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古江彩佳は“傾斜の女” 「エビアンは勝つべくして勝った」タケ小山がスイング解説

2024/07/16 16:49
古江彩佳の何がスゴい?(Atsushi Tomura、Cliff Hawkins、Matthew Lewis/Getty Images)

米国女子ツアーのメジャー第4戦「アムンディ エビアン選手権」を制した古江彩佳。日本女子選手で史上4人目の快挙を成し遂げた彼女の活躍を、2022年シーズン本格参戦前から予言していたのが“屋根裏部屋ゴルフ解説”でおなじみ・タケ小山氏だ。彼女の強さの秘密、スイングのすごさとは――。古江を注目し続けてきた小山だからこそ分かるポイントを解説する。

飛ばないけれど強い まさに“令和の宮里藍”

古江プロはこれまでも現地では、米国女子ツアー9勝を挙げ、2010年に世界ランキング1位に輝いた宮里藍さんの再来という風に扱われてきました。

飛距離は劣るもののショットの正確性、パーオン率の高さは他の選手から見ると脅威。特にセカンドショットの精度の高さは世界レベルで、フェアウェイウッド(以下FW)とユーティリティ(以下UT)のコントロールショットは、目を見張るものがあります。ドライバーではセカンドオナー(一番飛んでいない)になっても、グリーン上では一番最後。そんな彼女の安定感は今シーズンの成績(最多9度目のトップ10入り)にもしっかり表れていました。

入射角が変わらない FWとUTの扱い方は世界トップクラス

彼女がスイング面で優れているのは、鋭角過ぎずに程よい入射角が得られている点です。体の大きな海外選手は、ややクラブが立った状態で鋭角にクラブを振り下ろすスティープな動きが多く、上から打ち込む男子プロに近い選手が多数派です。スティープなスイングは、操作しやすいショートアイアンでは正確性を発揮しますが、ロングアイアン以上の操作しにくい番手ではミスを引き起こしやすい。クラブが若干シャローに動くとテンプラやトップといった大きなミスも出やすいのです。

それに比べ、古江プロはどんな状況でもクラブが立ち過ぎたり寝すぎることなく、常にロフト角通りにコンタクトできています。入射角をレベル(平ら)に保つ能力に長けていることで、米国女子ツアーでも断トツの安定感を発揮できているのです。

FW、UTの精度は世界トップクラスと太鼓判を押す(Christian Petersen/Getty Images)

また今日の活躍につながった理由は、海外に行ってからスイングを変えなかった点でしょう。環境が変われば、飛距離をアップしたいと思うのは当然。どうしても現在のスイングを変えたいという気持ちが生まれるものです。古江プロはそこを一切変えずに、持っている力をそのまま発揮する方向で勝負を挑みました。信念の強さ、維持し続ける努力は宮里藍さんに通ずる点が多いと感じます。

エビアンの勝因は傾斜 ライが悪ければ悪いほど強さを発揮

今大会の会場エビアンリゾートGCは高低差が大きく、平らなフェアウェイが少なかった。前足下がりでしかも左足傾斜というような複合ライからのショットが多かったと思います。難しい状況からでも安定したショットでグリーンが狙えるかが、一番の鍵となりました。

以前から、傾斜の打ち方がうまい人が勝つと予想していましたが、やはり状況が悪くなればなるほどロフト角を一定に保てる古江プロに有利に働く。彼女の優勝は納得の結果と言えます。

平らなフェアウェイが少なかったエビアンリゾートGC(Matthew Lewis/Getty Images)

残念ながらパリ五輪には出場できませんが、自然の地形を利用した傾斜の多いコースほど強さを発揮する古江プロ。米ツアー初優勝を果たした「スコットランド女子オープン」、また次戦のメジャー「AIG女子オープン」といった得意と思える大会がツアー後半戦に控えています。世界ランキングも宮里藍さんに続いて日本人世界No.1の座に就ける可能性は非常に大きい。今後も彼女の活躍に期待したいと思います。(解説/タケ小山

■ タケ小山(こやま) プロフィール

1964年7月7日生まれ、東京都出身。1986年6月、スポーツ振興フロリダ・グレンリーフリゾートの所属プロとして渡米、1990年の世界対抗戦に日本代表として男子個人4位。TBS「サンデーモーニング」屋根裏ゴルフ解説、インターFM897「GreenJacket」パーソナリテイなど、メディアやイベントで活動中。