ネリー・コルダはなぜそこまで“無双”なのか!? 強さの秘密はスイングの「5:5」
米国女子ツアーのメジャー初戦「シェブロン選手権」を制し、出場5試合連続優勝を飾ったネリー・コルダ。もはや無双状態ともいえる彼女だが、なぜそこまで強いのか? 見るからに力感がなく、淀(よど)みのないスイングは素人目でも分かるほど美しく見える。そんな何気なく振っている姿のどこに凄みが隠されているのか――。スイングコンサルタント・吉田洋一郎氏が解説する。
もはやマキロイやシェフラー超え? 男女合わせても世界No.1
現在の男女ツアーを合わせても、ここ直近5~6年間でスイングの完成度はNo.1といえるでしょう。常に脱力していて、スムーズに流れるスイングは、見ていて飽きることがない。ロリー・マキロイ(北アイルランド)、スコッティ・シェフラーといった海外男子のトップ選手でも、ここまでレベルの高いスイングはできていないと思います。
スイングは、足→腰→腕→クラブといった順で動いていくものですが、彼女の場合、そのタイミングが人よりワンテンポ早い。切り返しで左足を踏み込む動きが見られず、滑らかに動いています。踏み込む意識が全くないと言ってもよいほどです。
切り返しの前段階、クラブを上げていく時点で、すでにダウンスイングが始まっています。そこからシャフトがしなる反動動作をうまく使い、クラブを無理なく振り下ろしたあとに遠心力を使ってインパクトを迎えています。おそらく、それ以降のインパクトの概念は、彼女の頭の中にないでしょう。クラブを振るのではなく、まさに放り投げるイメージ。このリリースの動きが自然にできていることが、彼女の最大の強みといえます。
腕とクラブは常に「5:5」 動き過ぎないからこそブレがない
通常では、手足が長い選手は遠心力が大きく腕が動きやすい半面、操作不能となって、スイングバランスを崩してしまう要因になってしまいます。彼女は腕が勝手に動いてしまうことなく、体と腕:クラブの動きの割合が常に5:5と均等に動かすことができている。6:4でも4:6でもなく、常に5:5のバランスでフィニッシュを迎えられています。だから、体とクラブが常に同調しているのです。
アマチュアの場合、この割合が9:1や8:2であり、腕に頼りきったスイング、クラブに振り回されるスイングといった極端な割合になりがちです。コルダの凄みは、腕にもクラブにもそこまで頼らず、全てを均等に保ちながらスイングを完成させているところです。
これには当然5:5に耐えられる体の強さも必要ですが、ジュニア時代から反復練習で基礎固めを続けたことによるところが大きい。両親が一流のテニスプレーヤーということもあり、才能は元々持ち得ているとは思いますが、長年にわたり積み重ねてきた技術といえます。近年、国内選手でも若いゴルファーほど、コルダのようにこの“5:5の動き”が身についています。教科書に載っているお手本のようなスイングができている選手が多いのは、それが理由です。
真似るべきレベルではないけれど… 参考にするなら「ボール挟み練習」が効果大
では、アマチュアゴルファーは彼女のどの部分を真似するべきか? スイングの動きがワンテンポ早かったり、リリースの動きは、そこだけ切り取ってできるものではなく、全てが連動している動きです。
まずはアドレスでつくった両ひじと胸の3点でできた空間を崩さないこと。この3点でボールを挟みながら練習を行い、両腕の間隔を常にキープする意識を持ちましょう。それができたうえで、彼女のテンポや体の使い方をイメージすると効果的だと思います。(吉田洋一郎)
■ 吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう) プロフィール
1978年生まれ、北海道出身。海外のスイング理論に精通するゴルフスイングコンサルタント。D.レッドベターを2度にわたり日本へ招聘し、レッスンメソッドを直接学ぶ。世界各地で最新理論の収集と研究活動を積極的に行っている。オフィシャルサイト