U-25世代LESSON

「順番が超大事。必ず乗ってから回ること」U-25世代スイングセルフ解説/金子駆大

2024/09/17 16:00
13戦連続予選落ちゼロ。絶好調スイングの中身を自身が語る

金谷拓実蝉川泰果平田憲聖…と男子ツアーは毎週のように若手の誰かが入れ替わり立ち替わりで活躍。お互いが刺激し合う相乗効果で、まさに“強い世代”を形成しつつある。彼らはどんな経歴でゴルフをしてきたのか、そしてどんなスイングをしているのか。「U-25世代」の若者たちにスポットをあて、彼ら自身の口でスイングをセルフ解説してもらった。

ルーキーイヤーで13戦連続予選落ちゼロ

今回ピックアップする若者は、弱冠22歳の金子駆大(かねここうた)。その名を目にする機会、最近は増えているのではないか。初シードの今季、これまで13試合を戦って予選落ちがなんとゼロ。トップ10が5回、先週のANAオープンも含めて優勝争いを何度も経験している。賞金ランキングも13位。いま若い世代の中で最も勢いのある選手といっても過言ではないだろう。何より光るのはそのショット力。スイングの安定感は指折りで、ドローもフェードも自在に打ち分けるスインガーだ。では、早速彼のスイングをひも解いていこう。

回転するために体重を乗せる

―今季好調をキープしていますが、スイング面ではどのようなことに注意して取り組んでいますか?

腰の回転を止めないようにするところですね。どうしてもインパクト前後で左腰の回転が止まって、脚が伸びて、腕も伸びてしまう癖があって。インパクトでは、腕が伸びきっていない状態で当てたいんです。

―回転を止めないために意識していることは?

右サイドに体重が残って右側で回転しちゃうことが多いので、回る前にしっかり左に乗ることを心がけています。まず左に体重を乗せて、そこから回る。右腰を左股関節側の位置で回すようなイメージで考えています。

左に乗ってから(写真中)、腰の回転が始まる(写真右)

―体重を乗せるのと回転は同時ではないんですか?

乗ることが先決。しっかりと左に乗ってから回ります。回転だけの意識だとどうしても股関節が抜けやすくて、脚が早めに伸びやすい。左の股関節をちゃんと潰していきます。

―アマチュアの多くも体重移動が上手くできず、右に残ったり左へスウェイしたりしてしまいます。

プロも一緒ですよ。程度の差こそあれ、左に上手く乗れないことは多いです。脚が左(飛球線方向)に動きすぎたり、ひざが前に出たりしないように注意しています。僕の場合は、左腰より右腰の意識が強い。右腰を左サイドにこう押していって、いいところに収まるようにすると、結局左に乗って回れるんですよ。

目澤コーチとローポイントの話をする。フェアウェイバンカーはアイアンの練習にもってこい

―ちゃんと「乗って」から「回る」とどんな効果があるんですか?

ローポイント(最下点)が安定してくるので、球が安定してきます。アイアンの精度も上がる。実際のところ、僕はあまり飛距離アップとか求めてなくて、自分の思ったような球が打てるスイングを目指しています。先ほど言った乗ってから回る動きができれば、自分の思った球を打ちやすいんです。

―弾道も打ち分けられるということ?

はい。最近はスイングが良くなったことで、自分でプレーンの向きを変えて打てるようになりました。ロケーションによって右に振ったり左に振ったりして、両方の球筋を打ち分けています。昨年まではそれこそちゃんと球がつかまっていなかったので、フェードというかスライスボールでした。今はほぼストレートボールですかね。

―調子のいい状態はことしになってから?

そうですね。昨年まではそれこそ“当て感”だけで戦っていて、タイミングをなんとか合わせて打っていた。それだとやっぱり球も曲がるし、アイアンの精度もまちまち。昨年アベマ(Abema TVツアー)で戦っているときは、短い番手で打つことが多かったのでなんとかやれたのですが、レギュラーツアーだとラフに入ったときなど勝負にならなかった。それでスイングを変えないといけないと思っていたんです。

―今はスイング改造がうまくいっているんですね。

ことしから初めてコーチをつけて、目澤(秀憲)さんにがっつりと見てもらうようになりました。そのおかげでドライバーがやっぱり安定したなと思います。昨年はプレッシャーがかかった場面でドライバーのミスが多かったのですが、ことしは明らかに減っている。そこが成績に繋がっている感じがあります。

ダウンスイングでも顔は飛球線後方を向いたまま

―スイングを見ていると、顔の向きが特徴的ですね(顔が右を向いたままクラブを上げ、その顔の向きをインパクトまでキープする)。意識的にやっていますか?

もうそこは癖ですね。無意識なんですよね。気づいころには、(顔を)そういう風に上げるようになっていました。

―インパクトで顔を右に向ける動きはアマチュアなどはやろうとしてもできない人も多いですが。

まぁ、でも頭を残したりとかは、無理にやらないほうがいいんじゃないかと思います。自分としてももっと顔を真っすぐにしたいんですよ。

―何かスイングを矯正するためにドリルなどはやっていますか?

バックスイングで右ひじが引ける癖があるので、それを矯正するためにたまに胸の前にボールを挟んで球を打っています。右ひじが引けると、ダウンスイングで腕の距離が近くなりやすく、そうなるとクラブが上から入りやすくなっちゃうんですよね。

―つまりダウンスイングではクラブを遠くに下ろしたほうがいいと。

そうですね。左に乗って左サイドで回転しつつ、腕は遠くに下ろしてクラブをシャロ―に使っていくイメージです。

目澤コーチ主催の合宿に参加する金子(左手前)、永峰咲希、阿部未悠らと一緒にトレーニング

目澤コーチにはことしから本格的に見てもらっているが、実際二人は3、4年前からの付き合い。目澤コーチ主催のシード選手が集う合宿にも積極的に参加し、スイングなどの最先端情報を早くからインプットしてきた。取材中も「ローポイント(最下点)」という言葉が本人から出るほど、自身でトラックマンの数値を細かく読み取ることもできる。スイングが極端に悪い方向にいかないように、そうしたデジタル機器を使って数字をチェックし、修正を行っているわけだ。まさにデジタルとアナログが共存した新世代のプロゴルファーと言えるだろう。

22歳の金子は久常涼(22)、細野勇策(21)らと同学年。賞金ランキングをひた走る平田憲聖(23)や中島啓太(24)、蝉川泰果(23)の2学年下となり、さらにひとつ若い世代が台頭しつつある。この先のさらなる成長が楽しみな選手の一人だ。(取材・構成/服部謙二郎)

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