ゴルフプライド特集
2023/09/07

義手のプロゴルファーを支える“一本筋”の通ったメンタルとグリップ

連載:世界が選んだグリップ

■グリップの拠り所となる、強調されたバックライン

バックラインが入ったグリップが小山田のゴルフを支えている(撮影:角田慎太郎)

自分なりの構え方・打ち方を見出して、球を飛ばしたり、コントロールしたりしてコースを攻める小山田は、何よりもグリップというパーツにこだわっている。

ゴルフプライドの『MCC アライン』という、バックラインが強調されたグリップを、パターを除く全てのクラブに挿しています。グリップするときは、左手の小指・薬指・中指の第一関節を、強調されたバックラインに引っかけます。そしてアドレスに入り、クラブのヘッドを目線の辺りに上げるとき、人差し指の第一関節をかけてベースボール&フックグリップをする」

指を引っかける場所が確定するから、左手が滑る不安がなく迷わずにクラブを振り切れる。

「この『アライン』があることで、フェースの向きを感じられるし、“いつも同じグリップ(握り)”ができるんです。そして、バックラインの向きを少し変えて握ることで、フックやフェードを打ち分けています。このグリップは、一般アマチュアが使ってもメリットがあるに違いありません」

■ストライプ模様を目安にして、タテ距離を打ち分ける

グリップの握りは素材とデザインが目安(撮影:角田慎太郎)

左手で握る部分はコード(糸の埋め込み)入り、右手で握る部分はラバーという、ツートンカラーによるハイブリッド構造のMCC アライン。「私は左手だけで握るので、そこはコード入りで雨の日でも滑らないことが肝心。でも右手部分はソフトなラバーで、義手が削れず傷まないのがありがたいですね」

バックスイングを右手で止められず、振り幅を抑えることが難しいという小山田が、タテ距離をコントロールするときにも役立つ。「このグリップには、何本かの横線が規則的な間隔で引かれているので、クラブを短く持つ目安になる。私は1目盛りぶん短く持つと、距離を10ヤード落とせます」

まさにMCC アラインは小山田のゴルフにおける生命線であり、“運命のグリップ”なのだ。「MCC アラインが発売されたときに即、替えました(笑)。もしコレがなかったらどうするんだろう、と思うし、このグリップじゃなきゃ出発点がありません。なんのためらいもなく握れるので、スイングに集中できるんです」

■目標はシニアツアー出場

小山田にとってグリップは重要なギア(撮影:角田慎太郎)

小山田のゴルフ人生で、ゴルフプライドのグリップはずっと相棒だ。「そもそもゴルフプライドを使いたいと思ったきっかけは、『プライド』が入るブランド名です。“障がい者でもプライドを持ってゴルフをやりたい”という私の胸に響きました」

グリップは、クラブの中で8割方を占める重要なパーツだという。グリップの表面がツルツルになるまで替えない人もいるが、「例えば、車のタイヤがすり減っているのに履き続けるでしょうか? グリップもタイヤと同じ消耗品です。どんなにいいスイングをしても、グリップが滑ったらミスの元に。私は半年くらいでグリップを交換します」

ゴルフというスポーツで新たな人生を踏み出すことができたのは、義手に合ったグリップのおかげという小山田は、「シニアツアーに出てみたいですね」と目標を口にする。大舞台でも強い味方になるはずだ。

大切な武器を味方にシニアツアー出場を目標に据える(撮影:角田慎太郎)

小山田雅人(こやまだ・まさと)
1967年5月24日生まれ。栃木県出身。国内および世界の障がい者ゴルフ大会で数多く優勝。25年間務めた栃木県職員を退職し、2012から2013年にかけてプロテストに挑戦して合格。2014年PGAティーチングプロB級会員(2024年からA級)。いずれもNPO法人の日本障害者ゴルフ協会理事、ジャパン・ハンディキャップゴルフ協会理事。富士産業所属。

協力:那須72ゴルフセンター

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