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ゴルフYouTuberてらゆーの夢「業界にもっとインパクトを」

2025/01/12 16:00
サングラスにマスク。ゴルフ界に彗星のごとく現れた

コロナ禍のゴルフ界に“彗星”のごとく現れた。サングラスにマスク姿で始めたレッスン動画は4年でYouTube登録者数85万人を超え、てらゆー氏の言葉に多くのアマチュアが耳を傾けた。異色のレッスンコーチが追い求めるものとは――

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2020年4月、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態が全国で宣言された。名古屋でレッスン業に汗を流していた、てらゆー氏にとっても突然の転機だった。

「対面でレッスンができなくなったので、スイング動画をお客さんに送っていた。その動画を見て他の人にも参考になるなと思った」。時間はあった。自身のiPhoneでレッスンの撮影、編集を行い、YouTubeに投稿した。

「トレードマークになるかな」とサングラスにマスク姿で一日につき1本の動画を投稿したが、これまでのレッスンとカメラに向かって一人で話すのは別物だった。最初は毎回台本を用意して何度も練習してから撮影した。

3年続けて登録者1万人を目指していたが、「チャンネル登録者を増やそうと思ったことはない。YouTuberになりたくて始めたわけじゃないので」。それでも100日連続で投稿すると、5カ月で登録者数は10万人を突破した。

2022年、新橋にレッスンスタジオをオープン

当時SNSではツアープロの情報や最先端理論が流行っていたが、「高度な理論の展開よりも、あすからでも実践できそうな打ち方や練習方法を知りたいのではないか。スコアで100をなかなか切れない方、切れるようになる内容から外れないように」とコンセプトを徹底する。

グリップではなく「握り方」、アドレスも「構え方」とやさしい言葉に言い換えた。「ドライバーの打ち方【超基本】絶対に外せない3つの意識 ドライバーを安定させる練習方法」(20年5月)は392万回以上も再生されるほどの人気動画だ。

「二刀流はきつかった」と同年夏に会社員を辞め、YouTubeでの活動を本格化させた。そして当初から構想にあったレッスンスタジオを東京・新橋(22年)、横浜・馬車道(23年)、東京・日本橋(24年)にオープンした。

コーチの研修で使うホワイトボード

現在16人のスタッフを抱えるまでに成長したが、自身が培ってきたメソッドを徹底的に教え込むことに注力する。コーチの前職は保険の営業マンなどさまざま。研修を行う控室のホワイトボードにはポイントとなる文言がズラリと並ぶ。

「10年以上前と比べるとだいぶ良くなっているが、ゴルフがうまい人がいきなり教えるパターンが多い。サービス業、接客業のプロとしてはやれていないと感じる。全く別物。うちの研修も大半がそこ。いくら自分ができてもお客さんに伝わらなかったら意味がない」。レッスン後、アマチュアから泣いて感謝されたこともある。「この年齢でこんな感動を与えるサービスはほかにはない」と言い切る。

目指すはコーチの地位向上だ

目指すはコーチの地位向上だ。自身もジュニア時代からゴルフを始め、三重中京大まで進んだが、1学年上には男子プロの小平智、1学年下に松山英樹とそうそうたる実力者がいた。「このままやったらプロにはなれるかもしれないが、稼げるかは別次元。学生時代にナショナルメンバーに選ばれなかったら諦めると決めていた」ときっぱり競技生活から足を洗った。

「そもそもプロを諦めた人がなる業界。それがむしろ悔しい。生活のために仕方なく…が現実は多い。それではレッスン業界自体がお客さんから認められにくい。レッスンの仕事自体をみんなからも認められて…具体的に言うと、お金をもっと払ってもらえるサービスにしていかないと。そうしないとレッスンをする人の地位も上がっていかない」

オリジナルのパターマットも販売する

取材した年末のこの日、3打席ある新橋のレッスンスタジオは平日の午前中にもかかわらず満席だった。「時代に合わせた楽しみ方、ゴルフの関わり方があるし、自分の世代なりの発想で新しいことに挑戦していきたい。ゴルフ業界にもっとビジネスとしてインパクトを与えていきたい」とサングラスの奥から目を輝かせた。(編集部・玉木充)

ゴルフ業界にもっとビジネスとしてインパクトを

<てらゆー>
1990年5月8日、北海道生まれ。ジュニア時代からゴルフを始め、三重中京大を経て新卒でレッスン業に携わる。2020年YouTubeに動画の投稿を開始し、登録者数は85万人超。ドライバーの飛距離は300yd。ベストスコア「66」。