲がるたびに日常を切り離していく錯覚が心地良く、松林を抜ける湯屋までの道のりを思わず鼻歌まじりでスキップ♪ すれちがった小学生と思われる男子に慄いたような一瞥を投げられ、我に返るという失態をおかした…。
地下1000mにある1000万年前の地層から湧き出ているというミネラル豊富な美人の湯。都会で干からびた心も体も一気にトゥルットゥルだ。やわらかな電灯に照らされ、風が木々を揺らす音、湯源から滴る水の音に耳を傾けながら、旅の疲れを癒した。思えば、きょうは結局なにもしなかった。それでも、なぜか心は十分満たされたという満足感。日々の喧騒を忘れ、なにものにも代えがたい贅沢な時間だ。「はぁ、東京に帰りたくない」。心の声が漏れた。
■午前6時:部屋からの日の出
今回の一人旅はNetflixさえ見ずに眠りに落ちた。日の出時刻にアラームをセットしたけど、窓から差し込む朝陽に自然と目が覚める。「おはよう」と声に出してみた(一人出張慣れって怖いわ)。もちろん返事はない、トホホ。太平洋を臨むオーシャンビューの部屋から美しい景色を眺め、隣の誰かに「またいつか来ようね」なんて言えたら最高なんだけどね。
フェニックス・シーガイア・リゾートが目指すのは「日本でいちばん“美味しい”リゾート」だ。「食」と「滞在」が人生のごちそうなら、思い思いのスパイスで味付けしたストーリーを旅の土産に持ち帰る。(仕事だったけど)今回の私のストーリーは、『心ときめく再訪のシナリオ作り』だ。秋の空気を肌でめいっぱい感じながら、心ゆくまま日々の疲れを癒した1泊2日だった。
気がかりなのは、この記事が配信されると同時に、“おいしい”宮崎出張の全貌を、上司に知られてしまうこと。お、こわっ。ドS上司から、「こんなに“おいしい”思いをしてきたのか? だったら次は、真冬のゴルフ場取材&滝行…」なんて、アメとムチの展開にだけはなりませんように。