フジクラ特集
2024/09/12

クラブにこだわりをもつ青木瀬令奈がその性能に驚いたシャフトとその理由

連載:老舗シャフトメーカーが誇る伝統と新たな血統

■インパクト後にある、もうひと押し

大西翔太コーチと二人三脚で前進を続ける(撮影:落合隆仁)

シャフトの性能については、青木のコーチを務める大西翔太氏も同意見だ。「これまでのシャフトは自分のヘッドスピードに合わせたものを選択することが基本でした。ところが、SPEEDER NX VIOLETは新たな層が加わったことで、多少ヘッドスピードが変化してもシャフトがそれを穴埋めしてくれる感じがします」。アベレージゴルファーの場合、飛ばしたいホールやコントロールしたいホールでは、ヘッドスピードに変化が出てしまいがちだが、それをカバーしてくれるのはありがたい。

「驚いたのは、ボールの打ち出し角度が高いことです。その分キャリーを稼げますし、飛距離が伸びますよね。シャフトの動きとしては、インパクト後にボールをもうひと押ししてくれるイメージです」

これもシャフトの先端と手元のねじれ剛性を10%アップしたことによる特徴だといえる。これまで会心の当たりでもいま一つ飛距離に満足感を得られなかった人でも、プラスアルファの飛距離を得られる可能性は大きい。

■欠かせない「シャフトとの会話」

クラブへのこだわりは女子プロの中でも1、2を争う青木だが、その知識の豊富さに、他のプロからは「青木先生」と呼ばれている。シャフトに関しても一家言あり、「まずはクラブを手に取り、少ししならせながらシャフトと会話をします。この時点でしなり加減や重さ、キックポイントなどを感じ取りますが、フィーリングが合わなければ実際に打っても当たらないですね」と、独特だ。

「シャフトと会話する」という青木。道具にはとことんこだわる(撮影:落合隆仁)

青木の感性と合致したシャフトだけが次の関門に移るが、1球目でさらに使えるか使えないか分別される。厳しいテストを通過したシャフトだけが残り、そこでデータを作成し、硬さや長さ、重さをセレクトしていくといった手順になる。

「ゴルフは道具を使用する競技だけに、とことんこだわりたいですね。それがレギュラーツアーで長くシード権を得るために必要不可欠ですし、自分の感覚を突き詰めていかないと一瞬でシード権を失う世界でもありますから」。自分の感覚を磨くためにも、メーカーのツアー担当者から話を聞いたり、自分でも雑誌などから情報を集めたりしているという。そういう日々の積み重ねがツアー5勝の要因になっているのは間違いない。

■シャフトが合っているかの判別は直ドラで

シャフトへのこだわりが強い青木に、シャフト選びのコツを聞くと、面白い答えが返ってきた。「直ドラでボールを打ってみることです。真っすぐ打てればティアップしても打てますから。抵抗がある人は低いティアップでも構いません。タイミングが合うシャフトなら、何球打っても大ダフリやトップといったミスは出ないはずです」

シャフト選びのコツは「直ドラ」。そのワケとは(撮影:落合隆仁)

普通にティアップして打つと、力んだり、スイングに余計な動きが加わりやすい。直ドラなら7~8割程度の力で振るため、タイミングを合わせやすい。その時点でシャフトの性能を最大限に引き出しているので、自分に合っているかどうかが分かるという。

「一般男性と比べて力のない女子プロの方が飛距離を稼ぐのは、タイミングよくクラブを振っているからです」。どんなに性能がいいシャフトをドライバーに装着していても、力任せに振っていては意味がない。まずは一度、自分のドライバーで低いティアップのボールを打ち、シャフトが合っているかどうかを確認してみてはどうだろうか。

2024年シーズンも終盤へ。改めて活躍を誓う(撮影:落合隆仁)

青木瀬令奈(あおき・せれな)
1993年2月8日生まれ。群馬県出身。7歳でゴルフを始め、高1で全国高校ゴルフ選手権優勝。プロテストに一発合格後、大西翔太コーチに師事すると飛距離アップに成功し、2017年「ヨネックスレディス」でツアー初優勝。23年は2勝を挙げ、メルセデスランキング12位に。24年シーズンも複数回優勝とメジャー制覇を目指す。ツアー通算5勝。リシャール・ミル所属。

撮影協力:中軽井沢 Country Club(長野県北佐久郡軽井沢町長倉1166)

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