topics

ツアー中断直前の松山英樹の“好調スイング”を3D動画で解説

2020/04/10 17:00
松山英樹の最新スイングを「スイングアバター」化して様々な角度から分析

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、PGAツアーは、松山英樹が首位に立っていた「ザ・プレーヤーズ選手権」初日(3月12日)終了後に中止を発表。以降、予定されていたトーナメントは、すべて中止や延期となっている。松山は2月の「ジェネシス招待」(5位)、「WGCメキシコ選手権」(6位)で上位に入り、好調ぶりを見せていただけに、ツアーの中断はファンとして悔しい。

今回は、ことしの2月に撮影した松山のスイングを3Dデータの「スイングアバター」へ変換し、さまざまなアングルから見ることで、好調の要因に迫ってみる。解説するのは、国内男女ツアーで帯同トレーナーの経験を持つ菅原賢氏。世界屈指のショットメーカーのスイングを、多くのプロを見てきたフィジカルトレーナーはどう分析するのか。(以下、菅原氏の解説)

ドライバーなのにまるでアイアンショット?

今回の3Dデータは、ドライバーショットのスイングを「アバター」化したものですが、まるでアイアンショット時の体の動きのようですね。松山選手はもっと体重移動を大きく使ってドライバーを打つイメージがありましたので、この「スイングアバター」を見たときは、少し意外な感じがしました。

アドレスは、やや左足寄りの重心で構えているように見える

まず、アドレスではあらかじめやや左足寄りに重心をおいているように見えます。アッパーにクラブを振るのではなく、レベルか、アイアンのように少しダウンブローに打つイメージなのでしょうか。

始動直後、右股関節に体重を乗せていきますが、右腰のポジションはほとんど変わらず、右へスライドする動きは見られません。

飛距離の源泉は地面を押す力

ダウンスイングでも、右から左へ腰をスライドしながら体重移動する動きは少なくなっていますが、そのぶん、足で地面を押す力を使って回転速度を上げています。背中側の軸に沿って回転していて、体が伸び上がらず、頭の位置がフォローまで変わりません。

下方向へ押す力を使いつつ、体の伸び上がりを抑えるには、股関節の柔軟性に加え、下半身や体幹の強靭な筋力が必要であり、しっかりと基礎トレーニングを積んでいることがうかがえます。

背面から見ても上体が左右に動く幅が狭いのがよく分かりますね。横方向の体重移動を抑えて、アイアンのようにコンパクトに狭い範囲で回転することで、ドライバーショットの精度が上がっているのでしょう。

右ひざの動きにも曲がりにくさのカギ

飛球線後方から見てみましょう。右ひざの動きに注目すると、ダウンスイングで正面方向に出ていく動きが非常に少ないです。これによって腰や上体が前方に突き出る動きが抑えられ、インパクトで手元が浮かず、アドレスと同じ位置に戻ってきています。急激にクラブヘッドが返ることなく、低く出していけるのでショットの精度がより高まります。

トップで止まる動きはアマチュアも真似すべき?

松山選手のスイングの特徴でよく言われるのが「トップで一度止まる」ことです。アマチュアゴルファーの中にも、振り遅れの防止の目的などで、この止まる動きを参考にしている方がいると思いますが、実は「止まっているように見える」だけで、下半身は動き続けているのです。本当にトップで静止してしまうと、いわゆる「手打ち」になりがちなので注意してください。

地面からのアングルだと分かりやすいのですが、トップでピタッと止まるのではなく、松山選手はトップ寸前の、腕の上昇が止まるかどうかのタイミングで下半身から切り返しています。そのイメージで振れば、トップで間を置く動きを正しく真似することができます。しっかりと捻転でためたパワーを使うことができ、さらなる飛距離の上乗せも可能になるでしょう。

■ 菅原 賢(すがわら・けん) プロフィール

1975年生、岩手県出身。パーソナルゴルフトレーナー。東京法科学院スポーツビジネス学科を卒業後、運動療法士などの資格を取得。国内男子ツアーの帯同トレーナーなどを経て、日本初となるゴルフ専門フィットネスクラブ「トータルゴルフフィットネス」を立ち上げた。現在も多くのプロゴルファーを指導している。